泥仕合
【スクリーンチーターズ】お嬢様と仲良くなりたい突発コラボ《指宿アキラ》
同接:89人
配信開始。
コメント:お?
現在時刻は夜の10時頃。
こんな時間に配信するのは滅多にない……というか一度もないと思う。
コメント:こんな時間に珍しいな
コメント:俺じゃなきゃ見逃してたね
いつもと違う時間で突発的に配信を始めたら見る人は少ないだろうと、そう思って配信を始めた訳だが意外にも人がいた。
コメント:タイトル的にあの子とのコラボ?
コメント:えー、見んのやめるわ
コメント:大丈夫か?
配信を始めてものの数分で3桁まで視聴者が増えた。
あんまり増えすぎても狙いから逸れてしまうので、ちゃっちゃと始めることにしよう。
「あ、あー、マイクテスト、マイクテスト。みんな聞こえてるー?」
コメント:あ
コメント:はじまた!!
コメント:画面ブラックで誰も喋らないから事故かと思ったわww
「大丈夫そうだね。突然だけど今からコラボ配信しますねー。事前に告知できなくてごめんね。あと配信時間もいろんな都合でちょっと短いんだけど、そこも許して!!」
コメントの返事を待たずに、時間が惜しいとばかりにコラボ相手を紹介する。
「タイトルから推測できてる人もいるかもしれないけど、一応自己紹介をお願いします」
「……伊崎、ミサキですわぁー」
コメント:テンションひっくぅ
コメント:どした?www何かあった?www
コメント:あったんだよなぁ
「……」
お決まりの挨拶もなく、明らかにローテンションなミサキさんが名前だけの自己紹介をした。
コメントも当然それに気付いてリアクションをするが、中には煽る様なコメントも目に入ってくる。
きっと例のネット記事を読んで冷やかしにきたんだろう。そういう悪意を感じる。
それに加えて、俺に対する批判混じりのコメントもチラホラと。
それは、現在進行形で炎上している人とコラボすることへの批判だ。
コメント:アキラは何考えてんだよ
コメント:再生数稼ぎか?
コメント:それならもっと人いる時間にやるくない?
まぁしょうがない。
他人からすれば俺は火中の栗をわざわざ拾いにいっているように見えているのだろう。
ある程度の批判は承知の上だ。
当然だが、俺もミサキさんも反応はしない。
ゲームをはじめたらそっちに集中して気にならなくなるだろうしね。
「はい、ということで今日は伊崎ミサキさんとゲームすることになりました。ミサキさんとは前回の多人数コラボで初めてお話させてもらったんですけど、その時はGMってことであんまり絡めてなかったのでね、今回は珍しく俺からコラボを誘ってみた形になります」
「……そうですわね。ワタクシも今日はたまたま配信の予定がキャンセルになって悩んでいたところ、ちょうどアキラさんから連絡を受けましたの。せっかくなのでコラボのお誘いを受けることにしましたわ。……まさか、1時間後に配信することになるとは思いませんでしたが……」
コメント:マジで突発的な話だったのねw
コメント:たまたま配信キャンセルねぇ
コメント:なにやんの?
火は小さいうちに消しておかないと、取り返しがつかなくなる。俺みたいにね。
だから、こういうのは早めに対処した方がいいと思って、すぐにコラボの時間を設けることにしたわけだ。
「今回やるゲームはこちら『スクリーンチーターズ』です!!」
「……」
コメント:チーター?
コメント:単語が不穏だわ
コメント:ちょww
コメント:よりによってこのゲームかい!!
「ミサキさん、スクリーンチートって何のことかわかりますか?」
「……、……他人の画面を不正なツールなどを利用して盗み見ることでゲームの展開を自分有利に進める行為……ですわ」
「その通り。このゲームはプレイヤーが透明人間のシューティングゲームになります。相手の姿が自分視点からは見えないので、相手の画面を見て相手の位置を推測して攻撃、撃破する、そんなゲームですね」
コメント:大草原不可避w
コメント:ゴース◯ィングと同じやんけw
コメント:ほんとに仲良くなりたいんですかぁ?
コメント:正確にはGと違うんだが、、、
スクリーンチート。
それはミサキさんが言った通り、不正なツールなどを使って相手の画面を盗み見る行為のことを指す。
だから一般に公開されている配信者の画面を盗み見るゴースティング行為とは別物なのだが、そこは別に言及しなくていいだろう。
『スクリーンチーターズ』とは、その名の通りスクリーンチートを題材としたシューティングゲームだ。
ゴールデ◯アイ007の対戦とかをイメージするのが分かりやすいだろうか。(いつのゲームだこれ)
画面分割の中に自分視点と相手視点の画面が共在していて、色分けされたステージから相手の位置を予測し持っている武器で攻撃する。
本来やっちゃいけない行為を前面に押し出して、敵を倒せばポイント獲得というシンプルなゲーム性。
割りと良いゲームチョイスだと思っているのは俺だけだろうか。
前回のコラボからの『透明人間』という繋がり。
FPS◯推理力△の俺
そしてなにより──
「アキラさん」
「はい、なんでしょうか」
「……本当にやりますの?」
「うん? 何か問題でもあるの?」
「……知りませんわよ?」
「何を心配してるのかわからないけど、ただ普通にゲームで遊ぶだけだよ?」
「……」
大切なのは、このゲームをミサキさんが楽しんでくれること。
そして、その姿を視聴者に、アンチに見せつけることだ。
ゴースティング疑惑なんか気にしていないぞと、炎上で弱気になんてなっていないぞと、
そして、それを既成事実化させたまま短い時間で配信を終えること。
それが一番効くはずだ。
そのために協力できるよう力を注ごう。
いま、画面の向こう側で「うー」とか「ぁー」という彼女の小さいうめき声が聞こえる。
『本当にこれでいいのか』
『より炎上が拡大して取り返しのつかないことにならないか』
悩んでいるのだろう。だから、配信の始まりもテンションが低かった。
でも大丈夫だろう、と俺は思っている。
だって、これで仮に批判されたとしてもその的になるのは、このゲームをやるよう
ミサキさんは被害者で、アキラは悪者。
なったところで、そういう構図にしかならない。
だから、大丈夫だよ。
「あーもぉー!! やってやりますわ!! もう、どうにでもなれ!!」
「よっしゃ、それじゃあ第一戦、始めていこうか!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます