第5話 次なる標的➁

「ほう、ではマークよ。二ホンという国はどういう国なのだ?」


 ファリバンがそう尋ねると、マークはそれに答えようと説明を始める。


「二ホンという国はつい最近までどの国も把握していなかった国のようです。そのため恐らくですが新興国の一つと思われます」


「なに、新興国だと!」


 それを聞いてファリバンが怒り出す。


「落ち着いてください、皇帝陛下。ここからが問題です。………二ホン国はクラート王国と国交を結んだあと、ウィストラ大陸近辺では最強であったインベルド王国に戦争を挑み勝利しています」


「な、何だと?新興国が」


 今度はファリバンは困惑したかのような表情を見せる。


「はい、そして二ホンの軍艦についての映像を魔道具に撮ってありますので、皆様にご覧いただきたいと思います」


 映像を見やすくするためか、松明のいくつかが消されて部屋が少し暗くなる。そして、マークが服の内側からブレスレットを取り出す。


 途端にブレスレットの宝石が輝き、空中へ映像が浮かび上がる。


「こ、これは!」


「木製ではないだと!」


「帆がないぞ!あんなに大きいのにどう動いているんだ!?」


 映し出された軍艦の映像に会議に参加している者たちが驚愕する。


「皆様がお分かりの通り、二ホンの軍艦は金属製のものによって出来ています。また、この軍艦に載せられている砲は射程が10km以上あると思われます」


「我が帝国が実現できていない金属製の艦を製造するとは………それに長射程の大砲だとぅ………くそっ!二ホン国はラファ―やシルフィアラ級の大国だと言うことか!これでは手出しできぬな………ケッペル王国に関しては諦めるしかないというのかッ!」


 ファリバンがそう顔を真っ赤にしてそう悔しがる。


「いえ、そうとは限りません。皆様、この軍艦を見て何か気づくことはありませんか?」


 マークがそう言ったため、皆が映像の中に映る軍艦を見る。そして一人が声をあげる。


「………この軍艦、大砲らしきものが一つしかありませんね」


「ば、馬鹿な!」


「本当だ!こんな軍艦があるというのか!?」


 周囲がその事実へ驚愕する。


(ラファ―やシルフィアラの砲は、長射程で高威力な分大型化するらしいが、それでも主砲は複数搭載していると聞く。砲が一つしかないなど軍艦としては致命的すぎるだろう!)


 ファリバンはそう思い、そしてマークの言いたいことに気が付く。


(まさか………)


「二ホン国は航空機も保有しているそうですが、その速度は時速300km程度のもので大したことはありません。おまけに軍艦も話によれば六十ほどしかないという話もあります。情報によっては変わりますが、多くてもせいぜい150隻のようです」


(ラファ―やシルフィアラの砲でも、10km以上先の敵に命中させるにはかなりのミスがあるとも聞く………航空機も大したことは無い。我が国の誇るアークドラゴン軍団よりも遅いのだからそこまでなのだろう)


 ファリバンが考え事をしている間もマークは話し続ける。


「二ホンの技術力は我が国より高く、軍も強い。しかし倒せない相手ではない。航空機は我が国のドラゴンより弱く、軍艦も砲は強いが一つしかなく数も少ない。そしてもし倒せれば二ホンの技術力がまるまる手に入るでしょう………この意味が分かりますね?」


 マークが話を終えた時、周囲の人々は皆考え込んでいた。


 二ホンという技術の割に軍がそこまで強くない国。もちろんそれでも個々の兵器の質は我が国を上回るかもしれないが、数は多くないし航空戦力に関しては帝国の方が上………倒せば技術も手に入る………


 つまり、チャンスなのである。


「二ホンと戦うと言う選択肢もある………ということか」


 ファリバンのその一言は、場にいる誰にも否定できなかった。

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