第3話 行き止まりなのかも

 よしキャンパスにも時間通り着いた。二限始まりの日はこれからもこの電車でよさそうだ。駅からの道も覚えれた。正門のところにいる守衛さんにあいさつされたからおはようございますと返す。車が通れるような広い道はさすが大学といった感じでまだ驚く。それに人の多さ。当たり前だけどみんな大学生で大人って感じ。自分もその一人なんだけどあんまり実感がない。スマホでもう一回教室を確かめる。ミクロ経済はB棟の302教室か。B棟ってことは右奥だったはず。歩いているとちょうどいいところに案内板があった。現在地がここだから、うん。右奥で合ってる。道なりに行って食堂のとこを右に曲がればいいんだな。時計を確認するとあと十五分。ちょうど一限が終わったころだ。この腕時計は高校のときから使ってたやつだからちょっと安心感がある。大学生活、新しいことばっかりだけどこういう慣れは大事。



「じゃあ教室前で待ち合わせしよう~」

 廊下の柱にもたれかかって、既読のついたこのラインを見てる。昨日の夕方に送って今日の朝見たときには既読が付いていたけど、追ってメッセージは届いてない。うーん、どうなんだろ。仲がいい友達だとどういうタイプか分かるからこんなにモヤモヤしないんだけどな。例えば遠藤だったら大雑把だから既読が付かなくても気にしないし、逆に中野でここまでラインが無いと心配になる。やっぱこうやって高校の友達に比べると全然分かってないんだな。当たり前だけどなんだか寂しい気がする。

 腕時計をもう一回確認すると授業五分前で教室にはだんだん人が集まってきた。まだ同じ学科の人とそんなに馴染みがないから、本当にこの教室で合ってるのかということが顔だけじゃ判断できないけど、幸いにも黒板に「ミクロ経済Ⅰ」って書いてあるから大丈夫そうだ。先生が予め板書しておいたんだろうか。こうしてる間にもどんどん受講生は集まってきてトートバッグを抱えた先生も来てしまった。はい、じゃあちょっと早いけど始めるぞー。結局、りんたろうくんが来ないまま授業が始まった。教室の中を見渡してもそれらしき人はいない。



 授業が終わって次の必修の教室に向かっていると後ろから「経済学科の一年生だよね、よろしく」と声を掛けてきた人がいた。一瞬りんたろうくんかと思ったけどりんたろうくんは黒髪で背が小さめだったと思うから違う。目の前には茶髪でヘラヘラした感じの人。どうやら留年したらしい。相手は意外にも丁寧に原義久です、と名乗った。慌てて僕も大月彩人ですと言ってそのままラインを交換した。りんたろうくんには次の必修出るよね? とラインしておいたけど既読は付かなかった。

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