第101話 『40食目:温泉パンと茹で穴鹿』
「ご主人様ぁ〜男風呂はぁ〜どうですか〜?」
「ああ、なかなかいい眺めだよ?そっちはどうだい?」
「こっちもぉ〜最高ですぅ〜」
鍵を渡された部屋は、少し古めかしくはあるが、手入れがよく行き届いていた、気持ちのいい部屋だった。部屋で少し寛いだあと、宿にある温泉に入ることにした。
男湯と女湯は、入口は別々、風呂場は、大きな広場とその真ん中にある大きな湯船を、半分に仕切りがように感じで別れていた。そして、最高なことに露天風呂だった。
だから女湯は、壁の仕切りのすぐ向こうだ。そのため、こんな感じで、気軽に会話が出来た。
「いや、ホントに眺めがいいなぁ…」
後ろにはプリズーガ山、眼下にはロクフケイの町並みが広がっている。夕方だからか、ロクフケイの街にはちらほら明かりが見えていた。
ロクフケイの向こうは森が広がっていて、その遥かに先に微かに大きな壁が見える。あれは、カナチヨかな?
「おおおお!アンよ、お主のその胸と尻、浮き輪になるのではないか?同じ女とは思えんのじゃ!」
「ちょ〜ルカぁ〜そんなしみじみとぉ〜揉まないでくださいぃ〜それはぁ〜ご主人様にぃ〜取っといてるんですぅ〜!!!」
oh…何という…想像力を掻き立てる。
「旦那様!アンの身体は、すごいのじゃ!胸が妾の頭よりもデカいのじゃ!間に顔を入れると完全に埋まるのじゃ!」
「ひゃあ〜ルカぁ〜やめてぇ〜」
ルカは、確かに華奢ではあるが、その頭が埋まるとな。それって一体どんな大きさの…なんてことを想像していたら、この若い身体は、こう何というか…その…元気に…。
(ダメだ!ダメだ!出ようっ!)
湯船から上がると、ザバァ、と湯が流れる音がした。俺が、湯船から上がることに、気が付いたのか、柵の向こうの2人が、反応した。
「あれぇ〜ご主人様ぁ〜出るんですかぁ〜」
「旦那様が出るのなら、妾も出るのじゃ!」
バタバタ、柵の向こうで湯船から出る足音がする。何も俺に合わせなくても、ゆっくりしていればいいのに。ま、明日からも入れるからいっか。
風呂を出て、タオルで体を拭くと、宿から渡されていたバスローブに袖を通した。そりゃあ、浴衣はないよねぇ。2人の浴衣姿、見たかったなぁ。
着替え終わって、男湯の入口まで戻って…。まぁ、2人とも俺に合わせて、湯船から上がったみたいだから、待つとしようかな。
10分ほどその場で待っていたら、バスローブ姿の2人が、女湯から出てきた。
「旦那様、待たせたのじゃ」
「ご主人様ぁ〜お待たせしてすみません〜」
むう。これは…これで眼福じゃあないか…。暴力的なスタイルのアンは、バスローブにいろいろなものは全く収まっていない。ヤバい。
ルカも華奢な体格はすんなり収まっている反面、胸元だけが、グイグイとローブを押し開けようとしていて、大変なことになってる。
「ご主人様ぁ〜がぁ〜とぉ〜ってもいやらしい目でぇ〜視姦してきますぅ〜私ぃ〜どうにかなっちゃいますぅ〜」
「旦那様はホントに助平じゃのう?まぁ、遠慮はいらんのじゃ。アンは見られたくないようじゃからな、妾を穴が開くほど見るが良いのじゃ」
「ルカ〜何言ってるですかぁ〜ご主人様はぁ〜この私のエッチな身体を〜見たいんですぅ〜」
「旦那様は、妾のこの妖精とも言われる可憐な容姿が好きに決まっておるのじゃ」
2人が互いのバスローブをつかみながら、話しているせいで、さらにバスローブが際どいことになっている。うむ。眼福なのでいつまでも放っておきたいところだなぁ。
「ほら、晩ごはん食べに行こうぜ?出してくれるって話だろ?」
※※※※※※
晩御飯の場所として指定されていた食堂に行くと、ちょうど配膳をしているところだった。
「用意されているのは…マーガパン?いや、香りが全然、違う?」
丸くて、ふっくらとしている何か。見た目はマーガパンに近いが、あの独特の甘い香りはないし、あれよりふっくらしている。よく見ると、焼いていない…これは…蒸しているのか。
「これは温泉パンって言うのよ、男前さん」
「温泉パン?」
「ええ。スイル粉とあまり日を当てないオストリーの卵とウシヨーグルト、そして温泉のお湯を混ぜるの。それでしばらく置いてから、温泉源泉の湯気で温めると完成」
「湯気で温める…ですか」
「そうなの。ここの源泉ってものすごく熱くて、ボコボコ言ってるくらいだから、その熱で料理するの。この村は、昔から火はほとんど使わないで、みんな温泉の熱で料理してたのよ…それに…」
女将さんが、床を指した。触ってみると確かに石の床なのに、少しも冷たさがない。まるで床暖房が設置されているような温かさだ。
「床、温かいでしょ?」
「確かに…」
「温泉のお湯は宿に巡らせてるの。まずは料理、次に部屋を巡って温めて、最後にお風呂に行くと温度もちょうど良くなるの」
なるほど。この宿も、ヤマーメンのお店と同じで、天然資源を余すところなく、うまく使っているんだなぁ。床暖房まで完備しているとは恐れ入った。
「ところで、何で温泉のお湯を混ぜるんですか?」
「誰が見つけたのか知らないんだけど、温泉を入れるのとパンがよく膨らむのよね」
なるほど、重曹か。そういえば、ここの温泉、入るとヌルヌルするアルカリ泉っぽかったもんな。要するにここの温泉は、重曹泉だったんだな。
「それとこっちのお肉を一緒に食べてね」
「美味しそうですね…これはなんのお肉ですか?」
「
「
モンスターっぽい名前だが、俺は知らない。ルカとアンを見ても、首を振ったので知らないのだろう。
「
「これも、蒸したんですか?」
「これは、蒸したんじゃなくて、茹でたの」
温泉のお湯で茹でたのか。蒸したり、茹でたりと、意外に調理方法も豊富なんだなぁ。
「この薄い石の箱に切った肉と、香草、塩、そしていくつかのスパイスを混ぜて、蓋をして、温泉に入れると2時間くらいでできるわ」
それは茹でるというよりも湯煎だ。要するに、家庭で作るローストビーフのつくり方に似ている。
ちなみに、もう一皿にはスープがよそってあった。これは、ミールミールスープだな。ロクフケイで何度も食べているものだが、肉は
「こっちは、首肉ではなくて、もも肉を入れてるの。脂がスープに溶けて、いい味になるから」
「なるほど…いつもと違うとは、少し違う味わいのミールミールスープというのも、これは、また楽しみだなぁ」
では、説明をたっぷり聞けたので、どんなものなのかについては、よくわかった。次は、実食といこう。
「まずは、温泉パンから…」
少し千切って口に入れると…ふわふわしていて、まるで溶けていくような噛みごたえだ。したもパンがすすっと溶けても、薫りは残って、口を満たしていくから、実にウマい。
ロクフケイでは、膨らんだパンを食べる機会がなかった。出てくるのは、ガーレトか、クリーム卵焼きが、ほとんどだからな。膨らんだパンが恋しくて、稀にマーガパンを自作したりしたが、木の実亭の方が美味しかったしなぁ。
ああ、ロゼッタとリーゼが帰ってきたら、そろそろコーダエに帰らないとなぁ。孤児院に寄付をしに行かないといけないしなぁ。
この温泉パンの味わいや口溶けは、そのまんま地球の蒸しパンを思い出すなあ。かなりイケる。
「
おおお!しっかり味が染み込んでいる。中はレア。火が通っていないレアではなく、低温をゆっくり通したレア。そしてこれを温泉パンに乗せて食べると…。
「うーん。ナイスマッチング。この宿、風呂と飯も最高、過ぎるじゃん」
この宿、超、当たりだよ。アンとルカの眼福な艶姿見れた上に、飯がウマいとかもう、この宿、永久保存に決定!そのうち、ロゼッタとリーゼも連れて来たい。そして4人にバスローブをだな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます