俺の周りがコメディなので、懐いてくれている妹と妹の友達も巻き込む
雨依
うざがらみ周子さん
「ふぁ……」
ジリリリリと音が鳴り、窓のカーテンの隙間から溢れる光で、朝であることを痛感する。
喉が痛いなぁ……などと、他愛のないことを考えながら下の階にあるリビングへ向かった。
「おはよう。」
「ん。おはよ!お兄ちゃん!」
「今日早いな。朝飯どうする?」
「あー、作ってくれる?」
「いつものことだろ。」
やったー!と喜ぶ妹、天音。ブラウンの髪はまだ寝癖がついている上、寝間着の姿で、ああ、他の人には見せられないなぁと思う。
いつも俺は天音やこれから起きてくるであろう両親へ朝ごはんを作っている。母にこれからは高校生なんだから料理くらいできた方がいいと言われ、去年の中3からやっているが、すっかり料理にハマってしまい、最近では夜に作ることもしばしばある。
正直朝ごはんは簡単なもので済ましてしまいがちだが、それでもしっかりと喜んでくれる家族がいたからできるようになったのかもしれない。
「おはよう。」
「おはよ〜」
俺が料理を作っていると、両親も起きてきた。両親は二人で会社を起こしているため、早朝に急いで出社することもあるが、基本はゆっくり準備をする時間がとれる。それでも朝ごはんの準備などでなんだかんだ早起きしていた母だったが、俺が朝をするようになってからは無理に起きることも無くなったと喜んでいた。
「おはよ。」
「お……はょ」
「うーん。天音はおねむかな?」
「おねむじゃ……ないよ……」
お父さんが言うとおり、天音はソファでうとうととしていた。これは……いかんな。
俺は火を止めて、目玉焼きを皿に乗せて、パンをトースターへ入れ、テーブルへ並べた。
「天音。食べな。」
「あ、ありがと。」
天音に声をかけると、天音は体を伸ばして、起きるモードになったようだ。
チン!と高い音が鳴り、トースターの中の食パンを取り出し、皿へ置いた。
「「「「いただきます。」」」」
この家のルールは、きちんといただきますを欠かさず言うこと。なので、基本みんなで揃えていただきます。と言う。その掛け声もあってか、すっかり眠気が覚めた様子よ天音は、美味しそうに頬を緩ませ、
「ありがとう!お兄ちゃん!おいしい!」
と言った。俺の頬の緩むのが感じられ、お母さんもお父さんも、笑みをこぼしていた。
しばらくして、家から出る時間になり、部屋から出て、ちょうど再び階下へ降りた時に、洗面所から寝癖が取れた天音が出てくるのが見えた。
「おう、天音。俺は行くけど、どうする?」
「うーん。ちょっと待ってくれない?荷物とってくる。」
俺たちは基本途中まで一緒に登校している。別に一人でもいいけども、二人の方が会話もできて楽しいからだ。
「ごめんごめん!さ、いこ?」
「おう。じゃあ行くか。行ってきます!」
「「いってらっしゃい!」」
リビングから聞こえる声。暖かい気持ちになりつつ、家を出た。
適当に駄弁りながら学校へ向かう。その道の途中の交差点で信号待ちをしていると、不意に声がかけられた。
「よう。相変わらず仲良いな。」
「おはよ。涼斗。」
「翔大とゆうか。」
声をかけてきたのは、自転車に乗った親友の山田翔大と、その彼女の東条裕香だ。
よく昔から、翔大とゆうと呼び、いつも3人でいるくらい仲良しの3人組だった。もちろん今も仲は良い。
「朝からお前らのいちゃつきを見なきゃならんのか。」
「すまんな、いくらお前とてゆうは渡さんぜ?」
「もう!冗談はそこまで!信号見て!」
大袈裟にため息をついてみたもののいきなり惚気出す翔大。しかしゆうから怒られてしまいなんとも言えない顔になっていた。
怒られてやんのと、揶揄うような視線を向けると、自転車から蹴られた。地味に痛い。
「ふふっ!お兄ちゃんたち相変わらず仲良いねぇ。じゃっ!中学校こっちだから。」
ばいばーい。と、手を振りながら学校へ向かっていく妹を見送り、俺たちは高校へ向かう。
「にしてもさ、お前妹とほんとに仲良いんだな。」
「そんなもんだろ。」
「そうかあ?俺んとこはもう口も聞いちゃくれねぇぜ。」
ははっ!と笑いながら自分と妹の仲の悪さを語る翔大だが、若干の寂しさがみて取れた。
……まあ、翔大には彼女もいるわけだし、近寄りにくいと言うのもあるだろう。と予測して、
「そんなに悲観する必要ないと思うぞ。」
と、俺が返すと、ゆうも、
「私もそう思うよ。」
と言ったので、翔大は、そうかぁ?と言って笑った。
学校に着いて教室に入ると、朝っぱらなのにガヤガヤとなかなかに騒がしい。まだ入学したばかりなのにとも思ったが、慣れてきて友達ができ始めた奴が多いのかもしれない。
席に鞄を置いて、今日の分だけを引き出しに入れると、適当に読書をする。
話しかけにいくにも、そう言う感じの生徒ではないのは自分でもよく理解しているので、今更それを変えようとも思わなかった。隣の席を見ると、同じように読書をする、生真面目そうな……そうなだけだが、メガネをかけた小柄な女の子がいた。
この子とは時折話をすることがあるので、それで十分だ。
わざわざ後ろで取っ組み合いをしている中に入っていくのはなぁ……
「うー……目が痛いよぉ」
「どうしたんだよ」
「偶にあるの!もう疲れちゃってるのかなぁ?……」
隣の女の子……木下周子は目を閉じてその上を指で揉むと、大して良くならなかったのか、うがー!と体を伸ばし、縋り付いてきた。
「ねぇー!涼斗君がかわってよー!」
「しらん。本でも読んどけ」
「本読むといたいんだよぉ!」
入学早々にこうしてベタベタとくる子なのだが、知り合いのいないクラスに配置され、高校生活早々に終わりかと考えていた俺からすれば助かっている。
通常なら女の子が男に縋り付く……見え方によっては抱きつくなんて、目立つことこの上ないが、このクラスでは仲がいいと思われているのか、微笑ましい目で見てスルーだ。
まあ、実際俺は仲良いと思っているので、何も気にはしない。偶にほぼないに等しい胸が手に当たることがあっても気にしない。
それが配慮だ。決して役得だ。なんて思ってない。ほんとだぞ?
つまらない授業だけれども、始まって仕舞えばそれなりに楽しい。話を聞いておけば大体理解できる系の人間なので、復習なぞはあまりしてこなかったが、成績が下がらないのは楽しめるからなのかもしれないが、ともかく、楽しかろうと、楽しくなかろうとみんなが待っている昼休みだ。この学校は多くの生徒が弁当で、学食を利用する生徒は少ない。まあ高いからな。弁当のがまし。
と、言うわけで、弁当、昼休みって事で、流石に一人で食うのは浮くかなと、俺も集団で食べている。まあ、集団と言いつつもあれだ。俺と、翔大、ゆう、周子だ。
当初は周子は入れていいのか?と、思っていたが、周子は知らん間に翔大やゆうとも仲良くなっていた。
コミュ力お化けかよ
「でね!ひどいんだよ!涼斗君がね!私が痛いって言っても冷たいんだよ!」
「ははっ!まあ涼斗だからな。俺も何回冷たくされたことか……」
「でも、涼斗。女の子には優しくしなきゃ!」
「勘弁してくれ……」
今日の朝のことで盛り上がる3人に笑われる。
どうすりゃいいんだよ。
「周子。すまなかったな。大好きだ。……許してくれないか?」
と、肩を抱き寄せイケボ(風に)囁く。
「ふぇ!?だ、だめだよぉ私たちまだ出会って1月も……」
トリップしている周子を横目に、
「これで満足かよ。」
と、言うと、二人は大爆笑した。
解せぬ。
午後も終わり、帰宅部である俺は同じく帰宅部の周子と共に帰っていた。
「そいえばさ、涼斗君妹いるんでしょ?今度紹介してよ!」
「まぁ、いいけどさ、」
なんだか、妹とこいつ、相性良さそうなんだよなぁ。
いやーな予感を感じつつも了承し、じゃあ私こっち!ばいばーい!と言う周子を見送ってあと半分くらいの帰路を進む。
なんだかんだで高校生活を楽しめていることに、少し嬉しい気分になった。
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