第2話 入学式
「良し、ちゃんと学生証は持ったな? 悠馬」
「うん」
「制服はちゃんと着れたな? おっと、ネクタイが曲がってるぞ?」
「ありがと、姉さん」
「それじゃあ行こうか」
朝、俺達は入学式に出るために一緒に家を出た。
「当然と言えば当然だが。それにしても良かった……悠馬がちゃんとウチの学院に入れて。これで同じ学校に通えるな!」
「ハハハ……ソウダネ」
目をキラキラさせながら俺へ嬉しそうに話す姉さんに、俺は苦笑しながら言った。
――おい悠馬、言わなくていいのか? お前Eクラスだって……。
――分かってるんだよロト……いつかバレることぐらい。けど、けど……こんな目をキラキラさせてる姉さんに言えるわけないじゃないか。絶対ガッカリさせるだろ。
――我はそんな事ないと思うのだが。
「ところで悠馬。悠馬は一体どこのクラスになったんだ? やっぱりSクラス? 悠馬は私より強いし当然だな! ちなみに私はSクラスの首席で生徒会長だから、もし悠馬が首席なら学校行事の打ち合わせとかも一緒だ!」
――言えない。こんな期待している姉さんに、首席どころかSクラスでもなくEクラスですだなんて言えない。あ……Eクラスの首席なら一緒か。……どちらにしてもなぁ。
「ウン、ソウダネ」
そんな会話を暫く続けていると、遂に学校まで辿り着いた。
「それじゃあ私はあっちだから、頑張るんだぞ悠馬!」
「頑張るって何さ……うん、姉さんこそ入学式の挨拶頑張って」
そう言って姉さんと別れ角を曲がると、冬香とばったり会った。
「あ」
「ちょっと悠馬! 昨日はどうしたのよ! 私達に何も言わずに消えて!」
「いやー、ははは……チョットオナカガイタクナッテネ」
「だとしても連絡くらい寄こしなさいよ! 心配したじゃない!」
「ハハハ……ごめん」
俺がそう言うと、冬香は溜息をつきながら俺の手を引いた。
「まあ良いわ、今度パフェ奢ってくれたら許してくあげる。アンタもSクラスでしょ? Sクラスの待合室はこっちだから連れてってあげる」
「あー……冬香。そのことなんだけどさ。俺、SクラスじゃなくてEクラスなんだわ……」
「……ハァ!?」
その後冬香に事情を話すと、冬香は額に青筋を立てながら言った。
「アンタがホントにEクラスなわけないじゃない……コレは師匠に抗議ね」
「ん? なんで茜さんの名前が出てくるんだ?」
「あれ、師匠から聞いてなかった? 前の学園長が休職してるから、同じSランクエンフォーサーの師匠が学園長やることになったのよ」
――なにそれ、初耳なんだが。というか、原作から大分ズレたな……。
「全然知らなかった……」
「兎も角、入学式終わったら学園長の部屋にカチコミかけるわよ」
「お、おう」
そして別れ際、冬香は声をかけて来た。
「ねえ悠馬」
「ん? なんだ?」
「その……さ。もし悠馬がEクラスだったとしても、私は気にしない。だからさ、これからもずっと……そのー……友達でいてくれる?」
そう言って俺を不安そうに見つめる冬香に、俺は笑顔で言った。
「もちろんだ!」
「失礼しまーす」
「あぁ鈴木君、おはようございます」
俺がEクラスの待合室に入ると、俺の目の前にはスーツを着こなした、一升瓶を抱えていない珍しい天音先生がそこには居た。
――なんというか……眼福です。
「おはようございます。天音先生、えーっと……俺はどこに座れば?」
そう言いながら、俺は当たりを見渡した。
エロ本開いてる奴も居れば、水晶玉を覗いてる占い師っぽい奴も居るし、カードゲームをやってる奴もいた。
――カオスだな……。
「んー? 適当でいいよ?」
――そこはいつも通りなんだ……。
そして、俺は空いている窓側の席に座った。
すると、となりの席の奴が話しかけて来た。
「よう! お前もEクラスか? 俺は遠山和人、よろしくな!」
「おう、よろしく……」
――あれ? コイツ、原作で俺と一緒に真っ二つにされる奴じゃね?
「いやーにしてもすげえよな! この学院美人ばっかでさ!」
「お、おう」
ーーギャルゲー主人公の友人キャラみたいな奴だな……
「学園長の望月茜もサイコーに美人だし、今年は外国の王女様も入って来てるらしいじゃねえか!」
――茜に関してはガワは美人なんだけどさ……ソフィアは可愛い、異論は認めぬ。というかそこに関しては全人類共通だと思うけど。
「あー、うんそうだな」
「それに生徒会長! 胸もデカいし美人だし、それにキリっとしててカッコいいし。憧れるよなぁ……」
「全くもってその通り! 但しお前にはやらんぞ」
「え? あ、おう?」
俺たちがそんな会話をしていると、いよいよ入場のアナウンスが流れた。
「それじゃあ行くか」
「おう」
「やっぱきれいだよなぁ……生徒会長! くうー! 付き合いてー!」
「お前にはやらんぞ」
「お前はあの人のなんなんだ」
入学式。俺は姉さんのあいさつ中、そんなふざけたことを抜かす遠山に真顔で返すと、姉さんと入れ替わるようにして壇上に上がった茜を見据えた。
「あれが望月茜! やっぱり生で見ても滅茶苦茶美人だな!」
そんな遠山に、俺は苦笑しながら言った。
「あの人はやめとけ」
「なんだよ? 良いじゃねえか!」
「絶対苦労するぞ、あの人と結婚した人は」
「それでは私望月茜が、クラス毎の首席を発表させて頂きます」
――誰だお前は……。
咄嗟にそんなツッコミを入れてしまうほど、別人のような清廉で厳かな雰囲気を纏った絶世の美女がそこには居た。
――普段からああして居れば……。
「おい、始まるぞ」
俺達は茜の首席発表を黙って見つめた。
「Sクラス首席、ソフィア・シャーロット・オリビア・オブ・サンチェスさん! おめでとう! 首席はこちらへ!」
「はい、とても光栄です! ありがとうございます!」
ソフィアは席から立つと、登壇した。
「続いてAクラス首席、エミリーヌ・ミシェルさん! おめでとう!」
「当然ですわ!」
「Bクラス首席、加藤明弘君! おめでとう!」
「ありがとうございます!」
「Cクラス首席、兵藤理玖君! おめでとう!」
「クソ! どうして僕がCクラスなんだ!」
「Dクラス首席、工藤陽菜さん! おめでとう!」
「はは、ありがとうございます」
「Eクラス首席、鈴木悠馬! ……ん? 鈴木悠馬? え? は? Eクラス?」
「はははは、どうもー……」
――ハハッ、素が出てらぁ……というか姉さんもソフィアも驚いて丸い目でコッチ見てるや。穴があったら疾風迅雷使って今すぐ埋まりたい、そしてそのまま出てきたくない。
「……は!? なんだ? 一体どうなってるんだ??」
そして俺は他のクラスの首席と横に一列に並んで、未だに混乱している茜の正面に立った。
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ちなみに、ポロリする要素が一ミリもない質問があったのでお答えします。
悠馬自身のステータスは上がっているし、ちゃんと計測されれば確実にSクラスに配属&首席確定でした。
しかし悠馬は運悪く龍斗の後、つまりはプレイヤー次第で無限に強くなれるバグキャラの計測をした装置をそのまま使われてしまいました。
その為装置がおかしくなり一応反応はしたものの、ちゃんと計測はされず悠馬の計測結果はステータス最低レベル、つまりは一般人並み認定されたのです。
しかも運悪く悠馬は最後尾だったために、その不具合が見つかることなく計測は終了してしまいました。
要するに。ベ〇ータの戦闘力を測った後のス〇ウターが偶々爆発せず、形だけは一応使えてしまった為起きた悲劇です。
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