第12話 労働力確保

 海賊の本隊が逃げ出したのを見届けると、俺とエクリは鹵獲ろかくした海賊船に乗り込んだ。


 逃げ出すことはできなかったため、船内には財宝やら機械類がそのままの状態で置かれている。


12隻もの船団で海賊行為をしていただけのことはあって、それなりに蓄えていたらしい。


「エクリは船や財宝を回収しておけ」


「アンタはどうするの?」


「俺はこいつらに用がある」


 膝をついて両手を上げる海賊たちを一望し、シシーと通信する。


「こいつらのナノマシンをハッキングしろ」


「なに!?」


 俺の言葉に驚いたのか、海賊たちがざわめきだした。


 しかし、もう遅い。援軍も期待できず、戦っても勝ち目のない以上、どうすることもできない。


 ハッキングが完了するまでその場で待っていると、再びシシーの声がした。


『……対象の無力化に成功しました』


「でかした」




 シーシュポスには牢屋はないため、捕虜の収容に向いていない。


 そのため、海賊たちを海賊船に備え付けられていた牢屋に投獄することにした。


 目の前の男がギロリとこちらを睨んでくる。


「こんなところに閉じ込めて、ただで済むと思うなよ!」


 敵意を持っているのはこの男だけではないのか、他の海賊たちもこちらを睨んでくる。


「よく聞け。お前らの体内にあるナノマシンは、すべてハッキングした。もうスキルは使えないし、お前らには俺の命令を聞く以外の選択肢がなくなった」


「フザけたこと抜かしやが……っ!?」


 カイルに掴みかかろうとした海賊が、その場に倒れこむ。


 男が自分で自分の首を絞めつけるのを見て、海賊たちが顔を真っ青にした。


 ナノマシンが乗っ取られた以上、身体を自由に使うことはできない。


 すなわち、もはや俺に逆らうことは不可能となったのだ。


「わかっただろ。お前らに選択肢はない」


 目の前で身体の自由が奪われる様を見て諦めたのか、海賊が舌打ちした。


「……俺たちに、いったい何をさせようってんだ」





 後日、再びデブリ回収のクエストを受けると、ドローンでデブリを集めていく。


 乗っ取った海賊船にデブリを集め、それらを海賊たちが人力で解体していく。


 鉄板を剥がしていた海賊がため息をついた。


「ちくしょう……なんで俺たちがこんなことを……」


「喋ってる暇があったら手を動かせ。飯抜きにするぞ」


俺が怒鳴ると、一応は言うことを聞く意思があるのか、海賊がキビキビと働きだした。


「くそっ、調子に乗りやがって……。いつか帝国軍に通報してやるからな……!」


「プライドがないのか、お前らは。海賊が帝国軍に頼ってどうする」


 こうして手動の作業を海賊に任せた結果、今までにないペースでデブリの解体が進むのだった。

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