風になびく君の髪

ゆる男

入学とあの子の髪

あいつの髪


はあ……なーんか上手いこといかないなー

俺は自分の部屋で鏡を見ながら悪戦苦闘している

ストレートアイロンで前髪を整える

んーーシャープにならん

もっと勉強が必要だな


とりあえず諦めよう

俺は今日初めて着る制服に着替え髪に軽くワックスを付ける

納得はいかないが鏡でまた自分の髪を再確認する

うん、これでいいや

にしてもこの制服はやっぱ慣れないなー

中学の頃は学ランだったためブレザーというものには慣れていない


ネクタイの締め方もわからないな

あとで母さんにやってもらうか………


俺は

部屋のカーテンを開けて外を見る


「んーーー風が気持ちいいなー」


春の風を浴びる俺は隣の家の窓をふと見る

あいつとまた同じ学校か……

そんなことを思っていると

隣の窓の内側のカーテンが開く


「……な!!」


俺は見てはいけないものを見てしまった

カーテンが開いた後に見えるのは女の子の姿


なんであいつ……

女の子は窓を開けて俺と目を合わせる

ば、ばか!目合わせたらやばい!!


「ふーまーー!!!今日から高校生だね!!

一緒に楽しもうねーー!!」


隣の窓からは下着姿の女の子が俺の名前を呼ぶ


「お前!!服を着ろ!!」


「あ、そうだった」


女の子はまた窓とカーテンを閉めて姿を消す


「………はあ」


調子狂うんだよな


俺の名前は光井風馬【ミツイフウマ】


今日から高校生活が始まるというのに朝から幼なじみの下着姿を見てしまった

俺の幼なじみの特徴といえば

そりゃーもうちょー!!!!!恥ずかしいー!!!

ばかなんだよなあいつ!!

道がわからないから公園で家を作ってるおじさんに道を聞こうとしたり

木に登ってロミオとジュリエットの真似したり

自転車通学なのにニット帽の上にヘルメット被ったり

色々変なんだよな!


そんなこんなであいつとの思い出にあまりいい思い出はない

すると


ピーンポーン


やつが来た……


母さんがドアを開けると


「やっほー!ふーママ!」


「あーら!ひまちゃんおはよー!」


来たか……

幼なじみの名前は戸塚ひまわり【トツカヒマワリ】

何故こいつが俺の家に来るかというと

まあ理由はただ一つだろうな


「ひまちゃんも朝ごはん食べるでしょ?」


「えー!いいのー!?」


母さんが俺らがいるリビングにひまわりを呼ぶ


「ふーまー!おはよー!」


「朝から声でけーなー」


朝からひまわりのハイテンション挨拶は何回聞いてもうるさい


「ひまちゃんおはよー!」


隣で飯を食っていた俺の妹の雪乃がひまわりに挨拶をした


「おはよー!雪乃も受験生だねー」


「うん、でも大丈夫、風馬も合格してるから」


「なんで俺基準なんだよ!」


雪乃は1個下の妹で今年受験生になる

生意気だが歳も近いので割と理解し合える仲にはなった


「ひまちゃん制服可愛いね!」


雪乃がひまわりにケータイのカメラを向けると

ひまわりも調子に乗ってポーズを決める


「風馬、ひまちゃんといつ結婚するの?

こんな可愛い子なかなかいないよ?」


母さんがおちょくるように俺に言う


「俺はこいつと結婚する気も付き合う気もねーよ」


と断言する

まあ確かに顔は可愛いとは思うけどな

こいつと一緒にいるとろくな事がないの母さんは知らないんだ!

だから付き合うなんてマジでない


しばらくひまわりも一緒にご飯を食べる

完食し終わると


「よーし!じゃあ洗面台また借りるね!」


ひまわりは俺ん家の洗面台に行き

歯磨きをする

うちの家にはひまわりの歯ブラシが置いてある

こんなにも俺の家族がひまわりに対してウェルカムなためこうなっている

当たり前みたいになってきたな

ひまわりと並んで俺も歯を磨く


【シャカシャカシャカシャカ】


【ブクブクブク!ぺっ】


歯磨きが終わったひまわりはタオルで口を拭いてこう言う


「なんか新婚夫婦みたいだね!」


「………」


たまにこういうこと言うから調子狂うんだよな…


「なんだよそれ」


俺は一応反応する

目を逸らしてはいたが鏡に映るひまわりの顔を一瞬見る


……ん?


「ひまわり、じっとしてろ」


「ん??」


肩下10cm程のミディアムロングのひまわりの髪の毛は少し広がっていた

俺はおもむろに洗い流さないトリートメントを持ち出し

ひまわりの髪の毛に付けた


「パサパサのまんま入学式行くのは勿体ないだろ?」


ひまわりの髪を整えながら言うと


「わー!!ありがとー!!」


パーッと明るい笑顔を見せるひまわり

……なんだよ、嬉しそうだな


「じゃあ!行ってきまーす!」


ひまわりが元気に言う


「いってらっしゃーい、あれ?風馬の声が聞こえないなーもしかして母さんの子供ってひまちゃんだった?」


母さんがまた意地悪そうに言う


「はいはい、行ってきます」


「いってらっしゃーい」


駅に向かう途中

ひまわりは鼻歌を歌いながらルンルンと歩いている

どうしてこうも人生楽しそうなんだこいつは

ひまわりが歩く度に長い髪がなびく

量は多くて芯がしっかりしている髪

真っ直ぐで絶対に曲がらない髪質は本人そっくりだ

しかし俺はこいつに対してかなり迷惑していることがある

電車に乗ると


「うわーやっぱ混んでるね」


満員電車の中に2人で入る


「うがー!!!」


【ドコドコドコ!!】


満員電車の人混みに押しつぶされる


「うえーーんふーまーー助けて〜」


その際にひまわりが俺の背中にくっつく形になる

あ、当たってんだよな……胸が…

こんな近距離に居られるとさすがの俺もドキドキしてくる


「このままふーまに捕まってれば安心だね」


ひまわりは俺の服をぎゅっと握る

そういうこと言うからお前とは!!

しかし満員電車の中では抵抗も出来ない

はあ……こいつがこうやって俺にくっついてくる度に俺はなんて言われると思う?


『あー!またイチャイチャしてるー!』


俺は中学の頃の思い出が鮮明に蘇る

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