ハーレムはハーレムでも要素つめつめサラダボウルハーレム的なヤツ

登場! ふたなり美少女淫魔(タチ)

【ハーレムはハーレムでも要素つめつめサラダボウルハーレム的なヤツ】


 美少女とは、読んで字のごとく美しい少女の事である。

 ふたなりとは、【自己規制】と【自己規制】を持ち合わせた、どうやらごく稀だが本当に生まれることがあるらしい存在である。

 淫魔とは、【自己規制】などで性を搾り取る所謂エロ同人のあれ。

 そして中井修一とは、美少女大好きな健全な男子高校生。美少女が空から降ってくる事を常日頃から願っている、そしてあわよくば巨乳な美少女と【自己規制】をしたい! 【自己規制】を【自己規制】してもらいたい、健全な男子である。

 そして俺はっ――

「修一ー! ご飯できてるよー?」

 おっと、始まってしまった。急ぎで説明をしよう。

 さて、諸君。そんな野郎の物語を見ても面白くないとお思いだろう、だが安心してほしい! 今から始まるのは、諸君の大好きなハーレムモノ。そう、サラダボウルハーレムだ。

 そしてっ、今喋っているこの俺の名はっ――

「わかってるー!」

 ……どうやら名乗らせてくれないようだ。まぁ、重要な事じゃないしいいか。

 っと、そうだな。お前等が来たら色々と説明してやるのが道理ってもんだ。朝七時、修一のいつものご飯の時間だ。しかし今日は、早めに起きて何かに打ち込んでいた模様。

 夢中になって時間を忘れていたが、母親である美智子に呼ばれて直ぐに部屋から出て行った。

 夢中になって書いていたのは……。お、これは中々面白い。「美少女な淫魔がやってきたとしたら、攻められたいか攻めたいか」だって。ちょっと覗かせてもらおう。

 おっと、脱線したな。さて、修一が向かったリビングに行くとしようか。

 お、いるいる。

 リビングでは、修一の先に美智子と、妹の心音が座っているな。お前、あぁいう女子好みだったりする? はは、けどダメだぞ。

「ちょっと兄貴! 遅いんだけど」

 なんだか、怒っているなぁ。この目、仮にも兄に対するモノじゃないと思うけど。けどまぁ、修一はあまり気にせずに苦笑いでいつもの席に座った。

「ごめんって、部活で使う資料作っててさ。今日締め切りなの忘れてたんだ」

「まったく……。美少女研究部とか、気持ち悪い」

 吐き捨てるように気持ち悪いと言い捨てる。分かるか? 素直なんだよな。あぁだけど、ツンデレともいうな。ははっ、そういうの、好きか?

「気持ち悪いとはなんだ、神聖なものだぞ美少女は。わかってないなぁ、心音は」

「気持ち悪いはアンタに言ってんのよ!」

「はいはい。兄妹でいちゃつくのは良いけど、ご飯を食べなさい」

 はは、楽しそう。

 心音は明らかに不服そうだが、大人しく食い下がり、いただきますと小声で言う。

 朝ご飯を食べて、少しの時間をゆっくりしてから修一は学校に向かう。これがいつものルーティンだ。

 スマホと会議に使う資料を鞄に入れて、忘れ物がないかの確認をしてから玄関を出る。そこで待っていた親友の田中大智と合流して、学校に向かった。

 よし、俺等も付いていくか。大丈夫、俺もきちんとナレーションしてやるから。まぁ、出来る限り。

「お、修一! おはよーさん」

「大智、おはよう」

 ニコニコと愛想のいいこの子は、大智くんだ。修一の親友だ、幼馴染つっても間違いではないかもな。二人で一緒に登校している間、修一は美少女の事とか美少女の事とかを話して、盛り上がっていた。

「そういや俺、彼女できたんだー」

「ちょっと待てよ大智! 抜け駆けは許さんぞ」

「羨ましいだろぉ~、ほらこれ俺の彼女の写真」

 どや顔でスマホの中の写真を見せてくる。画面の中には、まるで人が描いたような完璧な造形の美少女が!

「ふむふむ、って二次元やないかーい!」

 おぉ、こてこてな関西弁ツッコみ。流石だな修一!

「あははっ、やっぱお前はノリがいいなぁ」

 一見すべっているようにも見えるが、大智くんは修一との会話を楽しそうに笑って、スマホを鞄の中にしまった。ほんと、仲良しだよなぁ。

 徒歩圏内にある男子校につくと、下駄箱の所に七夕の笹が飾ってある。それを見て思い出した、今日は七月七日、七夕だ。笹の横に置いてある机の上には、カラフルな短冊とペンがぴてある。

「お、短冊かいていいってよ。書いてこうぜ」

「そうだね」

 さらさらっと書き上げ、互いに見せ合った。

 修一の短冊には「美少女が空から降ってきますように」と。大智くんの短冊には「あいつに想いが届きますように」だ。

「乙女かよ」

「そういうお前だって、ブレないな」

 笑いあいながら短冊を笹に吊る。他の願いは「高校生のうちに彼女が欲しい!」とか、「留年はしたくない」とか、切実な願いが書かれていた。若者の願いは見ていて面白いなぁ。こんくらいの歳だったら、俺は確か、美少女と【自己規制】したいって書いたな! 親父に怒られたけど。「俺だって美少女とシたいよ! けど、短冊に書くな!」って。ま、そしたら今度は親父が母さんに殴られていたけどな。いやー、若気の至り若気至り。

 ……あれ、修一たち教室行っちゃった。って、お前もか!?


 っと、いきなり出てくるなよ、びっくりしたな。

 今はな、体育の授業中だぞ。修一の得意教科は数学、苦手科目は体育ってところだ。どのくらい苦手かというと、体育の授業の一発目にやるマラソンで、たった校庭一周でへばっているだろ? あれくらいだ。

「中井、遅れてるぞー」

「頑張れー中井!」

 既にゴールした男子諸君に応援されている。運動神経がいいやつには分からないだろうが、持久走とかでよくある「走ってー!」とか「ペース上げて!」という応援は非常に無責任で残酷だからよした方がいい。

「他人事だとっ、思いやがって……」

 そうそう、他人事なんだよなぁ。

 そんなこんなで、学校が終わって、放課後の部活タイムだ。

「やはり相手が淫魔というのであれば攻められたいだろう!」

「部長さんよ、その考えは全くの素人ですよ! 小悪魔な相手を啼かせてこその男でしょう!」

 会議というなの性癖披露会はかなり白熱していて、面白い。三年の二人が攻めたいか攻められたいかを話している、各自作ってきた資料は結局あまり使われていないが、いつもの事だ。

「一年くんはどう思うかね」

 部長のいう一年くんというのは、修一と大智くんのことだ。部員は全部で七人、そのうちの一年は二人だけ。ちなみに本日は一名欠席だ。

「俺はやっぱ攻めたいっすね」

「俺も~」

 俺もー。

「二年君は?」

「僕は部長派です! 攻められたいです!」

「えっと、私は……攻められたい、ですかね」

「うーむ、同点か」

 一年は副部長派、二年は部長派か。俺が加われば副部長の勝ちだな。

 活動時間一杯で話し合ったところ、出された結論は「ムフフな展開になればなんでもいい」だった。

 下校中、語る修一の話を真剣に聞いてくれている大智くんは本当にいい子だと思う。

「じゃあな修一」

「うん、また明日」

 家に帰って手を洗って、直ぐに部屋に戻った。パソコンを立ち上げて、おっと、これはニコニコだな。動画鑑賞か、俺もみてよ。

 と思ったら、エロゲの実況か。年ごろだなぁ。

 うわ、すっげぇエロっ。はぁ、やっぱ巨乳っていいなぁ。美女の体さわりてぇ……。そだ、美智子だったら――

「ちょっと修一」

 おわっ! ビックリした。俺の考えてる事、美智子にバレたのかと思った。なんだ、修一に用か。そりゃそうだよな。

「あぁぁ! なんだよいきなり扉開けないでよ!」

「あ、ソロプレイ中だった? ごめんなさいね。じゃ」

 あ、帰っちゃった。なんだったんだろ。

「いや、そうじゃないけど……」

 ソロプレイもあながち間違いじゃないけどな。あと少し遅かったらいたしていただろう。んなことになったら男として同情するな。

 よかったなぁ修一、ギリセーだ……んぁ、なんだこの音?

 落下音か?

 近づいてるな……。あ、分かった。これ、ここに落ちてくる奴だ。離れとこ。ほら、お前も来い、危ないぞ。

 近づいてきている落下音は、直ぐにこの部屋に突き刺さった。それはもう、よく見るご定番な登場シーンのごとく、天井突き破って落ちてきたわけだ。

「わぁっ、何だよもう!」

 驚いて落ちてきた者を見やると、思っていたものとは違う奴が見えた。

 こう言った場合、想定するのはエイリアンとか強い敵とかだが、そこにいるのはそれではない。薄茶色のおさげで、濃いピンク色の瞳の、可愛らしい女の子。そして、胸が大きい。セーラー夏服だというのも高ポイントで、総じて修一と、あと俺の好みだ。

「どうも、美少女です!」

 こりゃ、夜中に知らん女が玄関に立っているよりも怖いかもな。

「は、はいぃ?」

「君が修一か! ふふ、いい感じの男の子じゃん」

「あ、いや、あの、どちら様?」

「僕? 僕はね、林檎っ! お望みの通り、空から降ってやってきましたぁ」

 しかも僕っ娘これはイイ。だが、今の修一には美少女登場に喜んでいる余裕はない。

 確かに、空から降ってきますようにとは書いた、しかし、それは冗談だ。ラから始まってタで終わるあの某映画のワンシーンを思い描いて書いた冗談だ。俺も冗談だと受け取っていた。

 混乱以外の何物でもない頭の中では、情報が踊り狂っていた。

 少女が空から降ってきて、美少女ですとか自己紹介して。分かるだろう? ただでさえ情報の大渋滞だ。そんな中、林檎は追い打ちをかけた。

「僕は淫魔。ご生憎、君たちの思っている淫魔とは、ちょーっと違うけどね」

「本当はね、淫魔っていうのは常にタチなんだ。その見た目が女でも相手が男でも、ね」

 語尾にハートでもつけるかのような口調で、ウインクしてみせるその淫魔は、修一に詰め寄って恐ろしい程の笑顔を浮かべる。

「という事で、修一の処女ちょうだい!」

「え、ちょ、待て! 待って! 一旦整理させて!」

「え、いんま? あの、漢字これであってる?」

 おっと漢字の確認だ。淫魔以外の「いんま」は無いと思うが、混乱状態だから仕方がない。手早く紙に書いた淫魔の文字を林檎に見せている。

「うん、間違いなくその淫魔だよ」

 それならば、まずはオスかメスか確かなければならない。見た目は完全に少し年下くらいの女子だが、回答によって対応は変わってくる。

「サキュバス? インキュバス?」

「んー、修一はどっちがいい?」

「できればサキュバスの方で……」

「残念っ! ふたなりだからどっちでもないよ」

 微かな希望は直ぐに折られて撃ち返されてしまった。嬉しそうに「残念」だなんて、酷いもんだ。

「というか、君たちの言う淫魔は完全に妄想だよ? 長い地球の歴史上、僕達が突っ込まれる側だったことは一度もないからね」

 これは、思春期男子には辛い情報だなぁ。

 修一はやっと理解できたようで、真っ青になっている。

「お前、もしかしてついてんの? そのなりしてついてんの?」

「うん。見る?」

「見せんでいいっ!」

「ほら」

 あぁ見せられない見せられない! こんな時に用意していたモザイク用イラスト、筋肉猫ちゃんだ。よし、これで少年少女の健全育成は守られた。

 しばし八頭身猫ちゃんの美しい筋肉でも見ていてくれ。

「え、でか……じゃないのよ! しまえ今すぐ!」

 思わず漏らした感想は慌てて隠して、修一がツッコむ。

「えー、折角出したのに」

「露出狂か! 【自己規制】は本来見せるもんじゃないだろ!」

 少し残念そうに、スカートをはき直した。

 流石淫魔、貞操観念が驚くほど人と一致しない! そりゃそうか。

「じゃあ、胸見る?」

「それは見たい!」

 え、それは俺も見たい!

「おっ、乗り気ぃ~。じゃあ」

 そう、林檎が上を脱ぎ始めた時、何ということでしょう、妹が部屋に突入してきたのだ。

「ちょっと兄貴!! うるさいんだけど!」

 まぁなんと、ギャグ漫画かのようなタイミング。そりゃもう修一と心音の間に走るのは気まずい空気だ。

「あ」

「あ……」

「おとりこみ中失礼しました」

 無駄に早口な謝罪を述べて、扉を勢いよくしめてった。

「違う違う違う! 心音、違うの! ホントに違うの!」

「あはは、修一おもしろーい。浮気がバレた男みたいだね」

「他人事だと思いやがって。元はと言えばお前がっ」

 振り向くと、眼中に移るのはたわわなそれ。それはもう、思春期男子には刺激がそこそこ強い、それ。

「なぁ、それ、なんカップ……?」

 それ訊くか、攻めるなぁ。あ、一般女子に訊いたら普通にセクハラだからダメだぞ。林檎は淫魔だから、逆に興味持ってくれた方が好都合ってモンだろう。証拠に、嬉々として答えてくれた。

「Fだよ」

「ちなみに、さっきの娘はBだと思うなぁ。貧乳の部類だよ」

「へぇ、あんくらいがBなんだな」

 真面目な顔して頷いている。まったく、修一も男だなぁ。

「修一、ほんと僕好みだなぁ。ふふ、変態くらいが丁度いいよね」

 可愛らしい笑みで、修一に話す林檎。淫魔に変態認定されちゃぁ逃げられないな。

 自分の行動を思い出してか、赤くなった修一は思い出したかのように目を逸らす。

「とりあえず、服着ろ」

 今更である冷静なツッコミに、林檎は苦笑いを浮かべて仕方ないなぁと服を着る。

「もー、つれないなぁ変態くんのくせに。ま、今日のところは許してあげる。僕的には、嫌がる男を無理矢理犯してもいいんだけどね」

「俺が良くない」

 それはもう、切実に。

「やだなぁ、エロ同人で女レイプするくせに」

「モブレ系は俺の趣味じゃないの!」

「そっか、モブレはいい歳しても女一人もとっ捕まえることの出来ない可哀想なおじさんが好きなやつだもんね! 修一はまだ希望あるよ、若いし」

 あー、言っちゃった。すっげぇ笑顔ですっげぇ偏見言っちゃった。林檎に変わって俺が訂正とお詫びを申し上げよう。子どものした事だと思って、寛大な心で許してやって……ん、林檎は、子どもに入れてもいいのか?

「すっげぇ偏見。一回怒られてこい」

「嫌だ」

 小悪魔的に笑った林檎。立ち上がったと思ったら、窓をあけて修一を見る。

「まぁ、あと三人僕の仲間がいるから、覚悟しときな。誰が一番に修一の処女を奪えるか、勝負してんだから」

「じゃ、またね修一。気が変わったらいつでも言って、昼でも夜でも貰ってあげるから」

 ウインクをすると、林檎は姿を消した。

「奪われるのが童貞だったらどれほど良かったか……」

 そんな悔やみを見せて、修一は天井に目をやる。見事なまでに壊れた天井。これはなんと説明したらいいのだろうか。

「天井、どうしよ」

 今日が晴れであることに、これほど感謝した事はない。いくら晴れていると言えど、都会の空に天の川は見えないのだが。

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