鉄鉱石の採掘

「よーし、みんなここで採掘だよ! よろしくね!」


 居並ぶ四体のプチゴーレムたちに指示を出すと、それぞれが「ピコ!」という音で返事をする。喋れるようにならないかと、色々と改良しているんだけどまだ実現はできていない。復唱はできるんだけどね。代わりに……と言っていいか分からないけど、何故かピコピコ音を出すようになった。ピコが肯定で、ピコピコが否定というルールにしたから、意思疎通はしやすくなったね。


 僕たちがいるのは第七階層。ここで鉄鉱石が掘れるんだ。第三階層でも鉄鉱石が掘れるポイントがあるんだけど、そっちは街の住人用。一方、第七階層の採掘ポイントは勝手に使っていいみたい。といっても、鉱山として整備されているわけじゃないから、適当なところで掘ってみるしかないんだよね。とはいえ、僕たちには物探し棒がある。大体の場所がわかるから、無駄な穴掘りをする必要はない。


「プチゴーレムたち、大きくなったね!」

「動きも速くなったよね」


 ハルファとスピラがプチゴーレムズを見てはしゃいでる。最近、身体強化系の魔法を常時発動しているおかげで、無魔法のレベルがかなり上昇した。街の外では意味も無くストーンウォールを連発したりしてるから、土魔法の伸びもそこそこ。おかげで、ゴーレムの性能が向上した。


 例えば、それなりに大きなゴーレムを作れるようになった。まだまだ巨大とはいえないけど、僕よりは大きい。だいたいローウェルと同じくらいの背丈があるかな。形状はずんぐりむっくりのロボットみたいな形になっている。本当はもっと人間みたいなスタイルにしたいんだけどなかなか難しい。創造力が足りないと言うよりは、単純に僕のセンスの問題かもしれない……。


 そういうわけで全然プチではなくなったんだけど、未だにプチゴーレムと呼んでいる。プチ一号からプチ四号までのグループ名という感じだね。これは、自我を持たないゴーレムたちと区別するために使っている。


 実は、自我のない、命令だけを忠実に守るゴーレムも作れるようになったんだ。そういうゴーレムはシロルにも思念伝達ができないみたい。危険な実験は彼らの役割だ。なんだったら、自爆特攻だってする。ちょっと申し訳ないけど、有効な攻撃手段だからね。


 あと、無魔法のレベルが上がったことで、ゴーレムたちの動きもだいぶ改善された。まだまだ素早いとはいえないけど、作業スピードはなかなかのものだ。力は僕よりも断然強いので頼りになる。


 鉄鉱石は、プチゴーレムズのボディを鉄製にするために使うつもりだ。精錬にはクリーンが使える。鉄以外はゴミだと思って使えば、鉄しか残らない。ただ、純度の高い鉄になるから、丈夫というわけでもないんだよね。鋼にするには炭素を混ぜないといけないらしいけど……その辺はよくわからないので、鍛冶屋さんにお願いすることになるかな。ひょっとしたら、炭素と鉄を用意して、鋼ゴーレムを作ろうとしたらできちゃうかもしれないけど。


「ピコ~……」


 プチ四号が弱々しい声を上げた。マナが少なくなってきたんだね。


「あ、私が補充するよ」

「ハルファちゃん、あたしも~!」

「お願いね~」


 ハルファたちがマナの補充をしてくれるということなのでお願いする。

 マナが切れるとプチゴーレムの魂とも言える自我とボディとの繋がりが切れてしまう。これを防ぐために、途中でマナを補充できる機能もつけたんだ。マナの補充は僕以外にもできるので、みんなが定期的にやってくれている。魔道具みたいに、魔石から魔力を吸い出せるようにもしてあるから、Dランク以下の魔石を自分たちで確保してるみたい。非常用のおやつみたいな感じだ。


 ボディの乗り換えもできるようになった。今は作業用の大きいサイズだけど、街に同行するときは以前のプチサイズよりもさらに小さいコンパクトサイズにもなれる。なので、プチゴーレムズは最近出しっ放しの状態だ。


 さて、鉱石の採掘はプチゴーレムズの仕事。僕たちは、ただただそれを眺めているだけなんだけど、ダンジョンの中なのでときどき魔物も出る。


『お、魔物だぞ!』


 寝そべって尻尾を振っていたシロルが、ふいに頭を持ち上げてそう言った。第七階層の魔物だからDランク相当。油断がなければ遅れをとるような相手ではない。


「俺が行こう」

「あ、待って。ちょっと試したいことがあるんだ」


 一人で対処しようとしたローウェルを制止する。ゴーレムに関して試したいことがあるんだよね。


 しばらく待っていると、魔物が姿を現した。ブラックライオン。俊敏でDランク帯の中では強めの魔物だ。


「〈ファイアボール〉〈クレイエイトゴーレム〉」


 二つの魔法を連続して使う。ファイアボールは、サリィがよく使ってた魔法だね。火弾を敵にぶつける攻撃魔法だ。生み出した火弾を少しの間制止させておいて、これを鳥形のゴーレムにする。敵にぶつけるので、自我を持たないタイプだ。


 魔法の火だからなのか、ファイアボールを変形させたゴーレムは普通に空を飛ぶ。そして、自我を持たないけど、指示には従う。敵にぶつかれと言えば、マナが切れるまでは敵に向かって飛び続けるんだ。つまりファイアボールにホーミング機能がついたわけだね。


 ブラックライオンが避けても、火の鳥ゴーレムはそれを追いかける。三体ぐらい出したところで、ブラックライオンの回避性能も限界が来たようで、一体の火の鳥ゴーレムに接触。これに足が止まったブラックライオンに、残りの二体が追い打ちを掛けた。それで、ブラックライオンの生命力は枯渇。こちらにたどり着くこともできず消滅した。


「あいかわらずトルトはとんでもないな。戦いくらいでは役に立つと思ったがこれでは……」


 隣で見ていたローウェルが呟く。

 なんだか最近、自分の戦闘力不足を気にしてるみたいなんだよね。でも、全然そんなことはない。ローウェルが前衛を担ってくれるから、パーティーが安定しているんだからね。近接攻撃の殲滅力はローウェルが一番高いし。戦闘以外でも、情報収集や事前準備なんかを積極的にやってくれるから本当に助かっている。


 一応、機会があれば伝えているつもりなんだけど、本人が気にしてしまうのはどうしようもない。


 それよりも――


「やはり……筋肉が必要なのか……しかし……」


 追い詰められすぎて、筋肉に縋り始めた気配があるんだよね。鍛えるのはいいけど、マッソさんみたいに暑苦しくなるのはちょっとなぁ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る