二の七 試行錯誤の成果 〜雌伏〜
台所シンクから第一汚水枡まで伸びる排水管(床下排水管と呼称)の洗浄について、一度試してみたいことがあった。
裏庭に出る。
汚れても良い服装、通常長さのゴム手袋、長靴のみ、汚水枡を開けるにはラフな格好だ。
散水用ホースからノズルを外す。
ノズルをワンタッチで取り外しできる部材も外し、水色のホースのみの状態にする。
コードリールを伸ばして、汚水枡までホースを引っ張る。
第一汚水枡をマイナスドライバーで開ける。
このドライバーは前回汚水枡を点検する前に百均で購入した。台所周り専用ドライバーセットだ。
前回と同じ位置に黄土色の汚泥が付着しているように見えた。
写真を撮っておけば良かった。が、今回も撮るつもりはなかった。見返したいものではない。
汚水枡に水が流れていく位置にホースの先を置いて、水道の蛇口を捻りに行く。
じょろじょろじょろじょろ。
急ぎ戻り、ホースを持つ。
先端を潰して水の勢いを強め、付着した汚泥を流す。
よし、良い感じだ。
続けて、汚水枡の横穴、つまり、床下排水管の出口にホースを握った手を突っ込む。
ホースの先端は固く、勢いが強まるほどは潰せないので、親指で放出口の三分の二ほどを隠すように押さえる。
プシーっ。
いく筋かの細い線となって水が噴出する。
手とお玉の届かない奥の方を勢いを付けた水で洗う作戦だ。
茶色い水と小さな灰色の固まりがホースを握る手の下から流れ出てくる。
親指をずらして、水が飛ぶ方向を変える。
じょろじよろ、ころん、ころん。
固まりがいくつか、第一汚水枡の底に転がり落ちていった。
それほど大きくはないが、下流に流れていけるほど小さくもない。
プシーっ。
徐々に茶色は透明な水に変わっていく。
届く範囲は洗い終わったようだ。
手を抜き、ホースを持って蛇口を止めに行く。
汚水枡の底に溜まった固まりを、長トングで拾い、ゴミ袋に入れた。
やはり、内側を直接洗うしかないか。
水の勢いで汚れを物理的に剥がす。届いた範囲だけだったが、効果が実感できた。
より徹底的に奥の汚泥を落とすには、水道業者に依頼して『高圧洗浄機』を使用するしかない。
『町内の排水管を高圧洗浄機で格安で掃除します』などとポストにチラシが入っていることもある。
高圧洗浄機か。
片付け終わり、屋内に戻る。
高圧洗浄機があれば、事足りるのか。
いや、高圧洗浄機。
石鹸で丁寧に手を洗いながら思い出した。
高圧洗浄機、我が家にある、な。
両手の指の数ほどしか使われていない黄色い高圧洗浄機ケルヒョー(仮)が、二階倉庫の中でこの時を待っていた。
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