第六部 異神退散
1. 食いしん坊、集結
中立国ラフレスの話を作る予定でしたが
面白げな展開が思いつかなかったので考え中です。
少し時を戻してほのぼのパートをはじめます。
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石鎧たちを倒したあと、僕らはバディスさんに市長を任せたダンジョン都市に戻ってきた。この街、何故か、名前がゴッドトルトになっちゃってる。もちろん異議は唱えたけど、すっかり定着しちゃってどうにもならなかったよ……。
まあ、名前はともかく、冒険者が集まって活気が溢れる街になっている。隣国レブウェールとの商取引なんかも始まっているから、これからますます賑やかになりそうだね。
バンデルト組、エルド・カルディア教団。銀勢力の残党なんかはまだ残ってそうだから、それらの排除はやっておきたいのだけど……それにはちょっと時間がかかりそうだ。というわけで、少しの間、この街で骨休みでもしようと思っている。
そんなある日のこと。マジックハウスの自室でゆっくりしていたら、突然、ハルファがやってきた。
「ねえ、トルト。新しいお菓子を教えてよ!」
「え、急にどうしたの?」
「急じゃないよ。アイスクリーム屋さんとしては十分に経験を積んだんだから」
ハルファが腰に手をあて、胸を反らせる。ニコニコ笑顔で誇らしげだ。
実際に実績はある。以前、料理コンテストでは優勝していたし、それ以来、色んなところでちょくちょくお店を開いている。大抵は無料提供なので、お店と言っていいのかはわからないけど。
「教えるのはいいんだけど……どんなお菓子がいいかな?」
「それはもちろん、甘いの! お菓子はやっぱり甘くないと駄目だよ!」
両手の拳を突き上げ、ハルファが主張する。
まあ、わからないでもないけどね。お菓子と言えばイメージは甘い物。アイスクリーム以外にも食べたいものは色々ある。ケーキでしょ、パフェでしょ……和菓子もいいかもね。どら焼きとか食べたいなぁ。
でも、個人的にはスナック菓子も捨てがたい。お煎餅とかもいいね。醤油はあるし、よく考えればダンジョンからお米も採れる。頑張れば、作れそうな気がするなぁ。
「トルト? トルト、ねえ、大丈夫?」
気がつけば、ハルファが僕の顔をのぞき込んでいた。食べたいお菓子に思いを馳せていたらぼうっとしていたみたい。
「ごめんごめん。何がいいかなって考えてたら、色々思い浮かんじゃって」
「ホントに! じゃあ、作り方、教えてくれるの?」
「もちろんだよ」
「やった!」
請け負うと、ハルファは僕の手を取ってぴょんぴょんと跳ねた。連動するように背中の羽がぱたぱた動く。
「じゃあ、食堂に行こう! スピラちゃんも待ってるから!」
「うん……って押さなくても歩くよ」
「いいからいいから!」
ご機嫌なハルファに背中を押されながら食堂に向かう。そこには当然スピラがいたわけだけど、それだけじゃなかった。食いしん坊たちが待ち受けていたんだ。
『話は聞かせてもらったぞ!』
シロルがテーブルの上に立ち、凜々しい顔つきで告げる。隣に立ったピノも自分の胸をぽんと叩いた。
「味見役なら任せてよ!」
ピノだけじゃなくて、アレン、ミリィ、シャラもいる。ピノが目立って見えるけど、プチゴーレムズは全員食いしん坊だ。他三人は少しだけ遠慮があるけど、それでもこういうときにはちゃっかり参加している。「いや、ピノには困ってるんです」みたいな顔してるけど、目がキラキラしてるし、食欲が隠し切れてないんだよね。別に、隠す必要もないんだけど。
「新しいお菓子を作るって話したらこうなっちゃって……」
スピラは苦笑いだ。でも、シロルとピノに話したらそうなるよね。
もちろん、彼らを仲間はずれにするつもりもない。試作したら、味見はしてもらう予定だったし。
「でも、これだけ人数がいるなら、いろいろ作ってみるのもありかもね」
『おお、色々食べられるのか!』
「やったね~! どんなお菓子が食べられるんだろう~」
僕の言葉に、シロルとピノが歓声を上げる。“作る”って言ったのに、すっかり“食べる”に変換されちゃってるのが二人らしい。作るのも楽しいんだけどなぁ。
「で、何を作るの、トルト!」
「ふふ、楽しみだねぇ。どんなお菓子なのかな?」
ハルファとスピラは食べるのも好きだけど、作るのも好きだ。二人は、新しいレシピに興味津々みたい。
「色々考えてるけど……その前にせっかくだから、材料を取りにいかない?」
ここのダンジョンは神様たちの合作だ。第一階層は大地神様の影響を受けて、様々な食材が手に入る。せっかくだから、確保しておきたいよね。
「うーん、そうだね。確かに、ちょっと素材が心許なくなってきているし」
「卵も確保しておきたいよね!」
二人にも異存がないようだ。
食いしん坊たちにも働いてもらおう。料理は作れなくても、ダンジョンから素材を集めるのはできるからね!
というわけで、いざ、ダンジョンへ!
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