3. 砂糖も確保
自動採取の仕組みができたので、卵の確保はゴーレムに任せよう。次に僕らが狙ったのは砂糖。言うまでもなく、お菓子作りには欠かせない食材だ。
「えっと、あれがそうなの?」
ターゲットらしき魔物をやや遠くに見つけて、僕は尋ねる。隣にいたアレンはニッコリと頷いた。
「はい! あれがシュガーマンです」
見た目は、雪だるまそっくりだ。白くて丸いボディの上に、同じく丸い頭が乗っている。手足はないけど、ぴょんぴょん跳ねて移動するみたいだ。
「シュガーマンは砂糖の塊をドロップする。でも、ほんの一かけ」
すかさず、シャラの解説が入る。それによると、エッグトレント同様、ドロップアイテムには期待できないみたい。なんでも、こんぺいとうくらいの砂糖の塊が得られる程度なんだって。それは本当にしょぼい。砂糖は比較的高価とはいえ、それじゃ、稼ぎにはならない。
だけど、シュガーマンと戦う人はそれなりにいるみたい。収入のためというより、おやつ代わりらしいんだけどね。
「おやつってどういうことなの?」
「こういうことです!」
尋ねると、アレンが単独でシュガーマンの前に飛び出した。慌ててプチゴーレムズの面々が彼を追いかける。
「あ、ずるいよ、アレン」
「抜け駆け厳禁」
「私も、私も!」
どうも戦いのためって感じじゃないね。
一方で、アレンたちの存在に気づいたシュガーマンは臨戦態勢に入った。少し身を屈めたかと思うと、作り物めいた口をぱかりと開け何かを吐き出したんだ。
目潰しだろうか。白い砂のようなものが散布される。アレンたちは思いっきりその範囲内だ。少し心配したけど、すぐに杞憂だと判明した。プチゴーレムズの口から飛び出たのは悲鳴じゃなくて歓声だったから。
「あま~い!」
あの白い砂、どうやら砂糖みたいだね。
『あ、ずるいぞ! 僕も、僕も!』
気がついたシロルが、慌てて駆け出す。だけど、一足遅かったみたい。シロルが駆けつける直前で、砂糖ブレスがとぎれちゃったんだ。
『ぬぁぁ! がんばれ! もっと砂糖を出すんだ!』
シロルが励ますけど、シュガーマンはぜぇはぁと肩で息をするばかり。連続してブレスを放つことはできないみたいだね。
「という感じで、よく農家の子供がおやつ代わりにしているんですよ」
くるりと振り返ったアレンの顔は真っ白だった。彼だけじゃなくて、プチゴーレムズ全員だね。酷い顔だけど、ニコニコ笑顔が浮かんでる。一方で、砂糖にありつけなかったシロルは悔しそうだ。
『ぬぉお! こうなったら!』
突然、シロルがアレンに飛びかかった。不意を打たれたアレンが、体勢を崩して地面にへたり込む。
「ちょ! や、やめろぉ!」
『おお! 甘いぞ! 甘い!』
うわぁ……シロルがぶんぶん尻尾を振りながら、アレンの顔をなめ回している。砂糖はとれたけど、代わりに唾液でべとべとだ。それを見たミリィたちはすぐに顔をごしごしとこすりだした。唾液まみれを回避するために必死だ。
「一回のブレスでも、結構な砂糖が確保できそうだね」
アレンたちが全身で受け止めたのは、ブレス全体の一、二割ってところだと思う。それ以外の砂糖は、ダンジョンの床にぶちまけられて、いつの間にか消えていた。それら全てを確保できればそこそこの砂糖が集まりそうだ。
「ここはやっぱり、トルトのゴーレムの出番だね!」
「たくさん集められそう!」
「あはは、そうだね」
ハルファとスピラの言うとおりかな。お菓子作りでは結構な砂糖を使うから、できるだけ大量に確保しておきたい。とはいえ、シュガーマンがブレスを放つ間隔はかなり長そうだ。それを悠長に待っているのは時間の無駄。だったら、ゴーレムを使って自動化した方がいい。
「うーん、どんなゴーレムにしようか」
対エッグトレント用のゴーレムと同じ構造でもいいけど、砂糖のブレスは広範囲に広がる。そのままだと少し採取効率が悪そうだ。
「どうせならボックス型にしようかな」
シュガーマンは小さい。小さいと言っても僕と同じくらいの背丈はあるけど、それくらいのサイズなら、収納できるゴーレムを簡単に作れる。
クリエイトゴーレムで、縦横高さが2mくらいのボックスと、その下に台座となる部分を作る。ボックスの上部は開閉可能だ。あと、今回のゴーレムにはちゃんと手がある。
「さあ、シュガーマンを捕まえるんだ!」
「――!」
僕の指示で、ボックスゴーレムがにょろっと長い手を伸ばした。ブレスの疲労で未だに動きが鈍いシュガーマンを捕まえると、上部の蓋をあけ、その中に格納する。
「箱の中に入れるだけで大丈夫かな?」
「大丈夫だよ、ハルファ。中に囮役のゴーレムを配置するから」
箱自体がゴーレムだから、シュガーマンにとっては敵なんだけど、ひょっとしたら認識できないかもしれない。だから、箱の中に囮役のゴーレム――というかボックスゴーレムの一部なんだけど――を配置してある。シュガーマンが回復したら、その囮ゴーレムに向けてブレスを放つだろうから、それを回収すればいい。
これで砂糖も確保できそうだね。
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