閑話 とある個人VTuberたち

【GUBG】カツ丼がぶがぶ!!《バビ・ルーサ》

同接:4300人


「我こそがっ!! 地獄の門番『バビ・ルーサ』だ!!」


 頭の両側にツノを生やした短髪黒髪の青年が、自信に満ちた声で喋る。


 画面に映るのはとある無人島の上を真っ直ぐ突き進む飛行船。その飛行船から次々と人が降下していきパラシュートを開いて散っていく。


「おうお前らっ! 今日はガブGやってくぞー!!」


コメント:バビ様!

コメント:おはルサー

コメント:おはー

コメント:カツ丼食うぞっ!


【Gamer Unknown's Battle Grounds】


 ガブGとも呼ばれるこのゲームは100人のプレイヤー同士で争い最後の一人になるまで戦い続けるバトルロワイヤルゲームだ。


 激戦区と呼ばれる街に降りて物資を整えるも良し、島のハズレに降りて人が少なくなるのを待つも良し、補給物資を狙い一発逆転を狙うのも良し。


 どんな手を使ってでも生き残り、最後の一人になれば勝利のシンプルなゲームだ。


「初動はやっぱり激戦区でしょ。隠れてこそこそしてちゃぁ配信映えしないしな!! おら!」


 掛け声と同時に飛行船から飛び降りるバビ。


 目指すは激戦区と呼ばれる家が密集した街。物資は家に湧くため、家が多いところには良い物資がある確率が高い。


 だからこそ、敵と遭遇するリスクが高いのだが、マッチングによっては──


「おいおいまじかよ、人がいない? ということはここの物資全部、我のモノってこと?」


コメント:いいね

コメント:いま3ヘルあったぞ!

コメント:芋れば?


「……芋るか」


コメント:www

コメント:さっき配信映えがどうのって言ってたやつとは思えない

コメント:電磁パルスも中心地寄りだから戦略としては間違ってないな、うん


「うるさいぞお前たち!! 戦略的芋なんだよこれは!!」


〜〜〜


「え? お前たち味噌汁に七味入れないの? なんで?」


コメント:え?

コメント:いや逆に何で七味入れるんだよ

コメント:あの優しい味に刺激物入れないだろ


「でも、豚汁には七味入れるだろ? あ、パルスが結構外れたからバギーで移動するわ」


コメント:確かに?

コメント:言われてみれば

コメント:ここまで10分ずっとうつ伏せ

コメント:やっとか

コメント:キルまだー?

コメント:バビー?


 バギーを運転してしばらく。バビのいる位置が赤く色づく。


コメント:レッドゾーンだ

コメント:爆弾の雨が来るぞー

コメント:気をつけろよ


「あ、まずい──」 


 ヒュ~!!


 ドーンッ!!


「あ」


コメント:あ!

コメント:あ!?

コメント:あ〜あ


 爆風による砂ぼこりが風によって流れると、そこには力尽きたバビの姿があった。


「……ふーん、やるじゃん」


コメント:《翌日羽音》2000¥「私は味噌汁にも豚汁にも七味入れない派」

コメント:0キル

コメント:ただの雑談配信だったな

コメント:草

コメント:《Vすきアキラ》1000¥「雑談、面白かったです」


「『翌日羽音』『Vすきアキラ』スパチャありがとう!! よし、次のマッチいくぞ!!」


◇◇◇


【Amid Us】男嬢様とお嬢様によるアミアス配信《伊崎ミサキ》

同接:265人


「ワタクシがお嬢様系VTuberの『伊崎いざきミサキ』ですわ。【Amid Us】やっていきますわよ」


 金髪ドリルツインテールのお嬢様が、朗々とした口調で喋る。


 画面に映るのは宇宙服を着た船員たち。色とりどりの船員たちが宇宙船の一角に集っている。


【Amid Us】


 宇宙人狼とも言われるこのゲーム。


 狼側の勝利条件は村側の人間をキルするか追放して自分たちと同数にすること。村側の勝利条件は狼側陣営を全員追放するかタスクと呼ばれるミッションをすべてクリアすることだ。


コメント:ですわ

コメント:お嬢!!

コメント:アミアスだ


「それでは、いつものメンバーでやっていきますわよ」


〜〜〜


 議論を重ねること4度。


 残っているのはミサキを含めて4人。


 陣営の内訳が2(村):2(狼)の場合はゲームが終わっているはずなので、ゲームが終わっていないこの時点で、内訳は3(村):1(狼)が確定している盤面だ。


 ミサキは語り始める。


「さて、現状を整理しますと、議論で釣ったのはキル現場を見られた確定狼の『前借まえがり誠也せいや』1人だけ。狼陣営は2人の設定ですので、残り1人を特定出来れば村の勝利……ですわよね?」


「ええ、間違いありません」

「そうザマスね」

「そうでごわすな」


コメント:ごわす?

コメント:激渋ボイス

コメント:こんなんいつ聞いても笑うわw


「先ほどキルが発生した時の話に戻りますわ。ワタクシと『小谷野おやの七光ななひかり』さんは今回はキルに関われず、『マネーイズマネー』さんは狼の前借さんを追放した張本人。つまり、ラストウルフは『薩摩さつま妹子いもこ』さん。あなたですわね!!」

「なんですって!?」

「そうだつたんザマスね!」

「……」


 そう指を突きつけられた薩摩妹子は、神妙な面持ちで口を開く。


「……ミサキのお嬢」

「何ですの?」

「……100万円で見逃しちゃあごぜぇやせんか」


 それは、罪の自白と買収の提案だった。


コメント:はじまったww

コメント:確定演出

コメント:お金はすべてを解決する


「ふふ、ワタクシを説得したいのなら、1000万は必要ですのよ?」

「くっ、それは無理でごわす……」

「なら、仕方がないですわね。皆さん、妹子さんを追放して差し上げましょう」

「わかりました」

「ザマス〜」

「ぬわ〜〜〜」


 YouWin!!


「おーっほっほ。社交界での腹黒い大人たちとの会話に比べれば、このような腹の探り合いは児戯に等しいですわ〜」


コメント:GG

コメント:ないす〜

コメント:《Vすきアキラ》¥1000「いつも楽しく拝見しています。最後の考察も見事でした」


「あら。『Vすきアキラ』さん、1000万円のスパチャ感謝いたしますわ」


コメント:駄菓子屋かww

コメント:おばあちゃんやん……


◇◇◇


【マイナークラフト】村発見!!ウォールマドカ建設計画《一円。》

同接:98人


「いちえんじゃないよ、『いちまどか』だよっ!! というわけで【マイナークラフト】やっていくよー!!」


 赤髪ポニーテールの少女がハキハキと喋る。


 画面に映るのはブロックでできた世界。土も木も生き物も全てがブロックでできている。


【マイナークラフト】


 このゲームは自動生成されたマップで生き残るサバイバルゲームだ。


 一応、ボスが存在しそれを倒すことでエンディングを迎えることができる。


 が、このゲームの最大の魅力は無限に時間を潰せると言われるほど自由なクラフト要素にある。


「前回は、村をようやく発見したので、今回は村の周囲を壁で囲んで防御を強化しつつ、お家を作っていこーかなって思います」


コメント:。が本体定期

コメント:いつか誰かとコラボできるといいね


「それじゃあやってくよー」


〜〜〜


「完成!! いやー長かったねー、めちゃくちゃ疲れたよー」


 マドカの眼前には、雲を突き抜けてそびえ立つ土色の壁があった。


「これなら長大型のおっさんでも超えられないでしょ」


コメント:なぜおっさん?

コメント:一面しかないけど

コメント:横がガバガバ

コメント:はい、あと3回頑張りましょうね!!


「他の面は後で裏でつくっておきます。あ、そうだ。壁の向こうに簡単に行けるようにドア作っとこ」


 そう言うと、マドカは自分で作った土の壁に穴を空けようと壁を掘る。


 穴が空くまでの数秒、マドカは変な音を聞いた。


 シュー……。


「ん? 何の音? 爆弾が爆発する直前みたいな……」


コメント:あ

コメント:これって……


 疑問に思うマドカが完全に壁に穴を空けたその時、壁の向こうにいた緑色の生物と目が合った。


 クリーチャー。


 こいつは、マイナークラフトの中で最も嫌われているモンスターといっても過言ではないキャラクター。


 プレイヤーにいつの間にか接近し周囲を巻き込んで自爆する敵モンスターで、直撃すると簡単に体力が0になる上、建築物を破壊する凶悪性を兼ね備えている。


「やっば──」


 ドン!!


 避ける間もなく、爆散するマドカ。


「──もーー!! あいつホントきらいだよ!! ……ま、まぁね、こんなこともあろうかとベッドを壁の近くに置いてすぐリスポンできるようにしてるからダメージは最小限なんだけどね……って、あ、あれ? ここどこ?」


コメント:さっきベッドも吹き飛んでたよ


「……」


コメント:懐かしの初期スポーン地点じゃん

コメント:村まで結構遠いぞ


「……ぐすっ」


コメント:《Vすきアキラ》¥1000「悲しい事件でしたね。頑張ってください」


「う、うぅ。『Vすきアキラ』さん、スパチャありがとうございますぅ。がんばります……うん。くよくよしても仕方がないね。よーし、村まで最速ダッシュだー!!」


◇◇◇


【War of Tanks】Tier9開発中《井川#111》

同接:32人


「……ゲーム配信用アンドロイド『井川#111』。Tier9戦車の開発、やる」


 中性的な顔立ちをした青髪ショートカットの少年?がこれまた中性的な、抑揚のない声で淡々と喋る。


 画面に映るのは大小様々な大きさと形をした戦車たち。それぞれに付いている国旗も異なっており、それはさながら多国籍の連合軍による戦争のよう。


【War of Tanks】


 最大15対15の戦車で戦う多人数参加型の対戦ゲームだ。


 軽戦車、中戦車、重戦車、駆逐戦車、自走砲といった種類の戦車と、Tierと呼ばれる1〜10のレベルが存在する。


 対戦することで経験値とお金が手に入り、それによって戦車を開発しTierを上げることができる。


「……サバは北米。あっちはいま夜だからマッチングしやすい」


コメント:初見です


 井川が選ぶのは駆逐戦車。


 この車両は砲包が固定されているのものが多く、近接というよりかは遠距離向き。FPSで言えばスナイパーに相当する。


 ゲーム開始時にNPCがお決まりの言葉を口にする。


『貴様らの武運ぶうんを祈っている!!』


「……ぶーん」


〜〜〜


「……相手はラスト1車両。こっちはヘルスがミリ残りの軽戦車とボクの2車両だけ」


 ゲーム終盤。


 敵味方激しい攻防の結果、残りの車両は少なくなっていた。


 UUUuuuuuuuuuーーー!!!


 突如、サイレンがマップ中に響き渡り『残り00:59』との表記が画面の上に出現する。


「……む、キャプられた。駆逐戦車ボクの足じゃ間に合わない」


コメント:キャプって何?

コメント:味方の陣地を占拠されたってこと。一定時間内にダメージを与えてキャプを切らないと負ける


「……相手のヘルスもあとちょっとだったはず。今のうちに弾種をHEに切り替えて爆風ダメでキャプをリセットする。運が良ければワンチャン撃破できるかも」


 そのとき、未発見状態だった敵の戦車がマップに表示された。


「……いた。味方が見つけてくれたみたい。でも……」


 ドガンッ!!


 索敵という役目を果たした味方の車両が破壊され、井川が最後の一人となる。


「……よくやった。あとは任せて」


コメント:時間ないよ


「……わかってる。はずしたら次の弾を装填する時間もないし、この一発が当たらなきゃ負け……あ」


 一定時間が経過したことで、再び敵車両が見えなくなる。


「……もう見えないけど、まだここにいるはず」


 虚空に照準をあわせ、レティクルの収縮を待つ。その間もキャプのカウントは進んでく。


 00:08。


 00:07。


 00:06。


 00:05。


 00:04。


 00:03。


 00:02。


「……いま!!」


 弾丸が虚空へ向かって発射された。


 00:01。


 ドゴンッ!!


 戦闘終了。


「……GG」


 ブラックアウトした画面が明るくなると、そこには『勝利!!』の文字が映っていた。


コメント:うまいね

コメント:《Vすきアキラ》¥1000「最後の攻防ヒリつきました。GGです」


「……『Vすきアキラ』、スパチャありがと」

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