??章 ****駅_最後の終着駅

2_7(レコード:07残酷) 

 映像はモノクロに再生された。映し出された映像は爆発が起こる前数分前の映像だった。森の中で二匹の小悪魔を探している小悪魔たちの元に天使がやってきた。小悪魔たちは天使と話し悪魔が死ぬことを告げ悪魔のもとへ駆けつけようとした時に後ろから足音が聞こえてきた。天使たちは一斉に振り返る。


 「足音?親分!」

 「待って...違う。この足音は彼じゃない」

 「ご名答ー!よく分かったなー俺の足音が悪魔と違うって」

 「皆、下がって!誰だ!姿を見せろ」


天使は小悪魔たちを下がらせて言うと現れたのは人間だった。


 「親分じゃない...人間?」

 「悪いなー親分じゃなくてー」

 「何で人間がこの森に...一体何の用だ!」

 「そんなに反抗的な態度じゃなくてもいいのに」

 「答えろ!なぜ人間がここに」

 「俺の目的は異形殺しだ。君も分かってると思うけど悪魔だよ。俺たちは悪魔を殺しに来た。そのためにこの森に来たんだ」

 「親分を殺しに?ふざけるな!そんなこと許せるわけないだろ!」

 「許せるも何も君たち化け物に言われたくない。悪魔は害虫だ。生かせば多くの命を蝕む。それに悪魔を殺せば殺した分だけ強くなれる。俺は多くの悪魔を狩って殺す。悪魔狩りだ!」

 「悪魔狩り?」

 「君なら知ってるんじゃないかな?悪魔狩りについて」


人間は天使に向って言い天使も答えるように言う。


 「知ってる。悪魔狩りとは..」


 悪魔狩りとは、何1000年も前に起きた異形至上最悪の事件のことである。当初悪魔は異形の中で最も数が多い種族とされていた。善の異形は天使、悪の異形は悪魔から誕生したとも言われている。そのためどの異形にも悪魔は恐れ敬われていた。しかし、天使と違い悪魔は死の象徴と称されるほど残虐に多くの異形のみならず人間を殺してきた。悪魔に恐れた人間や弱き異形たちは天使たちや聖職者に助けを求めた。彼らの願いを聞きつけた者たちは悪魔を亡き者にするため手を尽くしてきた。その手はやがて天使にまで及んだ。天使は悪魔を殺し多くの者たちは喜んだ。しかし、それが悪魔たちの逆鱗にふれ多くの者たちを巻き込んだ戦争へと勃発した。結果、天使たちの一方的な蹂躙によって悪魔たちは敗北した。異形たちは悪魔たちを捕え見せしめとして殺そうと試みた。しかし、大半の悪魔は人を殺したこともない幼い子供や女性の悪魔であった。悪魔の王は自らの命と部下七匹を含めた計八匹の命で償うと訴えたが異形たちは聞く耳を持たず悪魔たちは処刑された。悪魔を処刑した天使はのちに調べで自分たちの犯した罪を知ることになる。

 悪魔たちは本来は温厚な性格で人を襲う異形ではなかった。悪魔を見つけた異形や人間が悪魔を攻撃し身を守るために反撃した際、襲ったと嘘をついた。騒ぎを聞きつけた他の異形や人間によって話しは広まり悪魔たちは無実の罪を着せられて殺された。この事実を知った天使たちは隠蔽し、悪魔狩りを異形至上最悪の事件として処理した。天使たちは悪魔狩りを禁止したが悪魔狩りは行われ悪魔の数はどんどん衰退していった。人間の中には悪魔を殺すことで力を得た者もいたそうだ。そして悪魔は最も数が少ない異形となった。


 「これが悪魔狩りだよ」

 「そんな...ひどいですよそんなの!勝手に決めつけて、最初に手を出したのは異形や人間なのに!襲ったって嘘ついて...結果殺されたなんて!」

 「それが事実なんだ。現に彼だってそうだろ?この森に来る前の彼は瀕死の重症だった。それがなぜか分かる?異形の子供に襲われたからだよ」


小悪魔たちは信じられない顔をしたが同時に理解してしまった。悪魔に聞くことが出来なかったことを...どうしてこの森に来た時に傷ついていたのかを。


 「信じられないかもしれないけど彼は悪魔。悪魔だから襲われたんだ」

 「じゃあ!悪魔じゃなかったら親分は襲われなかったのかよ」

 「そうだよ!」

 「信じられない...どっちが悪魔だよ。親分や殺された悪魔たちは皆...人間や他の異形たちに傷つけられて殺されたのかよ!そんな...あんまりだろ!」

 「小悪魔の君たちは理解できないかもしれないけどこれが現実だ。悪魔なんて生まれてはいけない、いらない存在なんだ。それを殺して何が悪いの?君だってゴミや汚れは捨てたり払うだろう?俺たちはただ駆除してるだけだよ。それの何が問題だって言うのかい?」

 「ふざけるな!親分のことを塵扱いしやがって...お前らの方が塵のくせに...天使さんの言う通り人間なんて信用するんじゃなかった。親分は殺させない!お前らは俺たちがここで殺す!」

殺気立つ小悪魔たちに人間たちは余裕そうに見る。

 「君たちが僕らを殺すなんてできやしないんだ」

 「舐めるなよ。俺たちは小悪魔だけど...俺たちは親分と違って人間を殺さない縛りはない。お前たち人間をいつだって殺せるんだ。本来俺達小悪魔は天使を食らうが主食は人間だからな。ここでお前らを食い殺す!」

 「そうすれば君らの親分は君らをどう思うかなー?」

 「例え配下じゃなくなっても嫌われても殺されてもいい。俺たちは親分に尽くすだけだ!」

 「君らに俺たちが殺せるわけな..!!」


人間はいや...この場にいる誰もが完全に油断していた。小悪魔たちが自分たちを殺せるはずがないと本気で思っていたらしい。小悪魔の一人が人間の腕を切り裂いた。人間の一人は痛みで悶える。


 「うわあああああああああ!」

 「どうした?殺されないんじゃなかったのか?」

 「ちっ!お前は殺す!」

 「やってみろよ人間!悪魔狩りだとかなんだか知らないが親分は殺させない!」


悪魔たちはそう言うと人間たちに向って走り出した。天使も小悪魔たちに参戦し人間たちに応戦する。


 「天使!お前も邪魔するな!」

 「悪いけどお前たち人間に彼は殺させない。この森は僕らの森だ。人間が土足で踏み込むな!皆、僕の手伝うよ!一緒に彼を救おう」

 「はい!」


天使が加勢したことで状況は一気に変わり人間たちも焦り始めた。


 「天使まで加勢始めた!もういい。全員殺せ!」

 「殺させない!ここは俺たちの森だ。お前たちは出ていけ!」

 「小悪魔が黙っていろ!」


天使と小悪魔たちは協力し人間たちを圧倒する。小悪魔に当たりそうな攻撃を天使が防ぐ。その際、天使に攻撃が来ないよう小悪魔たちが盾となる。天使たちによって人間たちは押されていた。天使の攻撃に膝をついた人間に追い打ちをかけた。


 「くそ!何なんだよこいつら...強い」

 「そもそも天使と悪魔たちが仲がいいなんて聞いてないわ!何なのよ。あんたたち...」

 「ここまで強いなんて聞いてない。くそ...骸人がほとんど全滅かよ」

 「残っているのは...俺と刹那と廃人はいとだけか...」

 「もういいんじゃないかな?結果は見えているでしょ?お前たちは僕らに負けた。お前たちも死にたくないでしょ。今ならお前たちが殺そうとした彼のよしみで逃がしてあげる」

 「誰が天使のいう事なんか聞くか!だいたいお前は悪魔を殺すためにここに来たんだろ!」


小悪魔たちは驚き不安そうに天使を見つめた。天使は小悪魔たちに向き合い小さな声で大丈夫と呟く。呟いた天使は人間と向き合い言う。


 「そうだよ。初めは彼を殺すつもりだった...けど事情が変わってさ、彼は殺さない」

 「天使のくせに...職務放棄かよ」

 「人間の堕ちたお前に言われたくはないな。知ってるよ。お前らは骸人だよね?」

 「骸人って一体何なんすか?」


と小悪魔たちは天使に聞く。天使は小悪魔たちに骸人のことを説明した。


 「骸人とは...人間のなれの果てだよ。堕ちた人間が行きつく所で...人間の墓場さ」


 骸人とは人間のなれの果てであり、堕ちた人間が行きつく所とされている。一度堕ちた人間はもう二度もとには戻れないとされている。骸人はいつから誕生したのかどうなるのかは記されていないが...とある書生と関連があるらしいが事実は不明のままである。


 「それがこいつら骸人なんっすね」

 「そう。本来天使は骸人は管轄外なんだ。骸人は人間であり人間ではない生き物だからね。異形ではないから手出しはできないんだ。骸人は書生が対処するようになっているんだ」

 「書生が?なら利籐さんも書生ですよね。利籐さんに頼めばいいんですね」

 「そうだね。彼らももうこの怪我では彼を殺せないだろう。大人しく彼に引き渡そうか」


と、天使が言うと骸人たちの様子が変わった。利籐の名前を出した途端急に大人しくなった。あまりの変化に天使は様子を伺っていると一人の骸人が暴れ出した。


 「利籐...利籐だと...」

 「な、なんだ!!天使さん、こいつ急に暴れたして...うわあああああ」

 「危ない!」

 「天使さんすみません!」


暴れ出した勢いで激しい風が吹き荒れて小悪魔たちは吹き飛ばされる。天使は彼らを受け止めると骸人を見た。


 「天使さん。こいつ一体何なんですか?」

 「分からない...なんだ...」


 突然暴れ出した骸人の周りには激しい風が吹いているため様子が分からなかった。風に飛ばされないように耐えていると次第に風が止んだ。骸人の姿を見た天使たちは戦慄した。先ほど人間の姿とは違うまがまがしい姿は不気味な雰囲気を醸し出していた。天使はその異様さが恐ろしかった。どの異形にも属さない、人間でもない未知な生き物を相手にしているような感覚に陥った。天使は冷汗が止まらずその場から動くことが出来なかった。動けば死ぬ...


 「何なんだあいつ...」

 「動くな!動いたら!!」

 「え...」


小悪魔たちは動こうと一歩踏み出した。それに気づいた天使は焦り叫んだが間に合わず骸人に襲われた。一瞬のことに気づかなかった小悪魔たちは自分の体から心臓が抜かれていることが分からなかった。体から血が流れて初めて気づいた小悪魔たちは痛みで叫び体中から大量の血が流れた。叫ぶ小悪魔たちの口元を掴んだ骸人は両手で引き裂いた。引き裂かれた小悪魔たちの体はバラバラになり、辺り一面に血が飛び散った。それを見た天使は恐怖で言葉を発すことすらできなかった。


 「利籐...利籐は殺す...あいつは裏切り者だ...あいつのせいで...殺す...あいつは俺が殺してやる...そのために...悪魔を殺す...」


と骸人は呟いた。小悪魔の返り血は天使にもついたが骸人の顔には大量の返り血がついていた。骸人はそれを気にすることなく辺りを見回す。二人の骸人は気を失っていた。骸人は小悪魔たちを見つめると小悪魔たちの方へ向かって歩き出した。小悪魔たちは恐怖で動けずその場で震えていた。


 「まずい...逃げろおおおおおおお!」

 「う...ううう...来るな!うわああああああ!!」


天使は必死に叫んだが腰を抜かした小悪魔たちは逃げることが出来なかった。小悪魔たちを助けなければいけないが天使は恐怖で動けず呼吸が荒くなる。


 「助ける...助けなきゃ...助けないと殺される...動け!動け!動け!動け!」


天使がふと小悪魔たちと目が合うと小悪魔たちは声に出さす天使に向って言う。”逃げて...親分を守って”という小悪魔たちの言葉に天使は目が覚めた。


 「何やってんだ僕は...怖いとか逃げるとか...彼を殺させないためにここにいるのに...目の前の命も救えないで彼の命が救えるわけないだろ。彼ならきっとこうする」


と、天使は言うと小悪魔たちを救い骸人から距離を取る。


 「天使さんなんで!逃げて親分を!」

 「僕は逃げない。仮に逃げても骸人は危険だ。君たちが戦っているのに逃げるなんてできないよ。君たちは僕の大切な家族なんだ。この森は僕らの森だ。これ以上骸人の好きにはさせない。それに...君たちが悲しいよ。勝てる勝てないじゃない。勝つんだ。僕らは骸人をこの森から追い出して、彼の命も守って、皆で生き残るんだ。死んでしまったみんなの分まで必ずやり遂げるんだ!」

 「天使...さん...はい!」


天使の言葉を聞いた小悪魔たちは返事をする。改めて骸人に向き合うと恐ろしいが天使には小悪魔たちが、小悪魔たちには天使が傍にいるので怖くはなかった。


 「いくよ皆!」

 「はい!」


天使と小悪魔たちはそう言い合うと骸人に向っていった。


 天使は自身の力を最大に使ったおかげで小悪魔たちも天使もなんとか応戦できたが相手は骸人だ。どんどん体力を削られていく。次第にどんどん体力を削られ死にかけていた。小悪魔たちは全員力を使い果たしその場で倒れてしまう。


 「天使...さん。すみません」

 「いいんだ!全員休んでて!」


天使は骸人の攻撃をはじき返しながら小悪魔たちにそう言った。小悪魔たちは頷き天使と骸人の攻防を見る。


 「殺す殺す...」

 「ちっ!相変わらず強いな!返すのでせいいっぱいだ!」

 「殺す殺す...利籐は殺す!」

 「さっきからそればっかりだな。僕たちは利籐じゃない」

 「殺す殺す...」


骸人は先ほどからずっと同じ言葉を口ずさんでいた。”殺す殺す...利籐は殺す!”っと。骸人は利籐に裏切られたと言った。彼に対して激しい恨みでもあるだろう。骸人をよく見ると無意識で戦っていた。利籐に対する憎しみだけで動いていることに気がついた。骸人を吹きと出して一息ついた。


 「これなら骸人に勝てる。自分の持っている力を最大限に使えば...でも」


天使の力を使い小悪魔たちを守っている。その力を解いたら小悪魔たちは巻き込まれてしまう。天使はどうすればよいか悩んでいた時に気づいた小悪魔たちは天使を呼んだ。天使は小悪魔たちを見ると頷いて言った。


 「俺達は大丈夫。だから使ってください」

 「でも...君たちを巻き込んでしまうかもしれない。それに標的が皆にいったら」

 「それでも大丈夫です。天使さんが戦ってくれたおかげで体も少し休めましたから。俺たちも戦います。勝手親分を守ります」

 「ありがとう。骸人を追い出せたらいくらでもお礼をするよ」

 「それは楽しむですね...あっ!天使さん!」


天使の後ろから骸人が起き上がってきたことに気づいた小悪魔たち天使に言う。天使は振り向くと血を流した骸人がこちらに向かって歩き出していた。骸人は天使に切りかかるが先ほどの力は無く弱まっていた。骸人も限界が近づいていたのだ。天使は一度小悪魔たちを見ると自身の力を最大限に使い骸人に向って放った。骸人にもろに受けて吹き飛ばされた。吹き飛ばされた骸人はもとの状態に戻り、天使は小悪魔たちの安否を確認する。


 「みんなーどこ?」

 「天使さん!」


声がする方へ行くと小悪魔たちが離れた所に固まっていた。全員無事のようで安心したがどこか様子がおかしい。吹き飛ばした骸人の他にあと二人骸人がいたことを思いだした。周囲を見るが見当たらない。


 「二人の骸人はどこに?」

 「天使さん後ろ!」


一人の小悪魔が天使に向ってそう叫ぶと何かが刺さる音と共に背中に痛みが襲う。


 「え?」

 「ったく...殺そうと思ったのにいいやがって...」


後ろから声がして振り向くと刹那とよばれた骸人が立っておりその手には巨大な釜が握られていた。釜で背中を斬られたのだ。釜を抜かれた天使はその場で倒れ、小悪魔たちの方を見る。廃人と呼ばれた骸人によって小悪魔たちが巨大な銃で撃たれていた。


 「まったく悪魔を殺すのに何でこうなるんだよ。骸を回収して帰るぞ」

 「悪魔は?」

 「もういい...ったくこいつらのせいで!」

 「ぎゃああああああ!」

 「や、やめろ!!」

 「黙ってろ天使。刹那そっちよろしくー」


廃人は小悪魔たちの角や尻尾を引きちぎる。ちぎられた小悪魔たちは弱り果てて死んでしまった。残ったのはさきほど叫んだ小悪魔だった。小悪魔を踏みつけて殺そうとする。一方刹那は天使は何度も釜で刺していた。刹那は吹き飛ばされ悪魔を殺せず苛立っていた。


 「分かってる。天使って言ったけ?あんた...あんたのせいで計画が滅茶苦茶よ。責任取ってくれるのよね?なら死んでくれる?天使とかうざいんだけど」

 「ぐっ...あがっ!」

 「きも...早く死ね」


刹那はそう言いながら天使を何度も斬り付ける。天使は小悪魔痛みに耐えながら小悪魔を見ると小悪魔と目が合う。天使と小悪魔は手を必死に伸ばす。


 「天使...さん...」

 「小悪魔...君...手を...」


天使と小悪魔に気づいた刹那は天使の腕を切りつけ廃人は踏みつけた。踏みつけらた小悪魔の腕は折れてしまい悲鳴が聞こえる。


 このままでは二人とも死んでしまう。悪魔を助けたかっただけなのに...助けるどころか死んでしまう。せめて目の前の命だけでも...天使は刹那が巨大な釜を振り上げようとしている隙に立ち上がる。油断をしていた刹那と廃人は一瞬動けずその隙に小悪魔を抱えて距離を取る。その時に、天使の羽に刹那と廃人が触れてしまった。


 「お前!なんで動けるのよ。死にぞこないのくせに」

 「天使...さん」

 「大丈夫...がはっ!」


天使は刹那達から距離をとったものの負った傷口が開き吐血してしまう。小悪魔を抱えたままその場で蹲ってしまう。その様子を見た廃人は天使を殺そうと近づいた。


 「せっかく楽しんでいたのに興ざめだ。殺す」

 「殺ちゃいましょうよ廃人。こいつむかつく...」

 「そうだな...ってなわけで死ね」

 「うぐっ!離せ!」


廃人が天使の羽を掴んで立たせようとした時に白い羽が紫色に変わりやがて黒色に染まった。


 「ねえ?こいつの羽の色どうしたの?」

 「羽の色?変わって...!!」


何かに気づいた廃人は急いで天使の羽を引きちぎろうとする。天使は暴れて逃げようとし、片方の羽を踏み押さえつけた。


 「なにしてんの廃人?そんなこといいからこいつを!」

 「そんなことどうでもいい。早くこいつを殺さないとやばい!」

 「何が!」

 「天使の羽が黒く染まったら堕天する」

 「そしたら堕天使に!急がないと」


事態に気づいた刹那も急いで天使の羽を引きちぎろうとする。小悪魔は天使の腕から逃げ出して廃人の足に噛みつく。噛みつかれた廃人は小悪魔を放り投げる。


 「ったく邪魔しやがって!」

 「小賢しいのよ。死にぞこないのくせに」


小悪魔に刹那たちは踏みつける。天使は死にかけていた。体中痛くて立ち上がらない。


 「体が...力が入らない。早く助けないと...」


天使は指を何とか動かそうとするが動けない。こうしている間にも小悪魔の悲鳴が聞こえてくる。


 「早くなんとかしないと...殺される。殺される...殺される。守らなきゃ...こいつらから...殺さなきゃ...殺す。そうだ...こいつら殺せばいいんだ...こいつらを殺す」

 「何で立ち上がってんのよこいつ。さっさと死ね!」

 「待て!刹那」


天使はそう呟くと立ち上がる。天使が立ち上がったことに驚いたが刹那は気にせず近づき殺すとする。廃人は天使の様子が変わり刹那を止めるが間に合わなかった。刹那は一瞬で吹き飛ばされ廃人は受け止めた。


 「こいつ...堕天が進んでる。今殺さないと...クソが!」

 「殺す...殺す!」


天使と廃人の力がぶつかり合い激しい爆発が起こった。


 「天使さん...天使さーーーーーん!う、うわああああああ」


小悪魔は吹き飛ばされながら天使の名前を叫んだ。


 爆発が起きて吹き飛ばされた小悪魔は目を覚ますと傍に天使がいた。天使は爆発から小悪魔を守ってくれたのだ。小悪魔が礼を言うと天使は嬉しそうに笑った。


 「これで...あいつらも森から出て...」

 「天使さん、急いで聖なる泉に行きましょう」

 「ダメだよ。今の僕じゃ...骸人に羽を触られて堕天しかけてるんだ。行ってもだめだよ」

 「そんなことないです!とにかく...!!」


小悪魔が天使を支えて歩こうとした時、後ろから刹那と骸を抱えた廃人が出てきた。


 「お前ら...生きて...」

 「くそ...もう体が動かない」

 「ちっ...興ざめだ。これじゃあ悪魔を殺すどころかこっちが死ぬ。今は引いてやる。俺たちに刃を向けたこと後悔させてやる。この森は終わりだ。じゃあな」


と言い、森を燃やし火は一瞬で広がった。廃人は背中から黒い翼を生やすと刹那たちを抱えて飛び去った。


 悪魔は死ぬことは無かったが結果的に小悪魔たちは全滅した。天使は堕天しそうになり必死にこらえていたがこのままでは傍にいる小悪魔まで殺してしまう。小悪魔から離れようとした時に木々が倒れてきた。天使は無事だったが小悪魔は避けられず潰され胸から下が無くなってしまった。


 「そんな!嘘だろ!」

 「俺のことはいいんです...早く聖なる泉に行ってください」

 「でも!」

 「俺は大丈夫ですから...」


小悪魔は天使の腕を掴んでそう言った。小悪魔は今にも泣きそうな顔をして言う姿に天使も涙を流した。


 「ごめん...行ってくる。行ってくるから待っててくれ!」

 「はい...待ってます」


天使はそう言うと聖なる泉に向かった。天使の後姿を見た小悪魔は小さな声で呟いた。


 「ありがとう...さようなら」


と言った小悪魔の言葉は誰にも聞こえなかった。


 一方天使は聖なる泉についたものの泉の中に入ることはできなかった。


 「痛い。やっぱり堕天しかけると天使じゃなくなるから...もう聖なる泉に入ることはできないんだ。これじゃあいずれ僕も堕天使になって無差別に傷つける異形になる。そうしたら彼のことを殺しちゃうのかな?」


天使は頭の中で悪魔を殺せと言う言葉に葛藤し、発狂する。


 「違う違う違う!殺さない殺さない殺せない!収まれ収まれ...」


頭を抱えて叫ぶ天使はふと近くに倒れていた骸人の死体を見た。その死体を見た時に”喰らいたい”と言う言葉が頭の中を過った。


 「ダメだダメだ...食べたら戻れない...ダメだダメ...」


天使は自分と葛藤しながら骸人の死体の一部を喰らった。食べてしまった...食べたくないのに...天使は死体を食い尽くした。死体を食い尽くした天使は壊れたかのように発狂しながら目から涙を流した。正気に戻った天使は口元の血を必死に落とそうとする。天使が聖なる泉で血を落とそうとしたため聖なる泉は枯れ始めていた。森が死にかけてていることや悪しきものの血が泉に流れたせいで泉の力は衰えてしまったのだ。その数分後に悪魔が天使の元へとやってきたのである。

 


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