今日はついてない一日だと思ってた

ついてない⁈

　あー、なんか目覚めわるー…。

　ドブに足がハマる夢から目覚めて私は、靴

　下を履いた。

　いつも左から履く。

　でも、今日はなんだか右から履いてしまっ

　た、、。

　ドブにハマる夢なんてみたから動揺して逆

　から履いちゃった⁉︎

　はぁ。

　なんか今日…朝からついてないな。

　まだボーっとする中トーストを一枚焼いて

　その間にバターとジャム、ホットミルクの

　用意。

　うわッ

　少しパンが焦げた…

　あっつ‼︎

　いつもよりミルクを温め過ぎた。

　んもー、なんなのよー‼︎

　どんよりした曇り空をみながら焦げたパン

　を食べた。

　少し苦い。

　食器を下げて、

　どれ、仕事に行くか。

　外に出ると一月の朝は冷たい冷蔵庫みたい

　に空気が冷えていた。

　あーさむッ

　足早に仕事に向かった。

　途中靴擦れをおこした。

　新しい靴を履いてきたせいだろう。

　ま、時間ないし急がなきゃ。

　仕事でささやかなミスをしてしまった。

　今日は、なんだかついてない事ばっかりだ

　った。

　外はすっかり真っ暗だ。

　会社を出ると雨…

　傘を持って出るのを忘れた。

　いつも会社の向かいのコンビニが目に入る。

　でも、一度も行ったことがない。

　でも今日は何故かあの明るいコンビニで傘

　を買いたい気持ちだった。

「いらっしゃいませ」

　お店に入ると明るい。

　そしてどの商品も私を歓迎しているかのよ

　うにきちんと整列して並べてある。

　今日は、いい事がひとつもなかったから自

　分にいいものを与えてあげよう。

　シュークリームと紅茶を手に持ち傘コーナ

　ーに向かった。

　傘…

　傘がない。

「あの、傘ありますか？」

　店員さんに聞くと

「あー、この雨ですからね。傘もう全部売れ

　てしまいました。すみません。」

　と返事が返ってきた。

　はぁ。

　やっぱり今日最後までついてなかったな。

　なんて最悪な一日なんだろう。

　仕方なくシュークリームと紅茶を買い店を

　後にした。

　どうせ帰るだけだもん濡れてもいっか。

　帰ったら、すぐお風呂入ろっと。

　覚悟を決めて一歩踏み出した。

　えっ、

　私濡れてない。

　何⁈

　振り返ると私より背の高い男性が傘をさし

　てくれていた。

「あの…」

「傘、ないんですよね。送ります。どうせも

　う帰るだけなので。」

　にっこり優しく笑う男性。

「でも、悪いし大丈夫です。」

「いいんだ。今日は、なんだか朝からついて

　いなくて。誰かに話し聞いてもらいたい気

　分なんです。話し聞いてもらえます？」

　あ、私と同じ…

「はい。ならお言葉に甘えてお願いします」

　暗い夜道を並んで歩く。

　しかも知らない男性と二人きり。

　変なの。

　クスッ

　思わず笑ってしまった。

「えっ、どうしたんですか？」

「いや、なんだかこの状況なんなんだろうっ

　て思ったら笑ってしまいました。ごめんな

　さい。」

「そうですね。たしかに普通じゃありえない

　状況ですね。」

　二人で雨の中笑った。

「僕、今日初めて笑ったかも」

「あっ、私も」

　クスクス

「僕、今朝トーストを焦がしてしまったんで

　す。コーヒーも朝イチこぼして。」

「えっ、私も今朝トースト焦がしました。」

　あははは

　同じだ。

「それに今朝水溜りにハマる夢を見てびっく

　りして目が覚めたんです。」

「私、夢で今朝ドブに足がハマりました。」

　ハハハハ

　なんだか楽しいな。

「朝から同じようなプチパニックですね」

「確かにプチパニック」

「でも、僕さっき人生で一番良い事起きまし

　た。」

「え、そうなんですか？」

　笑い過ぎて涙を拭きながら聞いた。

「はい。あなたに出会えた」

「えっ…」

　思わず固まってしまった。

　朝から良い事全然なかったって思ってた。

　でも、全部いい事の始まりだったのかもし

　れない。

　ついてないと思えば急にハッピーが訪れて

　来たりする。

　嫌なことなんてずっと続かない。

　パンが焦げたのも傘が売ってなかったのも

　全てこの人に出会うためのラッキーな事だ

　ったのかもしれない。

　それに帰ったら、シュークリームと紅茶が

　ある。

　あったかいお風呂だって。

　みたいテレビもあるし、お布団だってふか

　ふかじゃん。

　これからは、とにかくポジティブに生きて

　みようかな。

　あー、明日はどんな事があるかなぁ。

　肩を並べ二人でこれから歩んでいけたらい

　いな。

　なんていい日だろう。

　ささやかな当たり前のことが全てハッピー

　なんじゃないかって思った。