第12話 トラウマ
「何ですか! あなた達!」
ソフィアが男達に尋ねると、男達は名乗り上げた。
「我々はウロボロス! ダンジョンという神たちが生み出した遺産を独占せしエンフォーサー協会に抗う組織である! ソフィア王女、お前には捕まった同志を解放する為の交渉材料になってもらう!」
そう言って男達がソフィアを捕えようと動き、ソフィアも魔法で応戦しようと身構えた時、俺は包囲していた男の一人に掌打を放って吹き飛ばし、真司と共にソフィアを庇うように男たちの前に立った。
「あなた達一体! ……尾野さん!? と、えーっと」
「コイツの弟子で、友達の鈴木悠馬だ。よろしく」
「ソフィア王女殿下、お怪我は?」
「いえ、大丈夫です」
俺は男達に向き合うと言った。
「お前らは一人減って6人、こっちは三人。まあさっきの奴と全員同程度ってんなら相手にならねえがな。子供相手に大人数で無様に負けたくないんなら、今の内に尻尾撒いて逃げることをオススメするぜ」
「なんだとこのガキ!」
「ママに怖い人が居たら逆らっちゃいけませんって習わなかったのか?」
「オイ、コイツから畳んじまおうぜ!」
俺が挑発すると男達は色めき立ったが、先頭のフードを被った男が男達を制止した。
「ほう、威勢のいい子供ですね。元気があって大変結構です。キミ、お名前は?」
「お袋から知らない人に名前を聞かれても、言うなって教わってるんでな。だが生憎と子供に吹き飛ばされるような、情けない大人に逆らうなとは教わらなかったが」
「んだと!? 言わせておけば……」
「私は待てと言った! フフ。確かに私の部下が情けない姿を見せたので、勘違いしたかも知れませんがご心配には及びません。貴方達程度であれば撤退などしなくとも直ぐにケリを付けて差し上げますよ」
そう言うとフードの男が合図し、男達が一斉に飛び掛かってくる。
「行くぞ真司!やられるんじゃねえぞ!」
真司は、ミラージュデコイを展開しながら言い返してきた。
「悠馬も気を付けて!」
まず俺はナイフを持ってこちらに突撃してきた男の頭を踏み台にし、その後ろに居た銃持ちの男の頭に回し蹴りをブチ込んだ。
――バフ様様だな。
俺は突入する直前に真司と作戦を相談して、各種バフをかけまくってからココに来た。
――一般人がいる中でスキルを使うことは犯罪だが、今なら大目に見てもらえる、ハズ……きっと。
「よし次!」
俺がそう叫び、残りの敵を片付けようと後ろを見ると、もう既にソフィアの魔法によって壊滅していた。
「うわぁ……」
地面にはこれでもかと言うほど、ソフィアの魔法で生み出された破壊の跡が残っている。
それを見て、若干俺は引いた。
――防御魔法と治癒魔法はチート並みに強いのは知ってたけど、ソフィアの攻撃魔法がここまで強いとは。……待てよ、ソフィアが攻撃魔法にトラウマ植え付けられたのっていつだ! まさか!?
「あまり私を舐めないで頂戴!」
そう言うと、ソフィアは手のひらをフードの男に向けた。
「えぇ、舐めてはいませんでしたよ? まさかここまでとは思いませんでしたが。ククッ、素晴らしい。これならばきっと!」
「何を言っているのか分からないけど、これで決着をつけさせて貰います」
ソフィアが魔法を放とうとしたので、俺は嫌な予感がして止めようとしたが間に合わない。
「ソフィア! 待……!?」
「パニッシュメント・レイ!」
ソフィアの攻撃が当たるかと思われた瞬間、フードの目が怪しく光る。
その瞬間跳ね返った魔法はソフィアに当たり、彼女の体は自分の魔法に焼かれ宙を舞った。
「王女殿下!?」
「この! やりやがったな!?」
俺と真司はフードの男に飛び掛かった。
「合わせろ真司!」
「任せてくれ!」
真司がミラージュデコイで攪乱しながら、俺がアイツをぶっ飛ばす!
「ハァァッ!」
俺はステータス任せに蹴り突き掌打と連続攻撃を繰り出すも、全てするりと躱される。
「ガッ!」
フードの男はあくびをしながら俺の攻撃を全て避けると、俺の首を掴んで投げ飛ばした。
「悠馬! なっ、しまった!?」
俺が投げ飛ばされて真司が動揺した隙に、真司の頭に蹴りを放ち昏倒させる。
「クソがッ!」
俺は男に突撃するも顔に一発突きを貰いよろけた所に、腹部に強烈な痛みを感じてそのまま意識を失った。
「ここは……」
どうやら俺は捕まったらしい。
手が縛られていて動かせない、どうやら何かの倉庫部屋のようだ。周りを見渡すとソフィアが隣に転がっている。
「起きろ。オイ、起きろ!」
俺が縛られた手のまま、体を使ってソフィアをゆすると目を覚ました。
「あれ? 私……」
「起きたか」
そう俺が声を掛けると、ソフィアは俺に詰め寄ってきた。
「貴方は確か、尾野さんの弟子の鈴木悠馬君!? ここはどこ! 私達は一体!?」
「ちょちょ、落ち着けって。な? ここが何処かは俺も知らん、俺だって捕まってるんだから」
「そ、そうよね。ごめんなさい……」
「取り敢えず、冷静になってくれて何よりだ」
その時、足音が聞こえてきた。
「シッ! 誰か来る! 少し寝たふりをしててくれ」
「わかったわ」
どうやら先ほど俺が最初に吹き飛ばした男が見回りに来たらしい。
「ハハハ、寝てやがるぜ。王女サマは傷つけんなって言われてるが、このクソガキなら痛めつけたって大丈夫だよなあ」
男はそう言うと俺を殴ろうと胸倉を掴み、右腕を振り上げたので、男の間抜け面に頭突きをお見舞いしてやった。
数分後。男のポーチからナイフを引き抜き、互いに背中を向けて俺がナイフを持ち、ソフィアがそのナイフに縄を擦ることでソフィアの縄を解き、その後ソフィアに俺の縄も外してもらう。
「よし、これで手は自由になったな」
「早く脱出しないと!」
俺はソフィアの言葉に頷き、脱出する為に男が入ってきた扉を慎重に開けて、周りを見渡してから廊下を恐る恐る進んだ。
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