第6話 勝負
「おーい? 悠馬? 大丈夫?」
硬直した俺を心配して、真司が俺の顔をのぞき込んでくる。
「い、いや。大丈夫だ……」
ファントム。その中二病臭い響きと冷徹さ、人気声優が声の担当していたことから一部から熱狂的な人気があった中ボス。
確かに邪竜のディートハルトや、堕天使や悪魔を使役して馬鹿みたいに繰り出して来る上に、自分自身も堕ちた名も無き神を取り込んだグレゴリー等の、国を亡ぼせるような他にも数名存在する幹部の化け物どもには及ばない。
しかし中ボスといえど、ファントムにはSランクエンフォーサーを複数名同時に相手に出来るほどの力量があった。
まぁ世界に5人しかいないSSランクエンフォーサーの一人、嘉義鴎将の爺さんに撃退されてたが……
ちなみに、攻撃方法は投げナイフ、大剣、右手に仕込んだキャノン砲、HPが50%を切るとメイン武器が刀に切り替わる。
……刀って思いっきり真司じゃん。会ったのが高校生時代で当時は声が少し違ったのと、声も冷たい感じじゃなかったから気がつかなかったけど、よくよく聴いたら声も一緒じゃねえか!?
「ファントム……」
俺がポツリと呟くと、真司はびくりと震えた。
――……コイツ、まさか。
「お前……」
俺が真司に疑いの目を向けた瞬間、真司は顔を真っ赤にして掴み掛かってきた。
「ど、どうして君がその名前を! 花音かい!? 花音から聞いたのかい!? い、いや。落ち着くんだ僕! 花音が養子に出された頃、あのノートは存在しなかったハズ……悠馬! どこで君は僕の黒歴史ノートを見たんだ!?」
「……は?」
「見たんだろ!? 僕の黒歴史ノートを!」
「んん?」
――え、まさかそういう事なのか???
「……えっと、さっきファントムって言わなかった?」
「え? あ、ああ。確かに言ったぞ? ゲームのキャラクターの名前を」
俺がそう言うと、真司は頭を抱えながら床を転げまわった。
――うわぁ……知りたくなかった。中二病臭い中二病臭いと思ってたけど、まさか……。
「き、気にすんなよ。誰にだってそういう時期はあるさ。げ、現に今のお前は中二病じゃな……プッ!」
「うわぁぁぁ!」
「ちょ! お前! 真剣はまずッ!? 今掠った! 俺の頭頂部に掠った!」
10分後。
「えっと……まさか悠馬君とお兄ちゃんが友達だったなんて、驚きです」
「ははは……」
「ははは……じゃねえよ。ははは……じゃ」
俺は刀が掠った頭頂部を撫でながら、真司を睨みつけた。
「ごめんごめん、つい」
「お前はついで刀を振り回すのか」
「それにしても、花音とクラスメイトだったのにも驚いたけど。なんで悠馬がEクラス? 悠馬でEクラスならSクラスなんて、伝説のSSSランクエンフォーサーだらけになりそうだ」
「……色々あったんだよ、色々と」
その後、俺は真司にこれまでの経緯を軽く話した。
「なるほど、そんなことが……ところで、壊れた原因は?」
「さてね、それよりも良いのか? 剣術の授業やんなくて」
「……あっ」
「オイ」
「ささっ! 皆! 訓練室Eに移動!」
「あー、真司。これどういうこと?」
「い、いや。僕にもなにがなんだか」
俺達が訓練室Eに着くと、そこには何故か先客が居た。
「す、すみません! その、この時間は私達Eクラスが……キャッ!」
「うるせーなEクラス野郎! これから俺達C-1が使うんだよ! お前ら予備は僕らの足元で這いつくばって、さっさと失せろ!」
花音が訓練室Eに居座っている生徒に声を掛けたが、突き飛ばされた。
「……悠馬」
「あぁ、分かってる。真司」
それを見た瞬間、俺達は頷きあい駆けだした。
「ストップ」
真司は尚も花音に手を上げようとする生徒の手を掴み上げると、ギリギリと力を入れた。
ちなみに俺はそれを見て、花音に手を上げた奴に加勢しようとしたCクラスの奴らの牽制した。
「ハイ、こっから先は通行止めな」
「どきやがれこの雑魚!」
「そうよそうよ!」
――なんだコイツら……。
「痛い痛い痛い! なんだこのEクラス野郎、なにしやがる! 一体誰に……貴方はSランクエンフォーサーの尾野真司さん!?」
「何をしているって言いたいのはこっちのセリフなんだけどな……確か、君はCクラス首席の兵藤理玖だよね? 君、僕の妹に今何をした?」
「ひ……い、妹?」
「そうだよ?」
真司はそう言うと、そいつの手を離した。
「きょ、教師だからって横暴だぞ!」
「は? それ以前に君らが……ハァ、まあ良い。で? 君らは一体ココで何をしてるんだい?」
「いや……Eクラス野郎が尾野さんに剣術を教えてもらうって聞いて、ザコには要らないだろうから追い出して俺らが教えてもらおうと……」
「そうですよ、尾野君。そんなEクラスの出来損ない達よりも、ウチのC-1を教えてやってくれませんか?」
Cクラスの奴がそんなバカな事を言い出したので、真司が言い返そうとした時、恐らくこのクラスの担任であろう教師が出てきた。
「鹿見先生、教師が堂々と差別ですか?」
「いえいえ、差別なんてとんでもない。これは区別ですよ、区別。現にEクラスの生徒では何をしたってウチのクラスの生徒には勝てない。そうでしょう? ならばそんな無駄な事をするよりも、ウチのクラスに教えた方が時間の有効活用だと思いませんか?」
「Eクラスの生徒はCクラスの生徒に劣ると?」
「えぇ、勿論ですとも」
鹿見先生とやらがそう言い切った瞬間、真司はニヤリと笑った。
「分かりました。それではEクラスとCクラスで一人ずつ生徒を出して戦わせ、勝った方のクラスに僕が授業を行うというのはどうでしょうか? なんたって、CクラスはEクラスよりも強いんですもんね?」
「は? 真司、お前何を……」
「えぇ良いでしょう」
「それじゃあ悠馬、頼むよ」
「え? は? ちょっと待て真司」
「え!? お、お兄ちゃん! 無茶だよ! 悠馬君にCクラスの首席の人と戦えなんて!」
花音が慌ててそう言うが、真司は笑顔で安心するよう花音に言った。
「大丈夫だよ花音、悠馬なら負けないから」
――あ、やっべ。コイツ花音が突き飛ばされた事で大分頭に血が上ってやがる。
「兵藤理玖君、Eクラスに格の違いを見せてあげなさい」
「はい、鹿見先生。奴らに分をわきまえる事を教えてやります」
俺が困惑していると、真司は俺を訓練室の端へ連行した。
「お、オイ。話が急展開過ぎないか?」
「いやーごめんごめん。けどさ、この場を切り抜けるにはこれが一番なんだよ。一度ぎゃふんと言わせないとわからないだろうし、あの先生と生徒達。それに、今すぐ花音を突き飛ばした首席君をボコボコにしたいけど、教師だから出来ないんでね。けどこれなら悠馬が合法的にぶっ飛ばしてくれるだろ? 頼むよ悠馬、今度なんでも付き合うからさ」
「なんでもだな? なんでも」
「うん」
「はぁ……わかったよ。ったく、めんどくせーな」
「ゆ、悠馬君!?」
「大丈夫だよ花音、お前を突き飛ばした奴の事ボコってくるだけだから」
俺は訓練室に立てかけてあった木刀を手に取ると、兵藤理玖と向かい合った。
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いやーなんだろうね。解熱剤が効いてきたせいでもあるんだけど、更新しないと落ち着かないというか……病気かな?
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