幽霊列車〜前世の旅 《冥界の旅編始動》
時雨白黒
幽霊列車~前世の旅 序章 幽霊列車
「ごめんなさい...来世は幸せになれると信じて...」
風が吹き荒れる中セーラー服を着た女子高生は二階から飛び降りた。
序章_幽霊列車
目を覚ますと見知らぬ場所に立っていた。ここはどこなのだろう?辺りを見たが見覚えは無く、空を見上げるとどす暗くて赤い月が上っていた。地面が荒れ果て風も荒く周りには誰もいない。不気味で見たことがない風景に戸惑っていた時遠くの方から列車のようなベルが聞こえてきた。列車の音が聞こえてきたことでここが駅のホームだということに初めて気が付いた。駅のホームの看板からここがどこのなのかを確かめようとしたがさびで汚れてしまい肝心なことは何も分からなかった。どうすればいいのか悩んでいた時椅子を見つけたので一休みすることにした。少しの間休んでいると私の他にも駅のホームに人が来るようになった。この駅のことを聞くにはちょうど良く女性に話しかけてみることにした。
「すみません。この駅のことで少し聞いてもいいですか?」
「はい。なんですか?」
「実はここのことで聞きたいこと...」
聞きたいことがあると最後まで言おうとしたときその女性の顔は真っ黒で何も見えなかった。他の乗客も同様だった。顔だけが黒く染まり服は着ているものの浮いていて彼らは気にする様子もない。一体何なんだろう。夢であってほしいがあいにく夢ではなかった。女性には気のせいであると伝えた。女性は軽く会釈した後駅のホームをに向かった。ここは不気味で不思議な場所だ。彼らはどこへ向かうのだろうか。彼らの乗る列車にはなにかあるのか?その列車に乗れば何かわかるのだろうか...そんなことを考えていると列車がやってきた。黒く大きく立派な列車で、赤い文字で【幽霊列車】と名前がある。列車は着くと扉が開き次々に人が乗り込んでいく。気づけば自分以外全員が列車に乗っていた。
「列車がこんなところに...待っていてもしょうがない。乗ってみるか」
意を決して列車に乗り込んだ。これが全ての始まりだった。
列車に乗ると扉が閉まりゆっくりと動き出した。列車内は明るく雰囲気も良く列車の外と比べるとその違い差から拍子抜けそうだ。だが乗客はやはり顔が見えない人たちばかりだ。
「変なの。何で顔が見えないんだろう」
そう口に出して歩いていると乗客のように顔が黒いメイド服をきた女性が現れロビーに案内された。ロビーに着くと開いている椅子に座らされた。手で合図をされてここで待つように指示を受ける。何があるのだろうと様子をうかがっていると車掌服を着た男性が現れた。顔はあるものの肌は白く、青ざめている。髪色は白くて片目には前髪がかかっている。黒色の帽子は深く被り表情は見えず不気味だ。車掌はロビーの中央に立つと一礼した後話始めた。
「それではお待ちいただいた皆様。私、車掌でございます。皆様の前世でのご活動大変ご苦労様でした。今しばらくお待ちください。当駅から乗車いただいた皆様は五名。五駅の旅へ皆さまをお連れします。駅に着くまでしばしお時間かかります。それまでどうぞ御寛ぎ下さい」
車掌は一礼してロビーを後にした。車掌の話しが終わると乗客も席を立ち各々自由に行動していた。それにしても何を言っているのだろう?前世での活動?五駅の旅?車掌の話しが理解できずロビーを見ると、乗客たちはロビーから離れていった。ロビーには自分以外誰もおらず一度ロビーから離れることにした。廊下を出ると変わらぬ景色に迷いそうになる。
「さっきもここ通った気がする。もしかして迷った?地図があれば楽なのに...」
変わらぬ景色に困っていると顔の見えないメイドが現れた。顔の見えないメイドはどこかそわそわしていて可笑しい。何かを探しているようだった。顔の見えないメイドと目が合うとこちらへかけより腕を掴まれた。
「え?ちょっと!どうし?え?え?」
困惑する私をおいて顔の見えないメイドは歩き出す。案内された場所は一人部屋で中には誰もいない。顔の見えないメイドに中に入るよう促された。どうやらここは私が利用する部屋らしい。顔の見えないメイドは私を部屋まで案内するため探してたのだ。顔の見えないメイドは私を傍にあるベットに座らせるとお辞儀をして部屋から出て行った。部屋は薄暗く机と入り口の傍には蠟燭が置かれていた。蝋燭の他にマッチも置かれているのでこれらを使えば部屋は明るくなるだろう。簡易的なベットや本棚がある。試しに本を一冊読もうとしたが著者や作品名は汚れて見えずページが破られて読むことが出来なかった。
「肝心な本もこれじゃ意味ないな。そろそろ暗くなってきたし蝋燭に火をつけるか」
置いてあるマッチで蝋燭に火をつけると部屋が少し明るくなった。
「これでよし。多少はいいか。問題は...これからどうするか...」
列車に乗ったのはいいがその後が問題だった。改めて部屋を見るが何もすることがない。ベットで横になりため息をついた。
「何もないな...暇だ。これからどうしよう...せめて部屋に窓とが景色を見て時間を潰せるのに...窓といえば鏡もない...。乗客は顔が見えないから置いてないとか?案内されたのはいいけどこれからどうしよう」
コンコン...誰かがドアをノックした。誰だろう?返事をすると誰かが部屋に入ってくる。顔の見えないメイドと思ったが部屋に入ってきたのは例の不気味な車掌だった。
「はい。どうぞ」
「こんにちは。御寛ぎ下さいましたか?」
「まあ...少し..」
車掌が部屋を訪ねてきたことは驚いたがこれはチャンスだ。車掌が言っていた前世のことについて聞くなら今しかない。私は車掌の様子を伺いながら車掌に聞いてみた。
「あの車掌さん。聞いてもいいですか?」
「はい、何でしょうか?」
「前世の活動って一体何なんですか?それにここは一体?皆どこもかしこも不思議で不気味で...」
「はあ...あなたは知らないのですか?」
私の質問に車掌は呆れて深いため息をはいた。知らなくて質問しただけなのに呆れられて表抜けた声を出した。この列車に乗った乗客は皆知っていて私だけ知らないのか?知っているのが当たり前なら恥ずかしい。聞かなきゃよかった。恥ずかしくなり赤くなる顔を抑えながら下を向いた。その様子を見た車掌は腹を抱えて笑い出した。車掌に笑われて少し苛立ち車掌を睨んだ。車掌は一呼吸して私を見ながら可笑しそうに言った。
「あ~おかしい。こんなに笑ったのは久しぶりです。」
「ああーそうですか...それはどうも」
「もしかして怒ってます?」
「別に怒ってないしふてくされてません」
「笑ってしまってすみませんでした。あなたは知らないでしたね。なら、きっともうすぐわかりますよ。この列車が次に止まれば...ねえ?」
車掌が意味深な笑みを浮かべたすぐ後に列車が止まった。
「おや?噂をすればですね。では私は先に参りましょうか。失礼いたします。」
車掌は帽子を被り直すと会釈をして後部屋を後にした。
車掌が部屋を出たすぐ後に駅のアナウンスが流れる。
「何なんだろう。すぐに分かるって...。相変わらずどこか気味が悪いなあの車掌。まあいいか。この駅の名前は...」
『え~三浦~三浦~三浦~三浦でございます。列車が止まりまーす』
「三浦駅?そんな駅あったっけ?」
聞き覚えの無い駅の名前に首を傾げているとその時だった。突然悲鳴が聞こえてきて急いで声のする方へ向かった。
「悲鳴!誰かに何かあったんだ。行かないと」
悲鳴が聞こえたのはロビーの方で中へ入ると女の人が血を流して亡くなっていた。
「うわっ!!人が死んでる。どっどうしよう」
どうしていいのか分からず焦っていた時車掌がロビーに現れた。目の前で人が亡くなっているというのに車掌は冷静でこちらを一瞬見た後平然と話し始めた。
「え~皆様。ただいま殺人事件が発生いたしました。乗客の皆様の中でこの方と関わっている方はいらっしゃいますか?」
車掌は乗客にこの人と関わりのある人なんて聞いて素直に言うわけない。関わりがある人なんて自分から言えば犯人ですなんて言ってるようなものだ。疑われたりするのに自分から言う人なんていない。それにこの人は亡くなっている。見た目だけだけど出血がひどいし、顔だって大量に血がついて...あれ?その人他の乗客と違ってちゃんと顔がある。そのことに気づいた時一人の乗客が手を挙げた。
「私です。」
「なら当駅ではあなたの前世について解明しましょう!」
「解明...当駅?」
「そうでした。あなたはこの列車のルールを知らないのでしたね。ではご説明いたしましょう。当駅では前世で活躍し亡くなられた方が集まります。その時前世を明らかにするために毎回駅で殺人事件が発生します。」
「それじゃ...この遺体は」
「乗客の死に関する人が殺されますが安心してください。本当に亡くなっているわけではありません。一時的に魂をお借りしているだけで、その魂には何の影響もありません。」
「......」
「続けますね。我々は乗客の皆様と乗組員たちも含めてこの場にいる皆様の前世をすべて解明します。前世を解明するまでは終われません。前世のヒントは列車内に散りばめられています。それでは我々で皆様の前世を明かしましょう!」
「それがこの列車...」
「お分かりいただけましたか?」
「はい。」
「それは参りましょう!!前世探しです。」
車掌は右手を挙げてそう言った。この列車は前世を明かすための列車。前世を解明するために毎回駅で殺人事件が起きる。殺されたのは、前世を解明する乗客に関わっている。しかも本当に殺されているものではなく魂を借りているだけ。乗客の前世を解明するまで終わらないなんて...とんでもないことに巻き込まれてしまった。これから乗客の前世を明らかにする旅が始まった。
『序章 幽霊列車 』(終)NEXT→ 『一章 気まぐれな殺人鬼』
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