追加注文入りま~す

 用意した果物をある程度の大きさに切ってから圧搾機にかける。ギギギとちょっと不安になるような音を立てているけど、どうにか機能しているみたいだ。ぼとぼとあふれる果汁は、圧搾機の下に置いた容器が受け止めている。


『おお!』


 容器を食い入るように見つめていたシロルが歓声を上げた。目をキラキラ輝かせて尻尾を振る姿は可愛いけど……盗み食いを警戒して抱え上げておこう。念のためね。


 果汁を絞っている間に、ソフトクリーム作りは進んでいる。妖精サイズに合わせてミニソフトだけど、それでも妖精たちにしてみれば大きいはず。容器は妖精たちが持参した葉っぱをカップ状にしてるみたい。


「冷たいし甘いわ! こんなに美味しいものがあったのね!」


 ロロを筆頭に妖精たちはみんな気に入ったみたい。中には踊り出している妖精もいる。ずいぶんと気に入ってくれたみたいだね。


 ソフトクリームの材料が終わったら、次はシャーベットだ。魔道具をクリーンで綺麗にしてから材料をセット。スピラに氷を追加して貰ってから魔道具を起動させれば、後はできあがるのを待つだけでいい。


 待つこと少々。出来は……うん、悪くない。ちょっと酸味があるところが、またいいね。


「こっちも美味しいわ~!」


 ロロがくるくると回りながら、シャーベットを褒めるとソフトクリームを食べ終えた妖精たちが我先と魔道具の周りに集まりだした。


『美味しいぞ!』

「本当だね~」

「ね~!」


 妖精たちに配りながらも、ちゃっかりと自分の分を確保したハルファたち。仲間たちの評価も悪くないみたいだ。


 そんな中、ローウェルだけがただ黙々と作っては配ってを繰り返している。あいかわらず真面目だね。妖精たちの勢いを見ると、食べ尽くされちゃいそうなので、ローウェルの分はこちらで確保しておこう。収納リングに入れておけば溶けちゃう心配はないからね。


 予想通り、妖精たちはソフトクリームもシャーベットも綺麗に食べ尽くした。まあ、花の妖精だけでもかなりの人数がいるからね。ロロが美味しい美味しいと絶賛するたびに、どこからともなく現れて、今ではたぶん100人はいる。いや、花畑に転げて遊んでいる子もいるからその倍はいるかも?


 とはいえ、結構な量を作ったし、なにより妖精はプチゴーレムズと同じくらいの手乗りサイズだ。みんな満足できるくらいには食べられただろう。そう思ったのに――


「えっ、まだ食べるの!?」

「だって美味しいんだもの。もしかして、対価のもらいすぎかしら?」


 単純に食べ過ぎを心配したんだけど、ロロはそうは受け取らなかったみたいで周囲の妖精に呼びかけた。


「みんな! 珍しいお花を探すのよ! 草でもいいわ! そうすればもっとアイスクリームが食べられるのよ!」


 呼びかけの効果は抜群で、近くで遊んでいた妖精たちが一斉に散った。たぶん、採取に向かったんだと思う。


 そういうことなら、ソフトクリームを作り足しておかないと。そもそも、市場価格でいえば、ゴルドディラを数株でソフトクリームとかの代金は十分賄えちゃうからね。さらに追加で素材が貰えるなら、こちらも全力で提供しないといけない。


 結局、僕たちの持っている材料を全て使ったところで、ようやく妖精たちは満足してくれた。本人の体積以上食べたんじゃないかと思うんだけど、みんなケロっとしているのが凄い。妖精って不思議な生き物だね。


 僕は僕で貴重な素材がたくさん確保できた。妖精たちは素材としての価値がわかっているわけじゃないから、中には珍しいだけで使いようのない植物もあったけどね。


 とはいえ、得るものが多い訪問だった。プチゴーレムズがいれば行き来できるみたいだから、素材が不足してきたらまた来たいね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る