二七話


「――なっ……」


 こ、これは……。


『ガイド』の魔法に頼って俺が辿り着いた場所、それは隅のほうに大量の箱が積まれた体育館であり、【慧眼】スキルを使用すると中のものは全部食料だった。


 なんでここにだけこんなに食料があるんだ? しかも、誰の姿も見えないのがさらに異様さを際立たせていた。


「――――ッ!?」


 突然、ドシンドシンと大きな音と振動がしたかと思うと、箱の後ろから巨人が現れた。


「フンガッ……」


 おいおい、4メートル以上はあるぞ。虎野の飼ってるゴーレムが可愛く見えるレベルのでかさだな、こりゃ……。


「おるぁっ、そこのやつ、になんの用事だ!?」


「あっ……」


 威嚇するような声がした直後、今度は巨人の背後から見覚えのある大柄な生徒が出てきた。


 この200キロ以上はありそうな男は、ラビに向かって突進してきた変態野郎じゃないか。なるほど、ああいう仲間がいるから強気になって食料を独り占めにしてたってわけか。


「その食料はどうした、奪ったのか?」


「はあ!? 奪ったって、お前、バカか、アホか!? ボキュは貰ったんだよ」


「貰った……?」


「その通りさっ。そうしないとボキュのジャイオンちゃんがお前を踏み潰すかもよって言ったら、すぐに恵んでくれたよ」


「…………」


 なるほど、脅したわけか。奪ったのと同じだな。すぐにでも叩き潰してやりたいが、その前に【慧眼】でこいつらのステータスを要チェックだ。

__________________________


 名前 原田 信夫


 HP 230/230

 MP  19/19


 攻撃力 46

 防御力 58

 命中力  8

 魔法力 19


 所持スキル

【魔法反射】


 称号

《食料泥棒》《大食漢》

__________________________


 HP以外は至って平凡だと思ったが、【魔法反射】という所持スキルを見て正直肝を冷やした。もし強力な魔法をこいつに使ってたら危なかったな……。


__________________________


 名前 ジャイオン

 種族 巨人族


 HP 50000/50000

 MP   500/500


 攻撃力 2150

 防御力 2870

 命中力  120

 魔法力  500


 所持能力

『死んだ振り』


 ランク 超高級

__________________________


 なるほど。いかにも巨人っぽいステータスだが、それだけだな。所持能力の『死んだ振り』に関しては、これをしている間は一切魔法も攻撃も効かないということらしい。


「あっ……!」


 俺が例の仮面をつけると、原田は見る見る顔を赤くしていった。


「お、お前は……あのときのっ!」


「ああ。俺の仲間にやたらと吹っ飛ばされてたが、その様子だと元気にしてたみたいだな?」


「も、もちろんだ! あれくらいなんともない! てか……あの兎ちゃん、ボキュにくれないかな? じゃないと、ジャイオンちゃんがお前を踏み潰しちゃうかもよ?」


「断る」


「じょっ……上等だあああっ、このアホがっ、バカがっ! お前みたいなゴミクソはミンチにして、ボキュが囚われの兎ちゃんを救い出してやるうううう!」


「ははっ……いかにも雑魚って感じの台詞だな……」


「む……むがああああああぁぁぁっ! ボキュを愚弄したなあぁぁぁっ!? マジでぶち殺してやるから覚悟しろおおおぉっ! 行けええぇっ、ジャイオン!」


「フンガアァァッ!」


「…………」


 この原田ってやつ、いくらなんでもブチギレすぎだろ。さて、仮面もつけたし、ひと暴れしてやるとするか……。

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