第4話 初接触➁
軍艦「エスパード」の船内。そこでは先ほどの呼びかけへどう対応するかが議論されていた。
「なんなんだあれは!?空を飛ぶ化け物によく分からん白い船!」
「それ以前にここらに国があったなど聞いたことがない!新興国だとしても、近辺に大陸や島はない。何処にその日本国とやらがあるんだ!」
「もしやアグレシーズ帝国と関わりがあるのでは?そうだとしたらあの船へ攻撃をすべきでは………」
余りの事態に大混乱の中、艦長のブラインが口を開く。
「落ち着くのだ。まずは接触をすべきであろう。拡声魔法を使えるものはおらぬか?そのものに、こちらの所属とひとまず接触したいことをを伝えさせるのだ。無駄な対立は避けるべきだからな」
「な、なるほど」
「確かに相手のことがほぼ分からないですからね。それが最良かと」
「拡声魔法なら見張り役のオルソンが使えたはずだ。艦長、あいつにやらせてみます!」
「それと、魔法通信を使って本国へ連絡しておけ。どう対応するかはお偉いさんに決めてもらおう」
こうして、ブラインの提案通りに、拡声魔法を使った白い船への連絡が行われることなった。
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巡視船「みかづき」船内
『こちらはクラート王国海軍の軍艦、エスパードである。貴国の領海に侵入するつもりはなく、それ以前に近辺に国家があることを知らなかった。ひとまず情報交換のためそちらへ代表者を小型船で送るので、を受け入れてもらいたい』
オルソンの声はみかづきの船員全員に聞こえていた。これに対して増沢はというと。
『了解した!ただし接近して良いのは小型船だけ!エスパードとやらは近づくんじゃあないぞ!』
赤木に相談もせず即答である。しかもかなり攻撃的な言い方。
「ちょっと船長。私慎重にって言いましたよね!?」
赤木機関長もこれには大慌てして抗議するが、増沢は聞く耳を持たない。
「だいじょうぶだいじょうぶ。こういうのは強く出るのが良いんだよ。平気平気」
「勝手に決めないでくださいよ、騙し討ちだったら一体どうするんですか!?」
「だいじょうぶだって」
話を変えようとしたのか、増沢は別の事を話し出した。
「それよりも、上への連絡よろしく。こっちは出迎えの用意をしなきゃあね。それと、相手が騙し討ちする可能性があるから、拳銃をもっておくんだよ。じゃあね!」
「ちょっと! 話はまだ終わってないですよ!」
逃げるように増沢が船内から甲板の方へと出て行く。赤木はそれを制止しようとしているが、無駄だろう。
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ついに小型の船舶が、巡視船みかづきへと近づいてきた。もしもに備えて、海上保安庁の職員は全員拳銃を隠し持っている。みかづきのほぼ真横に小型船が来ると、木の板が二つの船の橋として架けられて一人の男が渡ってきた。
「初めまして。私は軍艦『エスパード』艦長のオルソンだ。以後よろしく」
増沢も即座に返事を返す。
「巡視船『みかづき』の船長増沢です。こちらこそよろしく」
今この瞬間に、日本による異世界初の他国との接触が始まったのだ。
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