(5)中山怜雄
第29話 ひらがなっている?
あーあ。うとうとする。えんぴつをもとうとしても力が入らなくてむずかしい。
さっき習ったひらがなというやつはよく分かんない。ひらがなというのはどうにも音ひとつひとつにあてはめられてるらしい。
たとえば、足の「あ」っていう音にはこのよこにピッて線を引いてそこにたてに線を書いてくにゃってするやつが、「し」っていう音にはさって書いただけみたいなのがあてはまるらしい。今の「らしい」の真ん中の「し」がさっき言ったさって書いただけの線みたいな「し」。
なんでこんなのを覚えないといけないんだろう。べつにしゃべるだけで言いたいことも分かるし伝えられるのに。それに漢字が読めるんだからいいと思う。読めるんだからひらがななんていらなくない?
まあでも覚えないといけないってことはおそらく意味があるんだと思う。もし意味がなかったらひらがななんてなくなってると思うから。使う人がいなかったらそんざいじたいがきえていくのは当たり前。
だってスーパーのバニラゼリーも一週間くらいでなくなっちゃったし。おいしくなかったもんね。ああいうことだと思う。だからひらがなはブドウゼリーみたいな感じなのかな。
こんなこと考えてたらゼリー食べたくなってきた。でもおひるごはんのじかんはおわっちゃったしおやつのじかん今日、あるかな。その前にこれがおわればおひるねのじかんな気がする。いまちょうどねたいからちょうどいいや。なんか口からでてきそう。
ふあぁあ。
そうこれ。口が大きく開いて大きく息をはきだすみたいな。これなんなんだろう。よく分かんないけどなみだもでてきた。べつに悲しいわけでもないのに。でも昔はとりあえず泣いてた。ごはんが食べたいときもおしっこがしたいときもさむいときもあついときも。だから悲しいときにだけ泣くってのがちがうのかもしれない。でも、なんかよく分かんないや。
「じゃあ、ひらがなの、お勉強は、おしまいです。みんなでおひるねしましょうね。長い針が6のところに行ったらおひるねはおしまいです。じゃあみんなおやすみしましょうねー」
あ、おひるねのじかんになった。やった、このワークとじていいみたい。うしろのロッカーにしまいに行こうと思ったけどみんなしまわずにゆかでねてる。じゃあぼくもそうしよっかな。おひるねがおわるじかんはみんないっしょみたいだし、かたづけるじかんがもったいないや。
「あ、れおくん、これしまってねえ」
あれ、やっぱりしまわないといけないのか。え、みんなはしまってなくない? そう思ったけどロッカーのところまで来るとみんなワークをしまってた。まあ、いいや。はやくねたいし。
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