体質が弱い

 あーこを持って気がついたこと。

 それは、シェルが恐ろしく丈夫な馬だ、ってことです。

 シェルは、脚部不安でいつも悩まされてはいるのですが、体は至って健康で毛艶ピカピカ、歯がものすごく悪いのですが、そうは思えない食欲の塊で、疲れ知らずです。

 秋口にたてがみを洗ったら風邪ひいた、とか、副鼻腔炎になった、とか、あーこにやきもちで疝痛おこした、くらいの病気はありますが、毎日乗ってもへっちゃらなくらい元気です。


 ところが、あーこの場合は、疲れやすいのか、週休2日は与えないと厳しいようです。

 競馬2戦で引退に追い込まれたシェルに比べ、2勝もしているのですから、虚弱体質というわけではありませんが、そこまで丈夫でもないようです。

 体質がもう少し丈夫だったら、中央競馬でも勝てたかも知れません。


 あーこが潰れてしまいかけた直接の原因は、3日間ほど団体で乗りにきていた人たちがいて、その間、働き詰めになってしまったことです。

 生真面目でストレスを溜めやすいことも影響したのか、その後、レッスン中に激しい下痢をして、プシューッと音を立てるかのように痩せてしまったのだそうです。

 他にも跛行などの影響が出た馬がいましたが、体調を崩して、再起不能かも? と思われるほど、消耗した馬はいませんでした。

 おそらく、その前からかなり疲労が蓄積していたのでしょう。


 あーこの筋肉の質の問題かも知れません。

 鍛えるとムキムキになるようですが、運動しなくなると、げっそり落ちます。そして、いつもコリコリになるようです。

 ただ、最近面白いことに気がつきました。

 それは、シェルを歯の治療のために、麻酔をかけてもらった時のこと、麻酔からさめてしばらくして動けるようになった時のことです。

 筋肉を触ると、まるで、あーこの筋肉のような触り心地になっていたのです。そして、やはり、触ると、ピクピクとして、ブラッシングしようとすると、嫌がって尻っ跳ねして見せました。

 シェルが尻っ跳ねする時は、馬着を脱がせる時に静電気でピリッときた時くらいなので、びっくりしました。

 と、同時に、これは全くあーこの時と同じ反応だ、同じ筋肉だ! と思ったのです。

 麻酔が抜ける時に、シェルの体にどのような変化があったのかはわかりませんが、何らかの作用で、一時的にあーこの筋肉と同じ状態に変わった、ということは、何らかの方法で、あーこの筋肉痛になりやすい体質も変えることができるのかも知れません。


 レッスン馬時代に痛めてしまった前膝は、おそらく治ることはないでしょう。

 元々前肢が短めで、前のめりに走る馬で、前膝に負担がかかりやすかったのかも知れません。その上、馬房で寝転んだ時に怪我をしてしまい、以降、曲がってしまいました。

 さらに、人を乗せたまま、寝てしまう悪癖。なんの予兆もなく、いきなり前膝をデンとつくのですから、ふかふかの砂地や雪の上とはいえ、相当のダメージがあったと思います。


 前膝が曲がっていることは、蹄の形にも影響します。膝を曲げれば踵が浮く、つまり、蹄の削れ方が変わってくるのです。

 これは、蹄鉄をつけずに裸足で過ごそう、と思っているあーこにとって、重大な問題です。蹄が削れやすくなって、バランスが悪くなり、さらなる故障につながる危険性があるからです。


 前膝は、寒くなると腫れたりしますし、激しい運動をすると、プルプルと震えます。

 私が、A2の鬼にする、と思ったのは、おそらくそれ以上を目指したら、限界が来てしまうかな? と感じたからです。

 それと、これは希望的な、勝手な期待なんですが、馬場運動をすることで、後肢に加重することを覚えれば、もしかしたら、前膝への負担が軽くなり、乗馬として長らえるのではないか? などと思ったからです。

 20歳を越えて、現役でバリバリ頑張れる乗馬はたくさんいますが、あーこの場合は、20歳までなんとか現役で頑張れる体を維持しよう、が目標です。


 時々、2ヶ月間もったあの時に、ずっとあーこを持っていたら、こんなことにはならなかった……と思うこともあります。

 前膝の故障もさせなかったかも知れないし、人を乗せて寝転がる悪癖も作らなかったかも知れない。馬装で寝入ることもなく、人を噛むこともなかったかも知れない。

 でも、それはあくまでも、予想であって、現実ではありません。

 それに、あーこがこのようになってしまったからこそ、なんとかしようと思ったわけで……。

 それに、私が持ったからといって、なんとかできることと、なんともできないことがある、漫画のような奇跡の物語がそこにあるはずはないのです。

 現実を把握してベストを尽くすしかありません。


 誰にでも欠点はあります。

 でも、同時に良いところもたくさんあるわけなのですから、どうにか、体調を整えて、末長く乗馬として頑張ってほしいです。

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