第16話 統合幕僚監部の会議①
防衛省庁舎A棟内 統合幕僚監部
防衛省の所有するビルである、防衛省庁舎A棟。その一室で、自衛隊のトップたちの会議が始まろうとしていた。
「では、これよりテロリスト集団【インベルド王国】への鎮圧作戦会議を開始する」
初めに口を開いたのは統合幕僚長という、自衛隊の最高司令官である陸将の浜崎である。
「テロリスト………か。まあ良いだろう。それで、敵戦力への攻撃はどういう作戦でやるのだ?」
それに反応したのは統合幕僚副長で空将の佐藤だ。二人の会話は続く。
「攻撃ではない。あくまでリマ国への支援のための【テロリストの鎮圧】だ。もう少し言葉を選べ」
「言葉遊びをしているお前が、【言葉を選べ】とは可笑しな話だな。まるでお笑いだ」
「詭弁だ!貴様いい加減にしろよ!」
「何を言う。無礼な!」
自衛隊を構成する、陸・空・海は予算の取り合いなどから仲は決して良くないが、それを踏まえてもこの二名の仲は悪すぎる。というのも、同年代である両者は防衛大学校時代から意見が正反対でよく言い争いをするほどだったのだ。だが、そんな両者のヒートアップする言い争いを止めようとするものがここで現れる。
「お二人とも、落ち着いてください。仮にも日本国を守る同志でもある我々は、こんなところで揉めるべきではありません。それよりも政府からの指示を実行するための手段について議論すべきです」
運用部長、海将である白石だ。統合幕僚での役職こそ、上記の両者に劣れど、事実上の海上自衛隊の代表者であるがゆえに、その発言力は決して小さくない。
「白石運用部長のおっしゃる通りだ。佐藤、いい加減本題に入るぞ」
「ふん。仕方あるまい」
そして、会議の本題であるインベルドへの作戦についての話が始まる。浜崎が再び話し出す。
「まず、この作戦の最終目標だが、リマ国内でテロ活動を行うテロリスト集団、【インベルド王国】の鎮圧である。その最終目標を実現するための第一段階が、リマ国の副首都である、ソラーロの奪還だ。君、モニターに地図を映してくれ」
「はい」
浜崎が近くに控えていた男に指示を出すと、男はパソコンをいじり出す。すると、モニターに地図が映し出された。
「この地図にあるように、我が国の南東である小笠原諸島の近くにあるこの大き目の島がクラート王国だ。そしてその右隣に、小さめの大陸があるだろう?この大陸の北西部分、青色の小さい部分がリマ国だ」
「なるほど、それでインベルド王国とやらは、この赤い方か?」
佐藤が口をはさむと同時に、モニターの赤く塗られた部分を指さす。
「その通りだ。この小さめの大陸、現地人には【ウィストラ大陸】と呼ばれているそうだが、そのリマ国以外の大陸全てを例のテロリストたちが占領している。本来なら複数の国があったそうだが、それらはすべて滅ぼされた。連中は勢いそのままに、リマ国まで攻め入っている。ソラーロの位置は、この黄色い点だ」
黄色い点が、モニター上のリマ国の最北端に近い海沿いにポツンとある。
「海沿いか。それで、どうやってここを奪還する?」
「それに関してだが………」
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