金の切れ目は縁の切れ目?
サプライズ!
2021年6月19日土曜日、乗馬ライフを揺るがす事件がありました。
その日はいい天気で、クラブには人も多く、わいわいとした雰囲気。いつもと何も変わらない日のはずでした。
あえて言えば、あーこを一緒に持っているまこさんが土曜日なのに珍しくきていて、そこがいつもとは違うところ。ニコニコしていました。
「サプライズがあるよ」
と言われたのですが、それが良いことなのか、悪いことなのか。
「今にわかるから私からは言えない」
私の穏やかな乗馬ライフは、日々変わらず続いていました。
自転車で40分かけてクラブに通い、2頭の愛馬・シェルとあーこの馬房掃除をこなし、運動をさせる。時にコーヒーブレイクをとり、乗馬仲間と語り合う。
満ち足りた乗馬ライフです。
でも、実のところ、大きな問題をいくつか抱えていて、何かその解決の糸口なのか? と期待していました。
大きな問題の一つは、私にとってはかけがいのない馬、シェルのことです。
ずっと調子がおかしくてもう引退を考えなければならないのでは? と思うほど、悩んでいました。
乗れば明らかにおかしいのですが、誰も変だと思ってくれる人がいなくて、むしろ、いい状態なのに私がしっかり乗り込んでいない、と思われていました。
これは、このクラブではもう慣れっこで、自分を信じるしかないのですが、故障馬について何もアドバイスを受けられないというのも、辛いところです。
速歩はいいのですが、駈歩はかなり悪くほとんど出来ない、常歩が非常に悪く、馬場に行く坂道があるのですけれど、真っ直ぐ降りることができず、横向きで歩く状態です。そして、時々、駈歩中に、腰が消えてしまったかのような錯覚を覚えたのでした。
どんどん調子が悪くなるのと比例して、背中をこわばらせたり、運動を嫌がったりするようになって、休ませることが多くなったのです。
引退の文字が頭によぎりながらも、シェルはまだまだ若い、まだまだできるはず……と自分に言い聞かせては、それは現実から目を背けているだけなのでは? と、悩んでいました。
1頭の馬と向き合うのは、満ち足りていますが、時にとても孤独でストレスがかかることでもあります。
シェルは、インストラクターと二人三脚でやってきた馬ではなく、私が一人でなんとかやってきた馬です。だから、シェルの状態を把握できている人は私しかいませんでした。
もう一つ、抱えていた大きな問題は、あーこの維持について、です。
あーこは、私が乗りたくて持った馬ではありません。救いたくて持った馬です。
取り急ぎ持ってしまったため、経済的に最初から切迫していて、貯金を切り崩すつもりで持ちました。が、その後、共同馬主になってくれた人たちがいて、なんとか持ち続けることができていました。
ところが、あーこが故障がちで満足に乗れなかったため、一人抜け、そして、ずっと一緒に持ってくれていたまこさんも、この7月で単身赴任していたご主人の元に行くということで、離れることが決まっていたのです。
とりあえず最初の予定通り貯金を切り崩せば1年間はなんとかなる。
でも、その後はどうしたらいいんだ? なるようにしかならないのか?
まこさんは、自分の代わりに誰か一緒に持ってくれる人を探してくれていました。だから、サプライズはその人がオッケーしてくれたのか? とも期待しました。
故障がちで満足に乗れないと離れていった人が目の前にいるのに、他の人がそんな馬の共同馬主になってくれるとは、なかなか難しい話なので、半分諦めていたのです。
私は、サプライズを良い方向に考えていました。
でも、残念なことに、絶望的なサプライズでした。
クラブスタッフから封書を手渡されました。
その内容は……。
10月より預託料を値上げする、しかも、一気に1頭につき3万円も!
これは、本当にサプライズです!
つまり、2頭持っている私は、10月から今よりも66000円も余分に支払わなければなりません。
色々経費が上がっているとはいえ、一気に3万円とは? この値上げで、シェルを持った10年前の倍の預託料になってしまいます。
思わず頭がくらくらしてしまいました。
「それで……値上げにあたって、サービス面での向上とか、何かあるんですか?」
「そんなものありませんよ、今までと変わらないです」
これで、私の考えは固まりました。
10月までに、このクラブを2頭を連れて出ていかなければならないと。
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