■読書案内――土門拳

●土門拳『土門拳の風貌』(クレヴィス、二〇二二年)


 写真集『風貌』の作品と、雑誌などのために撮られた人物写真をあわせて収録した写真集です。『風貌』からは八三点の作品中、四七点が収録されています。


 B5変形版の見開きの左ページにはモデルの直筆署名、土門拳の撮影記、モデルの略歴、撮影情報が、右のページには肖像写真が掲載され、「写真の鬼」土門拳の観察眼の冴えを写真・文章の両面から味わえる写真集です。



●土門拳『鬼の眼 土門拳の仕事』(光村推古書院、二〇一六年)


 土門拳の代表作を網羅した写真集です。


 戦前から戦後の一五年間に撮影された「尊敬する人、好きな人、親しい人たち」の肖像写真集『風貌』。


 戦争の激化するなか大阪の文楽座に通い詰めて撮影され、一九四〇年に空襲で焼失する以前の姿を今に伝える『文楽』。


 一九五七年の広島を撮影し、原爆投下一二年を経てなお「生きていた」惨禍を伝え、国内外を震撼させた『ヒロシマ』。


「もはや戦後ではない」という文言が経済白書に載ってから三年後の一九五九年、燃料が石炭から石油・天然ガスへ急速に切り替わった第三次エネルギー革命のなかで、閉山があいつぎ厳しい生活へ追い込まれた炭鉱の町・筑豊を取材した『筑豊の子どもたち』


 四〇年にわたり撮影され第五集まで刊行された、畢生の作品である『古寺巡礼』。


 といった主な写真集からはもちろん、日本における報道写真の草分け的存在である日本工房に入社して一〇日目に撮られた七五三の写真から始まり、写真家・土門拳の作品が時系列順に収録されています。


 リアリズムを徹底し真実を見抜き捕らえる「鬼の眼」は子どもたちに向けられるとき、底にある優しさが前面に出てきます。写真家・土門拳の魅力に触れられる写真集です。


 


●土門拳『風貌・私の美学 土門拳エッセイ選 酒井忠康編』(講談社、二〇〇八年)


 戦後の日本写真界を牽引し、後進の育成も含め大きな足跡を残した写真家・土門拳は、当時から名文家としても知られ、多くのエッセイを書きました。


 そのエッセイの選集が講談社文芸文庫から出版されています。


 写真の奥から貫き出る土門拳の鋭い眼光と同じ光に貫かれたエッセイを読むことができます。

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