少女と勇者

ゆうき±

第1話 勇者?

さて、今日の仕事は……。

 俺、ティオレ・フェリオは冒険者ギルドの掲示板を見る。

 討伐依頼は……。


 魔物討伐依頼


 フィオレス王国周辺地域の近くにある森に魔族の軍団の目撃情報。

 これを速やかに討伐をしたい為、三日間調査任務兼討伐をお願いしたい。

 報酬…調査6万ルー、討伐30万ルー。


 意外と高いな……。

 普通、この手の報酬はこれの3分の1だ。

 ということは、国家が注目視している案件だ。

 今月ピンチだし、どうしよう……。

 正直、俺はあまり目立ちたいタイプではない。

 なんで俺が勇者なんだろう……。

 なんの取り柄もない冒険者の俺がある日、夢の中で女神という少女に出会った。


「アンタ、勇者になる気はない?」

「勇者?」

「えぇ、魔王に対抗する抑止力よ」


 この世界における魔王と勇者は世界の抑止力として魔王は魔族、人間は人族を統治…もしくは戦争が起こった際の抑止力になるのだ。

 だから普通名のある冒険者や、それに相応しい者が選ばれるのだが、どう考えても俺に合っていないことだった。


「世界を秩序を守れって? 生憎、俺はそういうのはしない事にしてるんだ…第一怪しすぎる、信用できん」

「………そう……」


 優しい瞳で女神と名乗った少女は俺を見る。

 可愛いと思ってしまった。

 整った顔立ちの少女に思わず心を奪われた。


「まぁ、いいわ……アンタがやる気になるか見届けてあげる」


 空から何か降りてくる……剣だ……なんの変哲もない古びた剣だった。


「これは貸しといてあげる、必要になれば抜けるから」


 そうして今まで抜ける事なく、今を過ごしている。

 まぁ、平和ということはいい事だけどな……。


「これを受けたい……」


 手に取った受注書を渡すと受付のネイは苦笑いをする。


「流石にこれはティオさんでも厳しいと思うんですけど……」

「そこを何とか……」

「いい加減パーティー組んでみては?」

「いいや、もうパーティーは懲り懲りだ……」


 呆れたようにいう彼女にそっけなく言い放つ。


「気持ちはわかりますが、あれは仕方の無かったことですし……」

「いいんだ、それにこれってレイドだよな?」


 レイドは複数のパーティーで構成された軍隊だ。

 いつもならパーティーに入ってないと受注できませんだが、レイドの場合単独でも受けられるのだ。


「えぇ、ですが魔物が一体とは限らないですし」

「なら、偵察部隊として先陣で行かせてくれ」

「正気ですか?」


 ネイが驚くのも無理はない、偵察部隊はレイドの中でも一番危険な任務だからだ。

 それに加えて、一人で行くということはよっぽどの死にたがりか、頭のネジが複数飛んでるくらいの奴しか志願しないのだ。

 

「俺は大丈夫だよ」

「でも……」

「いいから、受注頼むよ……」

「………わかりました、ではこちら三時間後に開始とします」

「はいよ〜」


 そう言って家に帰り、身支度を済ませたのだった。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る