第18話 来たる! ロリコン同盟!! 

「ただ誰が仕掛けた罠なのでしょうな」


 一風が首をかしげながら言った。


「そんなの裏サイトの運営に決まっているであろう」


「いやそうとも言えないであります。そもそもそれならなぜ発表前の記事をこちらにリークしたのでありますか。昔出した記事をだけならまだしも、中には同時刻に出た記事もあるではないですか」


「確かにな……」


 そこが今回の謎を深めている点である。裏サイトの運営が同業者つぶしをするなら、別に発表前の記事をこちらに流す必要がない。仮にこの二つのパターンが別人による犯行だったとしても、後者の同時刻に発表された記事は裏サイトの運営からの情報流出が起こっている。

厳密に管理された情報に辿り着く人間は限られているし、二回という数字を偶然と片付けてしまうのはあまりにも早計である。

 その人物が裏サイトに関わる者だとしたら、決してプラスになる内容ではないのだ。例え今回の件でバンキシャ部を潰すことが出来ても、読者にはしこりが残り、信頼度が落ちるだろう。

 完全匿名性であるからこそ、成り立っているサイト。その信用度を事態を下げてしまえば本末転倒である。

 つまりこの事件、両者を潰そうとしてる人物が漁夫の利を狙って行った可能性が高い。雷伝はそう考えた。


「部長、どちらに行かれるのですか」


「青橋の元だ」


 立ち上がり、大股で廊下に飛び出す。


「待ってください部長」


 岩寺がそう言って、立ちふさがろうとした。


「どけ邪魔だ! こんなことをするのはあの女に違いない!!」


 怒りに震える雷伝、聞く耳を持たない。


「落ち着いてください。部長が生徒会に乗り込めば思うつぼです!」


だがそんな忠告にも耳を貸さなかった。

青橋に対する復讐心が拭いきれているわけではない。やっとの思い出決してしたバンキシャ部の足元を掬おうとする人物はあの性悪な生徒会長しかいないだろう。


「クソッこうなったらやるしかないか……」


 だがそれを何としても止めたい岩寺は雷伝の前でに滑り込む。そして学ランのボタンに指を掛けた。


 そう言えば、この男が学ランを脱いだところを見たことがない。真夏でも頑として学ランを着ている。なぜ着ているのか。そう聞いた人物が何人もいるそうだが、その度にこう答えるらしい。

「力の解放を抑えるためだ……」と

 一体何が起こるというのだ。その下に何が隠れているというのだ。


「邪魔だと言っているのが分からないのか! 青橋に話を聞けば万時が解決するのだ!!」


 飛んできた雷伝の手を避けることなく、その頬で受け止める。いつもなら飛ばされるが、今回は石のように動かなかった。

 身長の小さい岩寺が巨大な山のように見える。

 学ランから手を放す岩寺。ボタンは外れ、その中が露となった。

微かに見る緋色、その緋色が体を締め上げている! そう学ランの下で岩寺は


 をしていたのだ!!


 学ランのボタンを開け放ち、亀甲縛りを見せつけることによって岩寺のドM指数は最高潮まで駆け上がる。これが岩寺の覚醒なのである。

 覚醒した岩寺に攻撃は通用しない。全てを飲み込み、体内でエネルギーに変換してしまうのだ。


「えぇ……」


 さらにこれを目にした者はあまりの気持ち悪さに戦意を失ってしまう。まさに無敵のド(M)根性である。


 雷伝は堂々と亀甲縛りを見せつける岩寺を見て、全てのことが馬鹿馬鹿しく思えてきた。


「落ち着きましたか部長」


「ああ、もう大丈夫だ」


 ボタンをきっちりを上まで止め、ホックを閉めると手を指し述べた。


「ありがとう岩寺、救われたよ」


 そう言った雷伝はその差し伸べられた手を無視して、自力で立ち上がった。


 教室に戻る一行。再び席に着き、話し合いを再開させる。


「やはりここは綿密な調査を行うべきでしょう。時間が無いからこそ、焦りは禁物です」


「何か手があるのでありますか」


 一風が問いかける。


「またブレッドⅡか」


「いえ今回は使いません」


 そう言いながらパソコンを操作する。


「裏サイトの管理人はパソコン部の部長だと推定されています」


 パソコン画面に映った写真。どう見ても高校生には見えない。


「小学生でありますな」


「いえ、立派な高校生ですよ。それに二年生です」


「これで我と同い年なのか……」


「つまりこれは高校生の僕らにとっては合法ロリ、その意味が分かりますか」


 手を組み、眼鏡を光らせる。ろくなことを考えて言ことはその仕草だけで分かった。


「この学校にロリコンのスペシャリストがいることはご存じで?」


「そんな犯罪集団がこの学校にいたでありますか」


 一風が慄く。


「ロリコンは犯罪でありません、文化です」


「そんな文化は滅んでしまったほうがいいな」


 すると部室の扉が何者かによって開かれた。誰かが入って来る。二人の目線はそちらに向いた。


「紹介しましょう。海常臨ロリコン同盟会長の望月渡もちずきわたるです」


 そこには帽子を深くかぶった男が立っていた。

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