godsend
はあ、俺に服を着せるなんて何が面白いのか分からんが、取り敢えず綾瀬さんが真剣に考えてくれているので口出しはしない。
「はい!これ一旦着てみて」
「あ、うん」
今更ながら服に興味が無かったために、服の種類(?)でジャケットとか、パンツとか言われても分からない。流石にトップスとボトムスは今日知ったから分かるけどそれしか…ん?これは重症なのでは?
「ねえねえ、この服良くない?似合ってるよ!」
「んー、似合ってるのか似合ってないのか分からんけど、綾瀬さんがいうなら似合ってるんだろうな、買うわ」
「その基準で買うの?自分が欲しい服とかない?生地はつるつるしてる方が良いとかだけでも結構絞れるんだけど」
「あー、それならどっちかと言うとつるつる?な方が良いかも、着やすいし」
「おっけー!じゃシルクとかポリエステルかな〜」
また自分の知らない言葉が出てきた、日本語でおk—
そんなこんなで1時間ほどして綾瀬さんが選んでくれた服を買った。俺におしゃれは早すぎたようだ…
「いやー良い買い物したね!」
「まあ、それはね。自分じゃ服すら選べないから助かった」
「将来が心配だなぁ」
「何故に母ポジ」
「なんとなく」
「適当だなぁ」
「「……」」
うーん、どうしよう。外出時に一番憂鬱な「やることがない」時間がきた。
「んー、やることないね」
「うーん、確かに…やりたいことはもうそんな無さそうだけど、帰ると言っても結構微妙な時間帯だしなー…」
ちなみに現在時刻は15:30。本当に微妙な時間に暇になってしまった…これからどうしようか。
「私は、この建物内じゃもう特に行きたいところないから周辺になんかないか探してみる〜」
「あ、じゃあ俺も探すよ」
そうしてそこから10〜15分位経ったかな、俺は何の成果も得られませんでした…
「おーい、みなっち!私一つだけ行きたい所あった!!」
お、綾瀬さんは成果ありだったようだ。
「へー、何処に行きたい?」
「まあまあ、それはついてきたら分かるよ」
言われた通りに綾瀬さんについて行くこと数分、意外と近くにあったようだ—
「お二人様で宜しいですか?」
「はい、大丈夫です」
綾瀬さんが気になっていたのは、猫と戯れることができる施設、猫カフェというやつだ。初めて来た俺から言わせてもらうと、最初に思ったのは「居心地が良さそう」というなんとも薄い感想だ。こういう場所はどことなく2人とか、複数人で来る所だと思っていたけど、1人客も多い。そういう意味で居心地が良いと思った。
「わー!見て見て!!マンチカンだ!かわいっ…」
おっふ、綾瀬さんのその天使のようなスマイルの方が可愛いですよ、なんて思っても口には出さなかった俺は偉い。
「そうだね、猫ってこんな可愛いんだ」
「ね!あ、写真って撮って良いのかな?店員さんに聞いてみよっか」
「そうだね」
聞いて見たところ、写真の撮影はフラッシュが無ければOK、抱っこも大丈夫らしい。
「へ〜、猫用のおやつとかあるんだね!あげてみたくない?みたいよね?そうだよね??やっぱり」
「全部1人でやってるんだよな…まあ、興味はあるけど」
「じゃあ経験も兼ねてやってみますか〜!」
綾瀬さんはちゅ〜るを持って猫を待っている、暫くして一気に大量の猫に囲まれていった。この光景は素晴らしく癒される、現代アートが目の前で完成されているかと錯覚したほどに。思わず写真を撮ってしまった。まあ、減るもんじゃないしいいか。
「あ、今私のこと撮ったでしょ?!」
「いや、いい絵だったからつい」
「その写真後で送ってね…むぅ、私だけ撮られるのも不公平だからみなっちも猫ちゃんと遊んできなよ」
えぇ…まあ確かに不公平か……猫は別に嫌いというわけではない、むしろ好きな動物ではあるけど—
「見られてるって分かりながらじゃれ合うのかなり恥ずいんだけど」
「細かいことは気にしないの、ほらもう一本あるから…ちょっと待ってれば—ほら!」
俺がもう一本のちゅ〜るを持った瞬間、獲物を見つけたかのような眼でこちらを凝視する猫がちらほらと…ってうわ!一気に囲まれた!?そのままの勢いで、床に横たわり、顔やらを踏まれひどい有り様だった、まあ悪くはない時間だった。
「見て、みなっちの顔。猫に踏まれて変な顔〜」
「こんな顔してるって自分で確認するのが一番恥ずかしいっ…」
「まあいいじゃん、減るもんじゃないし」
「俺と思考回路一緒すぎない?」
てな感じで思いがけない充実した時間を小一時間ほど堪能し—
「わ!雨降ってる!!傘持ってない…駅までそんな遠く無いし、ダッシュじゃ!」
「え?!綾瀬さん、それ風邪ひくやつ—」
「大丈夫、私こう見えて壮健そうけんだから」
「そういう問題なのかなぁ…って!置いてかないで綾瀬さん!!」
—その翌日、学校の綾瀬さんの席に人の気配はなかった…
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