第11話 入学初日

「どう? 変じゃない?」


 制服に袖を通し、シズクの前に姿を現す。

 すると彼女は最新式の撮影機、今風に言うとカメラでパシャパシャパシャ! と連写しまくる。現像に使う魔力加工が施された紙は高価だけど大丈夫なのかな……?


「とてもお似合いです。あ、少しポーズ取って頂いていいですか? そう、もうちょっと上目遣いで、そう」

「なんであんたら朝っぱらから撮影会開いてるのよ」


 シズクに乗せられ撮影会に興じてたらクリスに突っ込まれた。彼女も学園の制服に身を包んでいる。僕の制服は全体的に黒いけど、クリスのは赤を基調としていて格好いい。

 学園の制服はお金を払えば改造カスタムすることだ出来るのだ。僕は普通のにしたけど、オシャレな人はこだわるみたいだ。


「ごめんごめん、もう準備も終わるから」


 クリスはわざわざ学園内にある寮から僕の家に迎えに来てくれている。僕のせいで入学式に遅れるわけにはいかない。

 急いで準備を済ませていると、シズクが挑発的な口調でクリスに言う。


「おやクリス様、文句を言うということはこの写真、いらないという事でよろしいですね?」

「はあ? 何言ってんのよ」


 あーあー、朝から喧嘩が始まってしまう。

 早めに止め……


「で? いくら出せばいいの? 金なら払うわ」


 ……なくても大丈夫そうだ。

 何で僕の写真にそんな需要があるんだ……


「ふむ、素直でいい心がけです。特別に数枚差し上げてもいいでしょう」

「あら優しいのね」

「数枚なくなったところで私にはこの『カルス様写真集〜輝ける成長日記〜』がありますので、問題ありません」

「うわっ、これ何枚写真あるのよ。すごい数じゃない」


 なんか凄いものまで出てきた。表紙にvol.348とか書いてあるけど冊数じゃないよね……?


「ちょっとクリスまで乗せられないでよ! 学園行くよ!」

「わ、分かってるわよ! あ、これとこれは欲しいから残しといてよね!」


 後ろ髪を引かれるクリスの手を引き、僕たちは外へ行く。

 僕の家は、今日も騒がしい。


◇ ◇ ◇


 入学式では学園長の長いお話を聞いた。

 この学園の設立したきっかけとか色々面白い話をしてくれてたけど、クリスとジャックは早々に寝てしまっていた。二人には退屈な話だったみたいだ。


 入学式を終えた僕たちはとうとう自分達の教室に足を踏み入れた。

 『1ーA』、それが僕たちのクラスだ。

 ここに入れるのは既に魔法をある程度使えて、才能のある子どもだけらしい。どんな魔法が見れるのか今から楽しみだね。

 あ、そうそう。そういえばひとつ驚いたことがあったんだ。


「はーい。席につけー」


 そう言いながら教室に入ってきたのは、兄弟子のマクベルさんだった。

 驚くことにマクベルさんは僕たちの担任の先生だったんだ。知っている人が担任なんてラッキーだね。


「えー、君たちの担任のマクベルだ。一年間よろしく頼む」


 そう言って頭を下げたマクベルさんは、早速Aクラスの説明を始める。


「君たちも知っているだろうが、このクラスの生徒はみな魔法の基本的なことは知っている。だから他のクラスのように初歩的な授業は『しない』。初めからかなり高度な授業をする。だがそれも……『出席しなくていい』」


 その言葉に教室がざわつく。

 授業に出なくていいってどういうこと……?


「おっと勘違いしないでくれ。これはサボり放題ってわけじゃない。むしろその逆、君たちはただ授業を受けてれば進級できるわけじゃないってことだ。他のクラスの生徒はちゃんと授業に出て、テストで赤点を回避できれば進級出来る。Aクラスの生徒は年に三回、何か『成果』を出さないといけない」


 再び教室がざわつく。

 難しい話になってきたね。成果って何をすればいいんだろう。


「例えば新しい魔法や魔法薬の開発。未知の植物や歴史的建造物の発見。新しい魔法論理の構築などなど新しいことなら何でもいい。私たち教師を驚かせるような発見をして欲しい。年に三回それをこなせた者だけが、Aクラスのまま次の学年に進める。もし出来なければ留年か、Bクラスに落ちて進級してもらう」


 なるほど、これは中々難しそうだ。

 Aクラスのまま進級するには、ただ魔法が上手いだけじゃ駄目なんだ。


「Aクラスで進級出来るのは毎年半数くらいだ。三年に上がる頃には最初の四分の一、卒業できるのは更にその半分の数になっている。とはいえみんなが成果を出してくれれば全員で卒業することも出来る。大変だとは思うが頑張ってくれ、私も出来る限りサポートする」


 マクベルさんの話が終わる頃には、クラス全員の顔は真剣になっていた。

 みんなこのクラスを維持したいんだ。僕も頑張らなくちゃ。

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