第11話 遊園地とは、いくつになっても楽しいもの
俺たちは親睦を深める兼昨日のお詫びで、近くの遊園地に来ていた。
「うえぁ……」
俺は、現在ジェットコースター酔いの真っ最中である。
「ね、姉さん。乗り物酔いに強すぎない? あのジェットコースター尋常じゃないよ……」
色々と戻しそうで瀕死だが、何とか喉から声を絞り出した。
「ん? 何を言ってるんだ!? あの目が回るレベルのジェットコースターがいいんじゃないか!」
ジェットコースター『スカイハイ』、ヒロイン全ルート共通イベントである遊園地デートイベントに出てくるアトラクション。
作りは単純、ただ300メートル上昇してそこから落ちるだけである! まぁ! なんて素晴らしいアトラクションでしょう!? 最早ジェットコースターでは無くフリーフォールである。
こんな馬鹿アトラクション考えて、姉さんの好きなものに設定したシナリオライター、出てこい。今ならレイスラッシュ一撃だけで許してやるから。
作中主人公がどんな目に遭ったか知っていても、乗ってしまうのがラスティアファンの悲しい性である。
そりゃあ気になるし? 折角の聖地巡礼だし? 悔いはないさ! ただ何度も言うがシナリオライター、てめえだけは許さん。
そんなことを考えていると、ぐったりしている俺の腕を姉さんが引っ張った。
「悠馬! もう一回行くぞ!」
「ヒエッ!」
それだけは……それだけは絶対に避けねば!!
「姉さん!? 折角だからもっと他のアトラクションも回ろうよ!」
「それもそうだな……少し残念ではあるが」
そう言うと、姉さんは他のアトラクションを探しだした。
「んーそうだな、あのゴーカートなんてどうだ!」
「ヒョッ!?」
ワクワクゴーカート『クレイジーコンペティション』
はい、もうお分かりだろう。ハズレアトラクションである。もう名前からしてヤバそうな匂いがプンプンだが、ゲーム内容は簡単! この遊園地のマスコットキャラにして、ラスティアのパッケージにも写っている蛇のマスコットキャラ、テュポ君とゴーカートで競争するだけである!
「あぁぁぁぁ!?」
「やっほー! 飛ばすぞ!」
えー現在姉さんと相乗りで、マスコットのテュポ君が後ろから放ってくる業火を避け、猛スピードで爆走中であります。
「悠馬! ドリフトするぞ!? 舌を嚙むなよ!?」
「ヘグッ!!」
舌嚙んだ。因みにこのテュポ君の炎、作中ヒロインの中で防御最強のキャラが展開した防御系最高峰のスキル、アイギスの護りを一撃で砕くほどの威力である。
なんでマスコットキャラがそんな物騒な技使えるんだ!? ふざけんじゃねえぞシナリオライター! ゲームだったから笑えたけどな、現実で近くを馬鹿げた威力の炎が掠めたらちびるわ!!
心の中でシナリオライターに延々と呪詛を吐いていると、どうやったのかあの悪魔から逃げ切ったらしい。今晩夢に出てきそうだ。
「楽しかったな悠馬! よし次ッ!」
――楽しかったって何が!? えっ? ちょ、ちょ、待っ!?
「す、すまない。少しはしゃぎすぎてたみたいだな……」
「いや、姉さんが楽しめたならそれで……そうだ、俺は少し休憩してるからさ。姉さんは行きたいアトラクション行ってきなよ。折角だからさ」
「そうか……わかった。少ししたら戻ってくるから悠馬は待っていてくれ」
現在、俺はベンチでダウン中である。いくら姉さんとでも、これ以上は命に関わりかねないので、今回は姉さんだけで行ってもらうことにした。
「空、青いなぁ……」
俺がボーっと景色を眺めていると、何となく視界の端に見覚えのある女の子が通って行った気がした。
「……ちょっと見てくるだけだし、良いだろ」
彼女の跡をつけていると、彼女はフードコートで立ち止まり山のようなから揚げ頼み、一瞬で平らげる。
間違いない、あれは……
「いやぁ、悠馬もお目が高い。あそこにいらっしゃるのは、かの有名なソフィア・シャーロット・オリビア=サンチェス殿下だよ」
改めて聞くとフルネーム長いな……
ソフィア・シャーロット・オリビア=サンチェス、通称ソフィア。
神聖サンチェス法国の第一王女で聖女。ラスティアのパッケージヒロイン。
天真爛漫で可憐。髪型は茶髪のロング、碧眼の美人。唐揚げが大好物。
過去にトラウマがあり、防御魔法と治癒魔法しか使えないが、その実力は一級。先ほど話した防御最強のキャラである。
ちなみに、最終決戦で瀕死の重傷を負った主人公に生命力を全て渡して力尽きる。
「で、どうしてここにいるんだ? 真司」
そう言って俺が振り向くと、付けひげとサングラスで変装した、極限までダサい格好の真司がそこにいた。
「ん? モデルの撮影だよ。ソフィア王女殿下が日本に訪れるから、友好の証として日本の誇る有名人エンフォーサーと、サンチェス法国の誇る聖女様でツーショット写真を撮ってるんだよ。ちなみに今は、堅苦しい撮影にうんざりして僕もソフィア王女殿下も抜け出してきてる」
「SPを一人も連れないでか?」
「うん、だから心配で見に来た所に、偶然悠馬が殿下をストーカーしてた訳」
「ストーカーちゃうわ!」
そんなやり取りを俺たちがしていると、ソフィアは黒づくめの男たちに包囲されていた。
――おいおい! ベタすぎんだろ!?
内心でそう思いながらも真司と頷きあい、黒づくめの男たちに囲まれているソフィアの元へ向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます