第7話 親子関係
目が覚めるとそこは自分の部屋で、パパの笑顔が一番に飛び込んでくる。
いつもと同じ私の知っているパパだ。
「星歌、おはよう」
「おはようパパ」
私も自然に笑顔になり昨夜のことは夢だと錯覚しそうになるけれど、パパの額とほほに絆創膏が貼ってあって現実と受け止めるしかない。
大好きなパパを私が傷つけてしまった。
それに………。
「ねぇパパ、本当のことを教えて欲しいの」
「そうだよな。ここまで巻き込まれた以上、もう隠しておけないよな」
体を起こしパパの目をしっかり見つめながら真剣に問うと、パパも話すつもりだったのか頷き私の隣に座り肩を抱き寄せる。
私とパパの親子関係がここで終わってしまう。
血縁関係がなくてもパパは育ての親で私の父親であることには変わりがないけれど、これからは命に関わる問題でそこまでしてもらう資格は私にはあるのだろうか?
ここまで育ててもらえただけでもありがたいのに、そこまで迷惑を掛けられる?
蛙男の親分? から私を護ってくれる?
……ん?
血縁関係があったら子供のためなら命を掛けるのは当然だと思っている?
私って実は最低の人間なんじゃ?
「……私は魔族だったんだね?」
「そうだよ。母さんは魔王の娘だった。お前は父さんと母さんの自慢の娘だ」
「……は?」
「え?」
知っていると言え直接聞くのは怖くて遠回しに聞いたはずが、予想外過ぎる嘘なき答えを聞かされ間抜けな声を出してしまう。
パパも私がそんな反応を見せるとは思っていなかったのか、拍子抜けをしつつ戸惑い口を塞ぐ。
お母さんが魔王の娘だから、私は魔王の孫娘。
だから私は魔王の器として、蛙男に命を狙われた。
それはよく分かったけれど、お母さんとパパの自慢の娘になるの?
地球人のパパとトゥーランの魔族であるお母さんがどうやって出会ったの?
「私は本当にパパの娘なの?」
「当たり前じゃないか? 父さんと母さんが愛し合ってお前が生まれた」
ちょっと理解不能で疑いながらも確認すると、パパは当然とばかりに恥ずかしがる事なく教えギュッと抱きしめる。
「パパはどこでお母さんと出会ったの?」
「トゥーラン。父さん若い頃英雄候補として、トゥーランに召喚されたんだ」
どうしても二人の出会いが気になり率直に尋ねると、ラノベのような展開を話される。昨日までの私なら信じられなかったけれど、蛙男に魔法そして異世界と来たらもう信じるしかなかった。
だからパパはあんなに強かったんだね。
不安だった気持ちがサッと消え、明るい気持ちに変わる。
「……パパって意外と手が早いんだね? 十四歳でお母さんとそう言う関係になったんでしょ?」
「!? バ馬鹿、と年頃の娘が何父親に聞いてんだ?」
本当なら感動のシーンのはずが素朴な疑問を聞くことによって空気は台無し。
これにはパパは真っ赤に顔を染め激しく動揺しつつ声を裏返し怒られる。
確かにこんなこと冷静だったら、父親に聞くべきことではない。
「それはそうだけど……」
「この世界では十五歳の時の子になってるが、あっちでは二十一歳の時の子」
愚かな娘にも分かる説明をしてもらいようやく納得した瞬間、変に誤解してショックを受けた自分が情けなくなる。
蛙男はただ私が魔王復活の器で魔族と言っただけで、パパの子じゃないって一言も言っていない。
なのに私が勝手に設定を作って誤解をした。
最悪。
だけど、良かった。
私がパパの本当の娘で。
「そう言うことだったんだ」
「星歌。お前は父さんにとって命よりも大切な宝物だ」
これ以上もない親の愛情をたっぷりもらい、今は恥ずかしいよりも嬉しく思う私がいる。
こんなに親から愛されて、私は幸せ者だ。
この幸せをなくしたくないから、昨夜のことをすべて話して護ってもらう。
本当なら私一人でなんとかするべき事なのだろうけれど、蛙男にさえ何も出来なかった人が一人で解決できるはずがない。
殺されて、魔王復活の器になるだけ。
そうしたらパパ悲しむよね?
「パパ、これから昨夜のことを話しても良い?」
「だったらリビングで話してくれないか? 龍ノ介と陽ちゃんが朝食の支度をしている」
「そうだった。それで陽は、どこも怪我していないよね?」
「ああ、大丈夫だよ。昨夜は龍ノ介と手分けをして探してたから、あの後すぐに合流し我が家に帰ってきたんだ」
「それなら良かった。龍くんは全部知っているんだね」
「龍ノ介は魔王を倒した英雄だからな」
「納得です」
陽の無事なのを今更知った薄情な私であり、龍くんのことは別に驚きもしなかった。
むしろそう言うことだからパパと龍くんは友情より固い絆で結ばれているんだなって納得がいく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます