呪われたサイトの行方
芋でんぷん
10年ぶりの再会-1
話し声や食器の音が騒がしい居酒屋に入り予約者の名前を店員に告げると奥の座敷の席を案内された。
「お、太一!こっちこっち!」
声のした方を見ると懐かしい面影のある男が俺を呼んでいた。
「翔、久しぶりだな。何年ぶりだ?」「卒業してからだから10年ぶりか。」
翔の隣に腰を下ろしながら座敷を見渡した。奥の方には同窓会を主催した委員長がメニューを見ながらあれこれ注文しているようだ。他の同級生たちもなんとなく面影があり当時を思い出し懐かしい気持ちになった。
人も集まりそれぞれの注文した飲み物が集まったころに委員長が乾杯の音頭をとる。乾杯のついでに始まる近況報告に適当に相槌を打ちつつ目の前の料理と酒を流し込む。卒業して10年にもなると近況報告なんてほとんど結婚、出産あとは仕事の話がほとんどである。
「翔は転職したんだっけ?」と問いかけると翔が口いっぱいに唐揚げを頬張りながら頷いている。
「ああ、今はメディアのライターしてる。」翔は大手のメーカー企業で安定した生活を送っていたが、たまたま出会ったメディア関係者から誘われたらしい。俺からすればもったいないような気もするが、思い返せば翔は文集や作文の類がやたら上手かったからライターが天職なのかもしれない。
唐揚げをハイボールとともに流し込んだ翔が口を開いた。「そういえばあの時俺らずっと怖い話ばっかり見てたよな、覚えてるか?」「もちろん覚えてるさ、懐しいな。」当時流行っていた都市伝説のサイトをみて試してみたり呪いのフラッシュゲームなどもたくさんした。夏のホラー特集の番組があればいつも録画して翔の家で観たりもしていた。今考えればしょうもないものも多かったが、当時は熱中して毎日のように調べたりしていたものだ。
「大人になってから全く興味もなくなってたんだけどさ、今度ホラー関連の記事でも書こうかと思ってさ。太一は今でもそういうの興味あるか?」「たまにSNSで話題になっているやつとかは見るけど、あん時ほどではないな。」「また面白いものがあったら協力してくれよ。」そう言いながら俺たちは10年前の話に花を咲かせた。
同窓会はお開きとなったがなんとなく翔とは近いうちに会うことになりそうな気がした。
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