第6話 私に園児が舞い降りた!
学校が終わり、部屋で私はいつもどおりネトゲをしていた。
「クソッ・・・・・・あぁ! お前邪魔だ!・・・・・・あぁ、撃たれた・・・・・・」
最近、学校に行っているせいでゲームがまともにできていなかった。それが原因なのか、私のFPSの腕前もかなり落ちている。とは言っても多分他の人が見ても気付かないくらいでだけど。少し、動きにキレがなくなってきたみたいな感じだ。
「はぁ・・・・・・やっぱり少し学校サボるか?」
・・・・・・いや、学校をサボった暁には・・・・・・
『実ちゃ~ん? 今日どうして学校をサボったのかな~?』
『いや、ゲームしたいなーって思いまして・・・・・・』
『お仕置きだ~~~!』
『ぎゃぁぁぁぁーーーーーー!』
私が最後に聞いたのは、全身の骨が外れる音だった・・・・・・
END・・・・・・
・・・・・・
絶対こうなる。
プルルルル
「ん? 電話か?」
ベッドにほおり投げてあったスマホを手に取る。
げ、日菜かよ。うわさをすれば来たよ。
「はい、もしもし、秋雨で――」
『もしもし実ちゃん! 明日何の日か分かってる!?』
「うるさい! 鼓膜破れる!」
こいつの声は相変わらず、スピーカーを改造して爆音にした声のように大きい。多分私じゃなかったらとっくに縁切ってるぞ? 感謝しろよ。
「で、何の日だっけ?」
『附属幼稚園での先生の一日体験でしょ! 何で忘れるの!』
「あぁー・・・・・・そういえば先生、何かそういうこと言ってたっけな」
私は今日の帰りのホームルームを思い出してみた。
回想
帰りのホームルーム。
「じゃあ、明日は附属幼稚園での先生一日体験だからね。ちゃんと爪を切って、髪も結ってきてね」
「「はーい」」
「だってさ、実ちゃん・・・・・・って寝てる!」
日菜は私の頭をとんとんと叩いた。
「ふぁ・・・・・・? どうした日菜」
「今の話聞いてた?」
「うん・・・・・・聞いてたよ・・・・・・じゃあおやすみ・・・・・・」
「寝ないで~~!」
回想終わり。
『というわけだから、今から実ちゃんの家に行こうと思います!』
「うん、どういう思考回路でそういう結論に至ったのか説明してもらえるかな?」
と言った瞬間、窓に何かがぶつかる音がした。
「ん? 何の音だ?」
窓を開けると、私のおでこに小さく硬い物体がぶつかった。
「痛っ!・・・・・・なにこれ、コーン?」
その物体はポップコーン用のコーンだった。
「おーい! 実ちゃーん!」
「日菜!?」
窓の下を見ると、日菜が大きく手を振っていた。いや、近所迷惑なんだが。
あとなぜ、こんな雨の中、傘もささずに来る。
ずっと外で待たせるのもさすがにかわいそうなので、仕方なく家に入れてやることにした。
実の自室
「まったく・・・・・・今何時だと思ってるんだよ・・・・・・」
「だって実ちゃん、放っておいたら絶対お風呂にも入らず、ぼさぼさの髪の上に、爪も切らずにそのまま子供達と触れあうつもりだったでしょ」
「別にいいだろ。死にやしないし。ていうかそんなに爪伸びてないよ。この前切ったし。とりあえずそっち向け」
ぐしょぐしょだったのでとりあえず日菜の頭をタオルで拭く。そのまま風邪を引かれても困るからな。
「で、一つ聞きたいんだけど、何でこんな連続で幼稚園の先生体験しなきゃいけないんだ?」
つい最近もやったばっかりだぞ。(第四話参照)
「あれはボランティアだよ。今回は先生体験だからね。修学旅行のときなんて本当に大変なんだからね?」
「修学旅行って・・・・・・今冬だろ」
「うちの学校は雪の降る直前にやるから、そろそろ修学旅行の日程の連絡が来ると思うよ?」
「そうなのか」
お楽しみに!
「じゃあお風呂に入りに行こうか」
「え?」
そう言うと日菜は部屋の中で服を脱ぎ―――!?
「何でここで脱ぐんだよ! あと何でお前も入る前提なんだよ!」
脱ぐにしてもせめて脱衣所で脱げよ。
「私が一緒に入って監視します! ほら、行くよ!」
「ま、まて! せめて服を着ろ! パンツで人の家をうろつくな!」
こいつには羞恥心というものがないのだろうか?
入浴後
「はぁ~~~・・・・・・疲れた・・・・・・」
主に精神面でだけど。
脱衣所で二人一緒に髪を拭く。
「何でお風呂に入っただけで疲れるの? のぼせちゃった?」
「自分の胸だけじゃなく全身に聞け」
「ちょっと何言ってるかわかんない」
「それはこっちのセリフだよ。ほら、後ろ向け」
私は日菜の髪をタオルで拭いてやる。きれいな髪なんだからもっとちゃんと手入れをしないとだめだろう。
・・・・・・私が言えた事じゃないが。
「あはは! 実ちゃん、くすぐったいよ~!」
「動くな、拭きづらいだろ」
「さて、じゃあ私はもう帰るね。明日絶対学校に来てね」
「はいはい。風邪引くなよ」
風呂あがりにこんな冷えた外に出すのもかわいそうだが、車を運転できるわけでもないのでしかたない。
そもそも、人の家に来て風呂に入浴するっていうのもおかしいけどな。何で勝手に入浴してんだよ。
「じゃ~ね~!」
「あぁ。また明日な」
翌日
「おはよう! 今日は幼稚園の訪問だよ!」
「うん、昨日も似たようなセリフ聞いた。そして寒い」
正直、こんな冷えた日に何で訪問しなきゃいけないんだよ・・・・・・もっと臨機応変に対応しろよ。
こいつは幼い子供のように元気だしよ。
「かわいい子供達がいっぱいいるんだろうな~・・・・・・たっぷりかわいがってあげよう!」
「そうかそうか、頑張れよ」
「は~い! 今日は高校生のお兄ちゃんお姉ちゃんに遊びに来ていただきました!」
「わ~い!」
というわけで幼稚園に来たわけだが、幼稚園の園舎もなかなかすごいな。ここ子供の福祉施設かな?
「それでは、一日お願いします」
「はい! 任せてください!」
不安だ。
「お姉ちゃん名前なんていうの?」
お、早速日菜のところにはわらわらと子供達が集まってきたな。
「私は神楽 日菜だよ。日菜お姉ちゃんと遊ぼうよ」
「うん! おままごとしようよ!」
「日菜お姉ちゃんは俺と遊ぶんだぞ! 戦いごっこしようぜ!」
「私と絵本読むの~!」
わぁ・・・・・・何あのサーカスのピエロ以上の人気は・・・・・・あいつ幼児を集めるフェロモンでも放ってんのか?
見た目のせいかな?
「うんうん。じゃあ交代で遊ぼうね」
「・・・・・・私もやってみるか」
さっそく、一人で絵本を読んでいる男児に話しかけた。
「何読んでるんだ?」
「・・・・・・ももたろう」
ももたろうか。懐かしいな。
「お姉さん、読んで?」
「いいぞ」
私はその男児にももたろうを読み聞かせた。なんだか遠い昔を思い出すような感覚だ。
「・・・・・・お姉さん」
「ん? 何だ、もう一回か?」
「僕も、ももたろうみたいになれるかな」
「え?」
「僕も、ももたろうみたいに困った人たちを助けられるような人になりたい」
「・・・・・・うん。お前ならなれるぞ」
「ほんと!?」
「あぁ。絶対になれる」
ももたろうって、ただの昔話かと思ってたけど、こういう風に憧れを抱く子供もいるんだな。
次は人形遊びをしている女児二人に話しかけた。
「何やってるんだ?」
「・・・・・・お人形遊び。お姉さんもやる?」
「いいぞ。どんな役だ?」
お、いい調子だ。このまま行けばすぐ仲良くなれそうだな。
「浮気して彼女の全財産を奪って逃げたたクズ彼氏の役ね?」
「は?」
・・・・・・こいつ本当に園児か? 何でそんな現代的なカップルをモデルにしてるんだよ。
「な、何でそういうやつなんだ?」
「お母さんが元彼にそういうことされたって言ってたから、私はそうならないようにちゃんとイメージトレーニングしておこうと思って」
オイ母親。
「だ、だからって何で私がそんな役を・・・・・・」
「だってお姉さん声低いし、身長もものすごく高いじゃん」
身長って・・・・・・(175センチ)あと声低いって・・・・・・だからさっきからお姉さんって呼ばれてたのか・・・・・・
日菜みたいにかわいいお姉さんじゃないから・・・・・・
「お姉さん・・・・・・? ジョ○みたいになってるよ?」
何で君の世代がそのアニメを知ってるんだ。
その後も・・・・・・
「俺が遊んでたんだぞ! おとなしく渡せよ!」
「僕が遊んでたんだよ!」
喧嘩か。ここはかっこよく止めてやらなくてはな。
「オイ、ガキ共・・・・・・」
「何だよ・・・・・・ヒッ・・・・・・!」
「このおもちゃはお前だけのものじゃねぇんだよ・・・・・・皆で仲良く使うものだろうが」
「はい・・・・・・」
「分かったらとっととこの子におもちゃ貸してやれよ」
「は、はい! すみませんでした!」
「それでいい。皆で仲良く遊ぼうな・・・・・・?」
「イ、イエッサー!」
「お姉さん、一緒に戦いごっこしようぜ!」
「いいぞ。チーム編成は?」
「お姉さん大きいし、強そうだから一人ね」
こっち一人かよ。
「じゃあ新聞紙の棒あげるから、これで叩かれたら負けね」
「は、はぁ・・・・・・」
「ま、負けた・・・・・・」
「実お姉さん強すぎる!」
「ふっ、まだまだだな。もっと強くなってからきな」
「う~む・・・・・・」
何だろう・・・・・・なんかイメージしたのと違う・・・・・・
「きゃあああ!」
「何だ!?」
突然、幼稚園に悲鳴が響き渡った。
「全員動くな! 動いたら殺すぞ!」
何で強盗犯!? しかも3人組!?
「皆、幼稚園の奥に逃げて!」
先生が幼児を守るために必死に叫ぶ。
先生が園児を奥に集め点呼をする。
「36、37・・・・・二人足りません!」
「二人!?」
「早く行かないと! まだ小さい子供なのに!」
・・・・・・ん? さっきの絵本を読んだ男児がいない・・・・・・
まさか!
「実ちゃん!? どこ行くの!」
私は急いで来た道を戻り、さっき皆で楽しく遊んだ部屋へ戻った。
「大空君・・・・・・」
「オイ、そこをどけろよ。殺されたいのか?」
「いやだ! 絶対にどかない!」
居た!
・・・・・・何やってんだ? 何か女の子をかばっているようなしぐさをしているが・・・・・・
「みこちゃんは、絶対に僕が守る! そして、皆を絶対に守る! ももたろうみたいに!」
「はっ! なにがももたろうだ!」
強盗はその大空君にナイフを振り下ろす。
「死ね、このクソガキ!」
パァン!
「何だ!?」
「・・・・・・大空か。名前は覚えたぞ」
私は強盗が振り下ろしたナイフを足で蹴り、ナイフを吹き飛ばした。
「大空、ももたろうみたいになりたいか?」
「・・・・・・はい! 師匠!」
「いいぜ。ただし、死んでも文句なしだぞ?」
「はい!」
「よし。その覚悟聞き入れた! この園児以下の知能の強盗を撃退するか!」
私は関節を鳴らした。
久々だな。こんなに暴れるのは・・・・・・
「ふざけるな!」
さっそく一人がナイフで切りかかってきた。
だが、長年のゲームで、その軌道は完璧に把握できている。
「邪魔だ」
「ぐへっ!」
ナイフを奪い、顎に蹴りを入れる。
「大空、このナイフ持ってろ。絶対に奪われるなよ」
「分かりました! ・・・・・・師匠、後ろ!」
「!!」
強盗の一人が銃を放ってきた。さすがにこれは避けきれない。
「ふんっ!」
誰かが、玉を手でつかみ、私を助けてくれた。
そこにいたのは、薄いピンクの髪、幼い身長・・・・・・
「日菜!」
「話は後! そっちのナイフの人をやっといて! あとの二人は私に任せて!」
「了解」
「ふぅ。こんなもんかな」
「そんなに強くなかったけどね」
強盗はもうピクリとも動かない。
・・・・・・殺してないからね?
「実さーん!」
「おぉ、どうした」
おくからぞろぞろと出てきた園児たちは・・・・・・
「これからは、貴方のことを親方様と呼ばせていただきます!」
私に向かって土下座をした。
「親方様! 私に稽古を付けてください!」
「私も、親方様みたいな女になりたいです!」
その後、私は園児全員に稽古(実質戦闘訓練)をつけてやり、
私は、街中で園児に会うと・・・・・・
「親方様! ご無沙汰してしております!」
「お、おう・・・・・・」
園児からこのように呼ばれ、親から、毎度毎度反社会的組織の親玉と誤解を受けるのだった。
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