第17話 衝突寸前

 戦列艦エルラウド


 尖閣諸島から数十キロほど離れた海域の上空で、P3C哨戒機が帝国の艦隊へと警告をしていた。


『我々は日本国海上自衛隊である!あなた方アグレシーズ帝国海軍に対して、即座に我が国の排他的経済水域から退去するよう要求する!』


「な、なんだ!?」


「ま、また例の白い巨大なやつだ!」


 アグレシーズ帝国艦隊の旗艦であるエルラウド。その船員たちは何度も何度も自分たちのはるか上空から魔法通信へ警告を行ってくるP1に辟易としていた。


「くそ、うるさ過ぎる!アークドラゴンで撃ち落とさないのか!?」


「あれはどうもアークドラゴンの飛べる範囲よりだいぶ上を飛んでるらしい。まあうるさいだけで、何もしてこないし大丈夫だろ?」


 そんな風にいつものことだと流していると、いつもとは違う警告が聞こえてくる。


『これ以上その進路を取り続け、我が国の領海に侵入した場合、我が国への攻撃と見なして我々自衛隊は自衛権を行使する!直ちに退去せよ!』


「なんかセリフがいつもと違うな………あれって録音じゃなかったんだな」


「ご苦労なこった。どうせいつも通り口だけだろ」


「いざという時だって、この艦とあのデカブツにはがある。余程の攻撃が来なきゃ平気だしなあ」


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 P3C哨戒機


 コックピットで、二人のパイロットが緊張感を漂わせながら話していた。


「機長、クラートからもらった魔法通信機での警告、効きませんでしたね。ってことは………」


「………上に連絡しろ。俺たちはここからいったん離脱するぞ」


「わ、分かりました………」



 両国の戦争が、始まろうとしていた。

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