1章77 『燃え尽きぬ怨嗟』 ③


 戦場で荒れ狂う蒼き焔が悪魔たちを次々に焼き殺していく。



「――おおぉぉぉぉッ! 死ねェ……ッ!」


『オイッ!』


「燃えっちまえよこのクソがァァッ!」


『オイッつってんだろ! 聞けよテメェッ!』


「なんだ?」



 真面目に戦っているというのに横からギャーギャーと煩いかつての保護者に、弥堂は渇いた眼を向ける。



『うるっせェんだよテメエ! なにデカイ声で喚いてんだ!』


「アンタがやれって言ったんだろ」


『ンなこと言ってねェよ!』


「アンタみたいにやれって言ったじゃねえか」



 眦を上げるルビアに適当に答えながら飛び掛かってきた悪魔の顔面を鷲掴みにする。


 人差し指を眼窩に突っ込んで引っ掛け、そこから頭の中に焔を流し込んでやると悪魔は派手に破裂した。



「チッ、汚ねえな――」



 愚痴を溢すも束の間、死角から突進してきたサイのような悪魔の体当たりを受けて弥堂も派手に内臓をぶち撒けて死ぬ。


 そしてすぐさま死に戻り、先程から何回も殺されているサイの姿を探すが、こちらへ向かってくる軍勢がブラインドになって見つからない。


 弥堂は苛立たしげに唾を吐き――



「――出て来いクソがァッ! 隠れてんじゃあねえぞフニャチン野郎ッ!」



 また大声量で叫び声をあげながら焔を撒き散らす。



『だからやめろって言ってんだろうが! なんの真似だそりゃ!』


「アンタの真似だが?」


『アァッ⁉ バカにしてんのかテメエ!』


「大体あんな感じだっただろうが」


『つーか、アタシは怒れって言ったんだ! デカイ声出せとは言ってねえ!』


「なんだと? じゃあこんな恥ずかしい真似をしなくてもこのチカラは使えるんだな? 最初に言えよ馬鹿が。チッ」


『こ、このガキ……ッ! 知ってはいたがこんなに生意気になりやがって……ッ!』




 “加護ライセンス”を貸す――



 ルビアのその言葉どおり、弥堂は生前の彼女が使っていたチカラが使えるようになっていた。



 そのチカラの名は、【燃え尽きぬ怨嗟レイジ・ザ・スカーレット】。



『世界』がルビア=レッドルーツにのみ能えた特別な“加護ライセンス”。


 彼女を“神意執行者ディードパニッシャー”足らしめた、その象徴となるチカラだ。



 魔術としての理論を必要とせず物理法則なども無視して、魔力さえあれば彼女が燃やすと決めたものを何でも燃やす。それを『世界』が許している。


 そのチカラの源は“怨恨”――怨みの火が怒りを焚いて燃え上がり憎しみの焔が敵を灼く。



 それを弥堂は借り受けたわけだが――



「――なんで使えてんだこれ?」


『ア?』


「加護は魂に紐づいて“魂の設計図アニマグラム”に刻まれている。だから他人に加護を貸し借りなど出来るわけがないし、アンタが死んだ時点で加護も『世界』へ還っているはずだ。これはどういう理屈だ?」


『ンなことアタシが知るかよ』



 絶対に不可能なはずの現象の理由を聞いたが、本人にも全くわかっていないようだった。


 弥堂は胡乱な瞳をルビアへ向けた。



「なんだそりゃ? アンタが貸すって言ったんだろ? どうやってんのかわかんねえのに、何で出来ると思ったんだ?」


『ア? そんなのノリに決まってんだろ? なんかイケっと思ったんだよ』


「……相変わらずいい加減だな。ロクデナシめ」


『うっせーな。出来てんだからいいだろ? オマエは男のくせに細かいこと気にしすぎなんだよ。いつもテメエで言ってんだろ? 目の前で実際になんちゃらって』


「……違いない」



 一つ嘆息して次の標的を決める。



「殺せりゃなんでもいいか――」



 逆巻く焔が悪魔の軍勢を押し返し始めた。






「――うおおおぉぉぉぉッ! スゲェッ!」



 その様子にメロは興奮気味に声をあげた。



「マナッ、マナッ! アイツなんか急に火とか出しやがったッスよ! 覚醒ッス、覚醒! 少年がスゲェッス!」



 手で触れる愛苗の肩を揺するが反応がない。


 彼女はまた眠ってしまったようだ。



「…………」



 愛苗の顔を一度悲しげに見つめ、メロは弥堂へと声援を送った。



 一方で――アスは唇を噛む。



「まだ隠し玉があったのか……」



 とるに足らないはずだったニンゲン。


 それに底の知れなさを感じていた。



 何があるかわからないからと決断をした矢先にこれだ。


 これ以上は本当に想定外以上のことになるかもしれない。



「仕方ありませんね」



 クルードを喰ったことで増大した魔力。


 それを“世界樹の杖セフィロツハイプ”を通して門へと送り込んだ――





――自身の周囲の敵を焼き尽くした弥堂は次に接敵するだろう集団を視て左手を向ける。



「……チッ」



 だが、その手から放たれた蒼い火は勢いがなく数mも飛ばなかった。


 魔力切れだ。



 弥堂はすぐに見切りをつけるとその左手で黒いナイフを抜き、それを眼球に突き刺して脳まで抉る。


 背後にゆっくりと倒れてから10秒ほどして死に戻った。



 そしてかなり近くまで迫っていた集団を、死んで戻した魔力を使って焼き払う。すぐに走り出した。



『オマエそれ気持ちワリィからやめろよ』


「仕方ないだろ」


『つーかよ――』


「あぁ――」



 眼も向けずに、最後まで聞くこともなく、弥堂はルビアに同意する。



『ダメだな』


「そうだな」



 何故か魔力が増大し、ルビアのチカラまで借り受け、昨日までの弥堂と比べれば別人と呼べるほどに強くはなっていた。


 しかし、それでも悪魔の大軍勢を殺し尽くすには全く足りていなかった。



 その事実を二人はあっさりと認める。



『せっかくアタシの加護まで貸してやったっつーのに、テメエはマジで弱ェな』

「うるせえな」


『つーかよォ、なんだよこの青い焔は? 気合が足んねェんじゃねえの? アタシのはもっと赤くてカッコよかっただろ』

「ふん」



 ルビアの使っていた焔は彼女の髪の色と同様、完全な赤というよりはオレンジに近い。


 だがそれを指摘すると彼女は何故か怒るので、弥堂は別の方向で馬鹿にすることにした。



「知らないのか? 野蛮人め」

『ア?』


「火はな、青い方が温度が高いんだ」

『アァ?』


「つまり俺の方がすごい」

『じゃあそのスゴイ焔でさっさと皆殺しにしろよ』


「無理だ。まぁ、こんなものだろ」

『だからそういう考えだからダメだっつってんだろうが』



 せっかく加護まで貸して発破をかけたというのに、全く変わった様子のない弥堂へルビアは眦を上げる。



『オメエがよ、あのデブに借りて見てた本とか映像とかであっただろ? ピンチになったら何かいきなり強くなるヤツ……、あ、覚醒か。覚醒しろよテメエ』


「おい貴様、そのデブとはまさか廻夜部長のことじゃないだろうな?」


『ア? そうだよそのデブだ』


「部長に対しての不敬な発言はたとえお前であっても許さんぞ」


『え……? ちょっと待てよ。オマエの中でアタシよりあのデブの方が上なのか? ウソだろ⁉ 普通にショックなんだが……』



 ルビアは落ち込んだようにガックシと肩を落とした。


 だが、この女はこういう“フリ”をしてよく人のことを揶揄ってくるので、弥堂は一切信用せずに無視し悪魔を殺す。



 少しするとルビアの方が先に諦めて話を再開させた。



『論点はそこじゃねえんだよ。覚醒しろよカス』

「しろと言われて出来る程度のものを覚醒とは言わんだろ」


『屁理屈こねんな。やれよテメエ』

「反論に困ったらパワハラか。昭和の残りカスめ」



 弥堂は呆れたように嘆息し、すぐに表情を戻す。


 そして『昭和ってなんだ?』と首を傾げる女に『世界』の常識を伝える。



「奇跡だの覚醒だの、そんなものはない」

『奇跡はあっただろ? ガキんちょが見しただろうが』


「結果あのザマだ。これを奇跡と呼ぶのか?」

『そんな考え方じゃ火事場の馬鹿力なんて出ねえんだよ』


「そんな都合のいいものは存在しない」

『そう思ってるうちはな』



 弥堂が酷く嫌う話題だ。


 だが苛立ちよりも先に訝しむ。


 ルビア=レッドルーツとはこんな論調で話す人物だったろうか――と。



 こちらの疑いの眼を無視して彼女は話を続ける。



『よぅ、アタシの加護。その火はなんだ?』

「知るかよ」



 そのことに不愉快さを感じ話を終わらせるが、そんな子供じみた駄々は彼女には通じない。



『その火の種は怒りだ。恨みの火。そいつに魔力と更なる怒りを注ぎ込んで燃え上がらせる。コイツは魔力は使うが魔術じゃない。アタシが燃やすって決めたら燃やせる。理も術もない。加護ってのはそういうもんだ』


「だからなんだ」



 それは彼女のチカラに限らず、“加護ライセンス”というものに関する基礎的な知識だ。


 今更教わるほどのものでもない。



『今、テメエはその火を使ってる。じゃあよ、その怒りはなんの怒りなんだ?』

「アンタの怒りだろ」


『ちげェよバカが。チカラを、仕組みを貸してやっただけだ。だがアタシの怒りはアタシだけのモンだ。それはオマエにもやれねえ』

「何が言いたいんだよ」


『火種と燃料はオマエのモンだ。オマエの怒りもオマエだけのモンだからだ』

「だから何が言いたい」



 苛立ちが募ってくる。


 だが、やはり違和感が強い。



 ルビアは理路整然と丁寧に話すタイプではない。


 自分の感覚で話すので何を言っているのかわからないことが多々あったが、しかしこんな風に迂遠な、まるで丁寧に説明をするような話し方を好む女ではなかったはずだ。


 彼女はその見た目と性格どおり、もっと端的にストレートにモノを言う。



『もう一回訊くぞ? オマエのその怒りはなんだ? そいつはどっからきてやがる?』


「俺はアンタと違って温厚なんだ。怒ったことなどないし、恨んだこともない」


『ウソつくんじゃあねえよクソ野郎。オマエは恨んでる。平和にこの国で暮らしてたガキのオマエをいきなり攫って、戦場に叩き込みやがった連中を。テメエは心底恨んでる』


「そんな時もあったかもな。だが、それはすぐにどうでもよくなった」



 眼を合わせないまま達観したように答える。


 弥堂がそれを認めたことでルビアは僅かに口の端を持ち上げた。



『ウソだね。それは別のモノをもっと強く恨むようになったからだ』


「そのような事実はない」



 弥堂は即答する。


 そしてルビアが次の言葉を口にする前に言葉を続けた。



「つーか、ちょっと黙っててくれよ。ヤツらの勢いが増した。さっきまで笑って見てた連中まで参加してきやがった」


『アン? ヘタレてんじゃねェよカス。今のテメエならこれくらい左手一本でヒネれ――あっ……』



 弥堂の泣き言を一蹴しようとしたが、彼が一瞬こちらへ眼を向けた隙に、死角から突っこんできた大きなサイに角で串刺しにされ、ルビアの目の前で弥堂は死んだ。


 角に刺さったまましばらくサイの激走に連れて行かれたが、少しするとズルリと角から弥堂の身体が抜け落ちて地面に落ちる。



『あーあ、ったくメンドくせェな。だから戦場で集中を切らすなってあんだけ言ったのによ……』



 ぼやきながらフッとルビアは姿を消した。


 そして――



「……クソが」


『ダッセェなテメエ。あんな三下に殺られんなよ』



――毒づきながら死に戻った弥堂の横に再び現れる。



「あのサイみたいなヤツはどこ行った?」

『アン?』


「さっきからアイツに何回も殺られてんだよ。殺してやる」

『おーおー、キレてんじゃあねえか。別にいいだろあんくらい』


「黙れ。俺の怒りの元はサイだ。アイツを生かしておかない」

『ちげえだろバカが。誤魔化すな』



 執拗な怨みをサイに向けようとしたが、もうその姿は見えない。


 それよりも迫ってくる他の悪魔への対処をせざるをえなかった。



『話を逸らしたな?』

「なんのことだ」


『テメエが姫さんたちよりももっと恨むようになったヤツの話だよ』

「そんな事実はない」


『いいや、あるね。そいつはオマエ自身だ』

「…………」



 逃げ切ることは出来ずに彼女に捉えられる。



『オマエはオマエの無力を恨み、だから自分を強く憎むようになった。何故だ?』

「俺が聞きたいよ」


『オマエのその無力がオマエから大事なモノを全て奪ったからだ。無力がオマエの大切なヤツを殺した。一人二人じゃない。根こそぎだ。死んだ。全員死んだ。死なせた。みんな死んじまった』

「……運がなかったのさ」



 ルビアは容赦なく弥堂へ過去を突き付けた。


 そして今度は――



『――だが、そのどっちもここで感じた怒りじゃない。それらは火種で、過去からずっとオマエの腹の底で燻り続けていたものだ。そして今ここでまた新たな怒りを感じてその火種は燃え上がり炎となった。だからオマエは【燃え尽きぬ怨嗟レイジ・ザ・スカーレット】を使えた』


「さっきから何が言いてえのかわかんねえんだよ」


『それはアタシの台詞だぜ。テメエが言いたいことを言えよ』


「なんだと?」



 意味のわからない反論に弥堂は思わず眉を顰めて動きを止め、ルビアの顏を見る。



『テメエの口から出る言葉は猿真似ばっかだ。過去に聞いた誰かの言葉――それをガキみてェにそのまま口にしてやがる。自分で考えるのが面倒だからとスカしやがってよ』


「誰だってそんなもんだろ」


『「運がなかった」「神が許さない」「効率が悪い」、こいつらは一体誰の言葉だ?』


「うるさい黙れ」


『ウルセエ黙れ』



 全く同じ言葉で返され、思わずハッと息を呑み弥堂は口を閉ざす。


 それを見てルビアは凶悪な笑みを浮かべた。



『他にもいっぱいあるぜ? 一個一個全部あげていってやろうか? アァン?』


「…………」


『アタシやエルだけじゃなく、あれだけ嫌いなセラスフィリアの言葉までも真似してやがる。テメエは空っぽだ』


「…………」



 自覚のあるその指摘には返す言葉は無い。



『テメエよ、あのガキんちょのこと、勧善懲悪な物語をまんま信じた薄っぺらなガキだと見下してたな?』


「……あぁ」


『確かにあのガキんちょは薄っぺらだったかもしんねェが、それでも自分テメェで考えて自分テメェの言葉で自分テメェを示した。それに比べてテメエはどうだ?』


「…………」


『なんか言えよ、この野郎』


「……あいつは薄っぺらで俺は空っぽ。その通りだ。だがあいつはまだガキで成長できる――変われる余地があった。“魂の設計図アニマグラム”にそれだけの幅と伸びしろがあった……」


『で?』


「俺はもうガキじゃない。このままで完成しちまった大人だ。もう今更どうにもならない。このままで、クズのままで死ぬしかない」


『つまんねェ答えだぜクソッタレが! 触れるんならブン殴ってるとこだ!』



 目に激しい怒りを表してルビアは弥堂の胸倉を掴みあげようとする。


 しかしその手は実際に存在するモノに触れることは出来ずに彼女の手は弥堂の身体を徹りぬけてしまった。



 ベッと唾を吐いて、ルビアは弥堂を睨む。



『もう一回言うぜ。テメエは空っぽだ。テメエの言葉がねえ。中身が何にもねえクズだ』


「その通りだ。だからなんだ?」


『おう、何度でも訊いてやる。なのに、その怒りはなんだ? 空っぽのはずのテメエの中にどこから来た? 何を見て、何を思って、その怒りを感じ、そして過去の怨みまで燃え上がらせた?』


「らしくないぜ。まるで教えでも説いてるみたいだな? その言い草ならアンタには答えがわかってるんじゃないのか」


『あぁ。アタシにはわかってる。だが、テメエがテメエ自身で、自分の言葉で唾を吐かなきゃならねえ』


「そんなことに何の意味がある? ないだろ」


『ある。テメエはもう大人だ。もうガキじゃあねえ。テメエのことはテメエで考えて、テメエで決めて、テメエの言葉で口をきいて、そんで外の世界に唾を飛ばすんだよ。そうじゃなきゃなんねえ』


「大きなお世話だ。死人は引っ込んでろ」


『イヤだね。こいつはアタシの不始末だ。バカなガキを、クソガキのまんまで途中でほっぽり出しちまった。そのケジメをつけに今ここまで出張ってきてんだよ』



 弥堂は言い返そうとして、口を閉ざした。



 ほっぽり出されたわけではない。


 見捨てられたわけでも、置いて行かれたわけでもない。


 彼女は弥堂を守るためにその生命を落としたのだ。



 彼女は弥堂にとって初めての女だ。


 弥堂が一定以上の親しみを感じていた人間の中で、一番最初に弥堂のせいで死んだ女だ。


 初めて死に別れた女だ。



 ジクリとまた胸が痛んだ。



 言い返せる言葉などない。



 ルビアは少し表情を緩め、声を静かなものにした。



『何を見て怒った?』


「……知るか」


『そういう時はよ。自分の胸に手を当てて考えてみな』


「……?」



 彼女らしくない、当たり前の普通の言葉。


 訝しみながらも弥堂は従う。



 ジクリと痛んだ胸に左手で触れる。


 すると僅かな痛み、それから湿った感触。



「なんだ……?」



 思わず掌を見下ろすと、その手は赤く血で汚れていた。



 その血が漏れ出ているのは胸の中心。


 胸に刻まれた葉脈のような刻印から血が流れていた。



『オマエの胸の“それ”はなんだ?』


「……聖痕のことか?」



 聖痕。


 弥堂の身体に刻まれた刻印の一つ。


 しかし、それだけは弥堂が自分で打った刻印ではない。



 昔、この日本からルビアたちの国に渡ってしまった時に刻まれたまま、一度も起動したことのないただの入れ墨のような刻印だった。



『その胸の痛み、その怒りはどこから来た? その火は何故いまさら燃えた?』


「火は……どこから……」


『ちゃんと考えろ。ちゃんと答えろよ。それはオマエの人生の答えになっちまうぞ』


「俺の……答え……」


『こっちを見ろ。アタシの目を見ろ!』



 その声に無条件に身体は従ってしまう。


 寸分違わずにルビアと視線を合わせ、彼女の瞳に映らない自分の姿を視る。



『もしもオマエにケジメをつける必要があるってんなら――ここをきっちりキメろ! アタシらにじゃあねェ。オマエがケジメをつけんのはオマエと、オマエが選ぶ今生きてる誰かだ……ッ! じゃねえと、アタシもアイツもオマエを許さねえぜ……!』


「俺は――」



 過去から続いている今の自分。


 そして今ここから続く先。



 その二つを繋げるために弥堂は答えを迫られる。


 自分自身と向き合い、隠さず騙らず、その答えを求められる。



 弥堂 優輝びとう ゆうきという、その存在の意味こたえを――

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