緑の章
第16話 隣の芝生は緑…
「そうか…コレがやりたかったのかシルクは」
名作『風の丘のウマシカ』を視聴したクロコ。
昨夜、契約上の主たるシルクの奇行を理解したのは明け方であった。
チタンの部屋でDVDを見終えたクロコ、全てを理解した。
「チタン、シルクの弟にして虫けらのごとき存在のチタンよ、起きろ」
寝ているチタンの顔をフェルトの前足でトストスと叩くクロコ。
「う~ん…うるさい…」
「起きろ‼ チタン、シルクの弟にして脳みそがトゥルントゥルンの艶ありホワイトなチタンよ」
「俺の脳みそを見たことがあるのかテメェは‼」
血圧高めの目覚めをかましたチタンの起床であった。
「貴様の脳みそか…魚の白子みたいな感じじゃないか? 売っても、白子ほどの価値は付かないだろうがな」
「俺の脳みそは鍋の具以下ってことか?」
「魔界に行けば、多少は価値が上がると思うがな…チュウチュウ吸う奴いるしな」
「俺の脳みそをチュールみてぇに言うんじゃねぇ‼」
「ソレはそうとな、子供のくせに血圧高めなチタンよ聞け、シルクはコレを望んでいたのだな今朝、あの奇行を理解したのだ」
スッとDVDをチタンの前に差し出したクロコ。
「誰のせいで血圧上がってるんだと思っているんだ‼ ……ウマシカか…うん…言われてみればそうかもしれない」
「ほぅ…やはりそうか、あの虫から気色の悪い触手が出るのだな…そうか…それでデカくしないとならなかったのか…ふむ、そういうことか」
「ワラジムシから触手は出んと思う…見たことない」
「なんと? では、何のためにワラジムシをミッチリと集めたのか?」
「知らん…姉ちゃんの勘違いというか思い込みというか…まぁ無茶振りというか」
「うっかりデカくしなくて良かったなチタンよ」
「そうだな、近所迷惑の域を飛び越えているからな」
「チタンちゃん、ちょっと」
母親に呼ばれたチタン。
クロコもポスポスと付いていく。
「チタンちゃん、ほらっ庭がね~金色なのよ~」
母が指さした、猫の額ほどの庭は朝日に照らされキラキラと輝いていた。
「ほらっ、目に煩いでしょ~、チタンちゃんクロコちゃんと掃除しておいてね~今日中に」
「なんで?」
「シルクちゃんがやると思うの? アナタは」
「……やらぬな…ワタシには解るぞチタンよ、シルクはやらん‼」
「オマエはやれよ‼ 使い魔になったんだろ‼ 下僕なんだろ‼」
「うむ…否定はせん、がしかし…その下僕より下位の存在である貴様がやらんでいいということにはならんぞチタンよ」
「頼むわね~」
チタンとクロコが金色に塗れている同時刻。
本屋で立ち読みしていたシルク。
「この夏…チェンジング・マイ・サマーバケーション…」
何やらニタニタと笑いながら買う気もない本を握りしめクシャクシャにしていたシルクであった。
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