第4話 次なる標的①
アグレシーズ帝国 アグレシア大宮殿
「では、これより今月の定例会議を開始する!」
マークのそんな声と共に世界の中でも列強と言われるほどの大国、アグレシーズ帝国の首脳陣による会議が始まる。
「まずは、軍の方から報告をお願いいたします」
続けてマークがそう言うと、軍部大臣のシャーカーに注目が集まる。
「帝国軍は先月、スィバ国の主力軍をカロヌ砂漠にて撃破しました。その後首都ジーアを占領し、スィバは全面降伏。我が国はスィバとの戦争に勝利いたしました!」
「おお!」
「帝国軍は無敵だ!」
「大陸平定の日も近いぞ!」
ザワザワ………
その報告に、他の大臣たちも喜び、場がざわつく。
「皆様静粛に!次は対外交渉部からの報告をお願いいたします」
次に、対外交渉部をまとめる外交大臣のガバダへ周囲の視線が集中する。
「我々対外交渉部は今月、エナート魔国に対して全土併合を要求し、エナート魔国はそれを快諾いたしました!また、ケッペル王国にも同様の要求を現在出していましたが………」
「どうかしましたか?」
言葉に詰まるガバダへ、マークが続きを話すように促す。
「ケッペル王国は要求を拒否、二ホンという国と国交を樹立したそうです」
予想外なその報告に場がさらにざわつく。
「なんと無礼な!帝国の統治を拒否するなどありえん!」
「蛮族め!我が国の面子をつぶしおったな!」
「愚か者相手に外交など通用せんのだろう。程度が知れるな」
「貴様ら黙れッッッ!!!」
玉座に座る若い男がそう一喝する。彼こそが帝国の現皇帝である、ファリバンだ。彼の一括で場が一斉に静かになり、空気が冷え込む。
「それで、その二ホンとやらは例の宣言に反しているのではないか?」
「は、はい。完全に違反しております」
宣言。ここで指しているのは、帝国が十二年前に出した帝国圏宣言のことである。先代皇帝が世界中へだしたその宣言の中身とは、帝国が宣言で指定した国々とそれ以外の国の間で国交を結ぶことを許さないというものである。
その名の通り、帝国の権力が及ぶ範囲に他国がちょっかいを出すなという意味があり、また指定した国々は帝国が自国の領土にしようとしている範囲でもあるのだ。
そして、この宣言にこれまで反しているのは帝国より格上な列強の一国、ラファ―のみだった。流石にラファ―ともなると見逃さざるを得ないが、二ホンは列強ではない。
「なんだその二ホンという国は!聞いたことがないぞ!」
ファリバンがそう声を荒げると、彼の補佐であるマークが一言。
「その二ホンという国についてですが、いくらか情報があります」
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