第13話


「とにかく刈谷くんは喋らず隅っこにいて」


 私は刈谷くんと距離を置きたかった。

 せっかく先生と二人っきりだと思ったのに。そうだ、私は思い付いた。


「刈谷くん、用具入れに入ってて」


「はーい」


 素直に用具入れに入る刈谷くん。


「さて、これからどうするかな」

 腕を組んで考える先生。


「そういえばそろそろ上着返しますよ、少し暑くなって来たんで」


「じゃあその辺に置いといていいよ」


 私はバリケードの椅子に先生の上着をかけた。


「でも上着がないと先生どこ見ていいのか分からないから困ったな」


「先生?どこ見ても大丈夫ですよ」


「そうだな!朱理は可愛いもんな!」


 先生が抱き寄せてくれた。


「先生と二人っきりになれて嬉しいです」


「僕もだよ、夜景でも見ようか」


「はい」


 先生に肩を抱かれ、二人で夜景を見る事に。窓の外には無数のゾンビ、そしてそれを照らす車のライト。


「綺麗ですね」


「朱理の方が綺麗だよ」


「もう、先生ったらぁ」


 用具入れの隙間から視線を感じるがそんな事は気にしない。


「そう言えばゾンビ来ないみたいでよかったですね」


「そうだな、朱理と二人でさっさと逃げてよかったよ」


「先生の判断はいつも正しいですね」


 私たちはいつまでも幸せに暮らせると思っていた。あのチャイムが鳴るまでは。

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