第4話 おかしい
—1—
ブーブーブー、ブーブーブー。
【渡辺洋一、八木明日香により確保。泥棒チーム残り14人】
「ったく、何やってんだよ洋一は!」
「自分から捕まりに行ってたよね」
「あと1人捕まっちゃったら2人脱落しちゃう」
桃が顔をしかめる。
俺たちは学校の敷地外の北地区に来ていた。泥棒チームのリーダーをしている俊介たちは西地区に向かった。
北地区は住宅が密集した地区で結構入り組んでいる。身を隠すならもってこいだ。
しかし、所々挟み撃ちされたら危険な箇所もあるので注意が必要だ。
一方、西地区は田んぼや畑など農業中心のエリアだ。
見晴らしが良く敵を発見するのが容易にできる。
見つかったら逃げ切れるかは微妙だが、ビニールハウスや農家が何軒かあるのでそこを上手く利用できれば十分に可能だろう。
俺とこころ、桃の3人は、北地区を警戒しながら歩き回っていたが警察チームの姿を見かけることはなかった。気配すら感じない。
西地区に向かったのか?
こころと桃は意味もわからずに捕まった洋一の悪口を言っていた。
俺も洋一には腹が立っている。行動が理解できない。意味不明だ。
ブーブーブー、ブーブーブー。
俊介から電話だ。
「もしもし」
『はやと! そっちは大丈夫か?』
「今のところ問題ないよ。北地区には追ってきてないみたいだ」
『そうか。それなら良かった。あと1人捕まったら俺たちは2人脱落だ。逃げのびてくれよ。あっ、来たぞ!!! 逃げろ!!』
「おいどうしたんだ俊介!! おい!」
電話が途中で切れた。
「はやと。俊介、なんだって?」
「多分電話の途中で警察と遭遇したっぽい」
「俊介くんたち、大丈夫かなー」
「助けに行く訳にもいかないし無事を祈るしかないな」
しばらく歩き、一軒家の隅に隠れて俊介に電話をかけたが繋がらない。まだ逃げているのか。
ブーブーブー、ブーブーブー。
「俊介!」
俊介からの電話だと思いスマホの画面を見るが俊介からではなかった。
1番来て欲しくなかったメールだ。
【
「まじかよ」
「2人捕まったってことは、2人脱落」
「はやと君、こころちゃん」
俺とこころがメールを見て落ち込んでいると、桃がなんとかしなくちゃと俺とこころを何回も交互に見る。
しかし、なんと声をかければいいのか分からず下を向いてしまった。
ブーブーブー、ブーブーブー。
俊介からだ。
「俊介! 何があったんだ!?」
『すまない。亮たちが追いかけてきて剛が逃げ遅れて捕まった』
「今は大丈夫なのか?」
『あぁ、剛を捕まえたら俺らのことを見向きもしないで、学校の方に戻って行きやがった』
おかしい。敵を見つけたなら少しでも数を減らしておきたいはずだ。そんなチャンスをわざわざ見逃すなんて。
「警察の奴らは全員学校に戻って行ったのか?」
『全員だ』
「そうか。それなら一旦合流するか?」
『いや、移動するにもリスクが大きい。ルール説明に途中休憩有って書いてあったからその時に集まろう』
「分かった! じゃあな」
『おう』
途中休憩有と言っても何分後、何時間後に休憩かは一切知らされていない。
恐らくまたメールで知らせてくるはずだ。
「休憩になったら俊介たちと合流しよう」
「うん!」
「分かった!」
「それまでは何がなんでも逃げよう」
こころがコクンと頷く。それを見て桃も頷く。
—2—
「お仲間が捕まったみたいよ」
牢屋となる体育館で、明日香が洋一の腕を掴んだまま話しかける。
「そうみたいだな」
「随分と冷たいのね。まぁ、あなたは頭のねじがぶっ飛んでるものね」
「ふっふっふっ。そうゆうあんたは、全て計画通りに進んで大満足ってか?」
「私と桜の頭脳を持ってすれば、あなたたちに負けることはないわ」
「それはどうかな。これは勉強やそれとは違う。常識だけでは通用しねぇーよ」
「あなた本当は良く喋るのね。クラスでは無口なのに」
「クラス委員のあんたがそこに突っ込むのかよ。もういいだろ、手を離せよ」
明日香が洋一を掴んでいた手を離す。
「誠、後はお願い」
「は、はい」
体育館の入り口に見張り役として立っていた誠が返事をする。
明日香が体育館から出た。
「桜、行くよ!」
「うん。明日香」
体育館の外で待っていた桜が返事をする。
明日香と桜は校庭に向かい剛を捕まえた亮たちと合流した。
「亮と翼は、体育館に剛を送ってきて!」
「了解!」
「残りのみんなは次の作戦に移るよ。説明するから近寄って!」
明日香と桜の2人から警察チームの次なる作戦が伝えられた。
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