第8話 初めての報酬
「今日の報酬なんですけど……私の身体、好きなところ触ってもいいですよ?」
――一瞬、何を言われているのか、全く理解ができなかった。
「葵ちゃん、冗談だよね……?」
「……いいえ。私の身体に魅力があるか、自信はありませんけど、報酬の替わりになったらいいなと思いまして」
葵ちゃんはどうやら冗談で言っている訳ではないらしい。
「さっきレンタル彼氏の時に充分手も握らせて貰ったし、報酬は貰ってるよ」
「それとはまた別なんです。それともやっぱり、私に魅力無いですか?」
葵ちゃんはうるうるとした目で見つめてくる。
これで逆に俺が触れなかったら、葵ちゃんを傷つけてしまいそうだ。
「魅力的過ぎて、触るのに躊躇していたというか……。わかった。触らさせて貰うね」
「はい……」
葵ちゃんはどこを触られるのかわからないため、顔を赤くして、身体を少し縮こまらせている。
俺はそんな葵ちゃんの赤くなった頬に片手を添えた。
葵ちゃんの頬は赤くなっているだけあって、暖かく、とても柔らかい。
すると、葵ちゃんはゆっくりと目を閉じる。
変な空気になってきた俺は、ドギマギとして、葵ちゃんの頬から手を離した。
葵ちゃんは目を開ける。
「私、ドキドキしてしまいました。キスされるのかと思って……」
「いや、そんな恐れ多いことしないよ」
「キスもいい勉強になりそうですから、私としてはされても良かったですけどね」
葵ちゃんは冗談か本気かわからないことを言って笑う。
「これからたまにレンタル彼氏をお願いするかもしれないですけど、大丈夫ですか?」
「うん、俺で小説の執筆のお役に立てるのなら」
報酬はまたちょっとエッチなことなのかな……。
こんな美少女を前にして、俺がずっと自分を抑えていられるか自信がない。
「それじゃ、明日7時半に悠くんの家の前で待ってますから。一緒に登校しましょう」
「うん、わかった」
葵ちゃんと一緒に登校したら、学校で一騒動ありそうだな、と思いながら帰宅した。
◇
朝のうちに結愛に合鍵を渡しておいたので、帰宅すると、カレーを作ってくれていた。
「悠、どっか出かけてたの?」
「ああ、友達の家に遊びに行ってたんだ」
「あんた、ぼっちって言ってたのに家に遊びに行く友達なんているの?」
「んん……まあね」
確かに俺は今まで休みの日も遊ぶ友達がおらず、ずっと家でアニメを見たり、ラノベを読んだりしていた。
女の子の家に行っていたとは、何となく言いづらい。
――ガチャッ!
「ただいまー! 結愛ちゃんに会いたくて、仕事急いで終わらせて帰ってきちゃった」
「さくらちゃんありがとー!」
美少女二人が抱き合っていて、何ともかしましい。
その後、夕飯を三人で食べているいる時にさくらが話していたのだが、アルバムのリリースイベントも終わり、春先から続いていた激務からようやく解放されたらしい。
さくらの体調面を心配していた俺は、少し安心した。
◇
翌朝。
いつもより少し早く目が覚めて、顔を洗い、リビングに行ってみると、そこには高校の制服に身を包んださくらがいた。
「さくら!? 制服着てどうしたんだ?」
「学校に行くからに決まってんじゃん! さすがにこのままじゃ留年しちゃうから、これから少し仕事減らして、学校にも行くことにしたの」
現在五月中旬だが、さくらは仕事の関係で、一回も学校に登校したことがない。
入学式もだ。
「そうか、ようやく登校なんだな……」
「何か一言言うことあるでしょ?」
そうだ、制服を来たさくらはめちゃめちゃ可愛い。
華奢な身体に合わせて買ったであろう、小さめ制服は、さくらのスタイルの良さを際立たせている。
葵ちゃん程ではないが、中学の頃から比べると、胸も成長しており、女性らしさも感じられる。
「可愛いよ、さすがさくらだ」
「!? おにぃ、ストレート過ぎ!」
怒った顔をしているが、決して悪い気はしていなさそうだ。
――ガチャッ
結愛がやってきたようだ。
「さくらちゃん、制服着てるってことは登校するの?」
「うん、今日からできる限り登校するつもりだよ」
「そっか、じゃあ一緒に登校しようね!」
さくらはまだ高校までの道もあやふやだろうし、結愛がついていてくれると助かる。
「悠も一緒に登校するでしょ? もう悠をひとりぼっちにはさせないんだから」
「いや、今日は一緒に登校する約束をしている人がいるんだ」
「え、そうなの!? 悠の高校での初めての友達、会ってみたい」
「……ああ、いいよ」
「さくらは何となく想像つくな……」
それから朝食を摂り、三人揃って家を出る。時刻はちょうど7時半だ。
「悠くん、おはようございます」
「悠くんって何!? 友達って柚月さんのこと!?」
「一昨日は名前呼びじゃなかったのに……」
結愛は男友達を想像していたのか、葵ちゃんが現れたことにかなり驚いていた。
さくらの内心は伺い知れない。
俺はこれから美少女三人と登校することに、居心地の悪さを感じながら、葵ちゃんに向けて言った。
「葵ちゃん、おはよう」
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