クロスレイジ‐荒廃戦記‐

オメガカイザー

プロローグ


ほんの数世紀前まで、人間はほぼ万能に近い文明を築いていた。


宇宙にまで進出した人類は、かつて地球上のどの生物をも成しえなかった宇宙進出を遂げていく。

その破竹の勢いはまさに万物の霊長類に相応しく、まさに地球の支配者といってもいいほどの隆盛を誇っていた。

月に巨大都市を建造した彼らは、そのまま宇宙全域に広がり科学技術は永遠の発展を約束したように見えたのだ。


だが、人類は争いを止めることは出来なかったのだ。増加する人口に比例するように無限に肥大していく欲望は資源の浪費を生み。

そして国家間の確執が争いを呼び、国家単位の格差を広げていく。富める国はさらに富み、貧する国は全てを大国に吸い尽くされていった。 

貧富の差はかつて二十世紀中盤に共産主義の病が世界中に核の恐怖をもたらしたように、憎悪と怨嗟の感情を拡大し蔓延させる。

世界規模の争いが数回起きた。地球国家同士の細かいいざこざや、大国同士の利権争いに月都市をも巻き込まれていく。

歴史に刻まれた闘争のエンドレス…テロリズム、革命、新政権樹立、そして紛争の終わらない舞踏曲はいつしか人々の精神さえも擦り減らしていく…


更に月に進出した人類は地球と隔絶された空間に生活の基盤を移したことにより地球人とは独自の思想を抱き、争い始めその戦乱の末に地球そのものに見切りをつけた一部の人間は外宇宙への新天地を目指し財力を背景にした協力者を得て数隻の宇宙船を建造しその一歩として火星開拓計画を実行。計画がある程度の成果を収めると更に外宇宙へと旅立っていった。

資源がなければ月では生きることさえ難しかった、不毛な大地は過酷な環境を彼らに押し付け、農業用プラントが定着化した後も慢性的なエネルギー不足、政治的な問題から地球からの依存を余儀無くされている。

数世紀の事件の隔たりは地上にへばりつくもの、宇宙で新たなる可能性を模索する者達の意識の二分化を招く事になる。

月と地球に分かたれたかつての仲間が故郷を見捨てても、人類は愚かな戦いを止めなかった。

しかし、戦いにより荒廃、激変した環境は因果応報とばかりに災いとなって彼等自身に降りかかることとなり月を捨てて人類は地球に帰還するのであった。

砂漠化地域の広大化、謎の伝染病【石化病】の蔓延、そして新たに表れた【変異種】という人類に牙を向く生物達…


だが…それでも人類は生きている。嘗ての生活を取り戻せないような程に荒廃し、人口が最盛期の十分の一以下に激減していても。

砂漠は拡大し、毒素が蔓延した母星でなおも生の営みを継続させて、彼らはたくましくも生を全うさせていこうとしている。

それが宇宙へ出る術を失い、滅び行く運命を背負った種の最後のあがきなのか、はたまた再生の兆しなのかは神のみぞ知るところだったが…

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