第5話 初接触③
互いに挨拶を済ませた後、話し出したのはオルソンだった。
「まずはこの度の非礼について詫びさせていただきたい。申し訳なかった」
「いえ、今回の件はお互いを知らなかったがゆえに起きたことです。今後は良い関係を築けることをこちらは望んでいます」
「なるほど。お互いを知らぬがゆえ………か。それは解決する必要のある課題だと思わないか?」
「え、ええ。そうですね」(そりゃそうだが、なんだ?何か言いたげだが。)
「先ほど本国と連絡を取ったのだが、その結果あることが決まった」
「あること、とは?」
「………単刀直入に言おう。我が国、クラート王国は日本国へと外交使節を派遣したい」
「えっ」
沈黙。気まずい雰囲気になる。
「………それは我々が決めれることじゃないので少し待ってくれませんかね?」
「あ、ああ」
…
…
…
さらに気まずい雰囲気となった。
まあ会話が全く続かないのだからそれは当然だろう。お互いに余計な事を喋りたくないという気持ちがある上に、いまいち信用しきれていないのもあるかもしれない。
ともかく、時間にして数分程度のはずだが両者には数時間に感じれるに違いない長い沈黙は、若い女性の声によって打ち破られた。
赤木機関長である。
「船長、連絡が取れました。総理大臣がそちらの方とお話したいとのことです!」
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数分前 首相官邸 閣議室
ピリリリリリ!
「あ、すいません。少し電話取らせてもらいますね。相手は………外務省!?」
急いで葉名が通話を始める。
周りの大臣たちも何事かと小声で話し始める。
「いったい何だ?」
「どこか他国と連絡が取れたんじゃないか?」
「そうだとしたら事態は好転するが………」
そんな中で葉名が思わず大声を出してしまう。
「小笠原諸島近海にクラート王国を名乗る未確認国家の軍艦!?その代表者が巡視船に居るぅ!?」
「な、何だと!そんな話はまず防衛大臣の私に来るべきだろうが!」
「く、くらーと王国なんて国あったか?」
「い、いや知らないぞ?中国の奴らが嘘ついたとかじゃないのか?」
「そんなアホみたいな言い訳する奴らがどこにいるんだ。ともかくまずは日本国の領海に侵入していることをだな………」
それを聞いて慌てだす川野。他の大臣も混乱する中で須賀がピシャリと一言。
「その代表者とやらと話がしたい。繋いでくれないかね?」
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巡視船「みかづき」船内
「そ、総理大臣だって!冗談はいけないよ」
「冗談じゃないんですって。連絡が海上保安庁本部から自衛隊、防衛省、外務省とたらい回しされた後外務大臣へいって、そこから総理へ話がいったみたいです」
「なんだいそりゃあ、漫才か何かかな?」
二人のやりとりにオルソンが口をはさむ。
「待ってくれ。ソーリダイジンとは何だ?なにかの呪文か?」
「総理大臣ってのは王様みたいな………いや、王様は天皇陛下かな?でも実権あるのは総理だしな………いいやもう!ともかく私についてきてください!通信機の方へ行きますよ!」
そう言うや否や、赤木はオルソンを引っ張って行ってしまった。もちろん増沢は置いてけぼりだ。
「待ってよ、赤木くーん!」
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