「俺」と「元カノ」

@zaemondo

始業式(前編)

けたたましく鳴るアラーム音を僕はあくびを噛み殺しながら止めた。


僕は織田達也(おだたつや)。ただのどこにでもいる普通の男子高校生だ。今は彼女はいない。「ふぁー」とあくびをしながら一階に降りる。朝ご飯を食べてながらふと時計に目をやると8時20分である。まあここから5分で中学校に着くし大丈夫だとゆっくり着替えていたらあることに気づいてしまった。

「そういえば今日から高校生だー」と気づいた時には叫んでいた。母さんに車で送ってくださいと目で語りかけたが、案の定送ってもらえなさそうだ。こうなったらしょうがない。僕はパンを口につっこんで家を飛び出した。ここから高校まで結構遠いし初日から遅刻だなとうなだれていると隣の家からバタンという音とともに「ヤバい遅刻だー」と言いながら女子が出てきた。コイツは稲垣四葉(いながきよつば)、ただの幼馴染で『元カノ』だ。


 「お前も遅刻かよ。小学校の時から変わんねーな」


 「その言葉そっくりそのままお返しするわ。」

 

とにらみあいながら登校した。下駄箱に貼り出されていたクラス表をみるとあろうことか隣にいるコイツと同じクラスだった。


 「なんでお前と同じクラスなんだよ。」


 「こっちこそなんであんたと同じクラスなのよ。」

 

と言い合いながら教室に入る。すると残念なことに全員体育館に移動してしまったようだ。

 

 「どうするの。もう始まっちゃうわよ。」

 

 「しょうがない。ここでサボるかー。」

 

 「なんであなたといっしょに待ってなきゃいけないのよ。」


 「だって今から行ったって全校生徒の前で恥晒すだけだぞ。」


 「なるほど。ならしょうがないわね。」


と結局コイツもいっしょに待つようだ。


 「あーあ、皆勤賞狙ってたのになー。」


 「でもこれで遅刻し放題だぞ。」


 「おー、なら明日から遅刻するわ。」


 「そんなに遅刻したら先生に目つけられるぞ。」


 「なら明日から私の家にきていっしょに登校しようよ。」


 「えー、めんどいからなー。まあ俺も起きるの遅いしまあいいかなー。」


 「やったー。これで私の家にインターホン鳴らしに来なかったらあなたのせいにできる

  わね。」


 「ほんとお前はめんどくさいな。だから別れたんだよ。」


 「もう聞き飽きたわ。」


そんなことを話しているとバターンと音が鳴りドアが開けられた。現れた男子は大柄でとても高身長だった。一瞬先生かと思うくらいゴツかった。


 「2人でイチャイチャしてるところ申し訳ない。俺はすぐ出て行くから安心してくれ。」


 「何言ってるんだ。コイツはただの『元カノ』だ。」


 「ほー。てっきり彼女かと思っちまったぜ。俺は石丸優馬(いしまるゆうま)。あんたらの名前は?」


 「俺は織田達也。」

 

 「私は稲垣四葉。」


 「さてと、じゃあ体育館行こうぜ。」


 「いや、俺たちはここに残ってるんだ。」

 

 「なんでそんなことしてんだよ?」


 「だって今から行ったって恥かくだけだぞ。」


 「何言ってんだ。体育館から戻ってくるところを待ち伏せてそこでちゃっかり入れば 

  いいだろ。」


 「悪知恵がすごいなあ。」


 「そんなところに関心してないで早く行くぞ。」


 「分かった。」


そして俺たちは体育館に向かった。


─────つづく






 

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