ゴーレムを改良しよう3
空気で作ったゴーレムは見えないけど、確かにそこにいる。そして、
といわけで、ヘリウムゴーレムを布で包んだらどうなるか試してみようと思う。まずは、さっきと同じように瓶の中にヘリウムガスを注入。このヘリウムをゴーレムにする。空き瓶から出られないと困るので、イメージするのは柔軟に身体を変形させられるスライム型のゴーレムだ。アレンジ項目が多いせいか、少し魔法の制御が難しかったけど、発動には成功した……と思う。見えないからよくわからないけど。
「プチ一号、そのままじっとしててね」
魔法が成功していると仮定して、次の準備。空き瓶を地面に横倒しにして、その瓶の口に適当な布きれを被せた。
「これでよしっと! それじゃあ、プチ一号、瓶から出て布を掴んでくれる?」
指示を出すと、すぐに瓶に被せた布がふわりと浮かんだ。
『おお、本当に浮かんでるぞ! これが浮かぶ空気か』
「凄いでしょ。……おっと、プチ一号、あんまり高くまでいかないようにね」
話している間にも、プチ一号と布きれはゆっくりと浮かび上がっていく。慌てて指示を出すと、布きれがバタバタと暴れ始めた。たぶん、プチ一号がもがいているんだと思うんだけど……あれ、もしかして下りてこれない?
あっ!?
浮力を制御する機能なんてないから、当たり前か!
「うわぁああ、プチ一号!」
『なんだ……? まさか下りてこれないのか!』
まずい、このままだと、プチ一号が空の彼方まで旅立ってしまう! いや、ダンジョンの中だから、どこかで上側の限界点がくるはずだけど、下りてこれないことには変わらない。
「そうだ! プチ一号、身体をぎゅっと縮めて! 限界まで身体を小さくするんだ!」
ヘリウムを封入された風船や熱気球が浮かぶのは、体積辺りの重さ――つまり密度が周囲の空気より低いからだ。幸いなことに、今回イメージしたのはスライム型ゴーレム。比較的自由に身体を変形させることができる。ぎゅっと縮こまれば多少は体積を小さくできるはず!
『おっ? おっ? ゆっくりだけど、下りてきたぞ』
狙いが上手くいったみたいで、ちょっぴり密度が高まったプチ一号は浮力の減少により布の重量を支えきれなくなり、ゆっくりと下降し始めた。風の影響か、落下予想地点は少し離れた場所だ。歩いて移動していると、ちょうど布きれがふわりと着地したところだった。布きれの中央付近がこんもりと盛り上がって、もぞもぞと動いているから、プチ一号も無事だったんだと思う。
「ごめんね、プチ一号。大丈夫だった?」
尋ねると、布きれが何か応えるように動く。うん、わかんないや。
シロルに視線を向けると、仕方ないと言った様子で通訳をしてくれた。
『身体を動かしても浮かんだ。怖かった……と言ってるぞ!』
「あはは……そうだよね」
こういう初めての試みにプチゴーレムたちを付き合わせるのは可哀想な気がする。特に一番最初に出てくるプチ一号の被害が大きい。できれば、どうにかしてあげたいんだけど。
おっと、それを考える前にプチ一号をどうにかしないと。このままじゃ油断するとまた飛んでいってしまう。このままの状態でクリエイトゴーレムで素材を変えられないかな。
とりあえず、素材を土に変えて、いつものプチゴーレムになるように意識して魔法を使う。何となく風魔法と土魔法、そして無魔法が同時に発動しているような感覚がある。その分、制御も難しいけど、なんとか成功させることができた。
馴染みのある埴輪ボディに戻って、プチ一号はホッとしているようだ。汗なんてかかないのに額を拭う仕草をしている。こういう何気ない仕草が人間っぽいから、なおさら無理はさせたくないよね。
まあ、それはおいおい考えよう。今日の実験はとても有意義だった。まずエアジェットが凄く凶悪な魔法になりそうな気がしている。今日はメタンとヘリウムを試したけれど、これって毒ガスを発生させることもできるんじゃない? 僕がイメージできない気体は難しいかもしれないけど、一酸化炭素くらいなら出せる気がする。火事の現場では、下手したら火そのものよりも危ないガスだ。あんまり覚えてないけど、一酸化炭素中毒になると、酸素を上手く取り込めずに呼吸困難になるんだったかな。
魔物の種類にもよるけど、少なくとも獣型の魔物なんかは呼吸してるはず。高濃度の一酸化炭素を吹きかけたら、簡単に倒せちゃうかも。まあ、僕たちの安全確保も必要だから、そのまま使うわけにもいかないけどね。
それに、ヘリウムゴーレムもうまく運用できたら凄いことができそう。今回のスライム型よりも自由に身体を変形させられるゴーレムが作れたら、膨張と収縮によって浮力もコントロールできるはず。十分な体積のヘリウムゴーレムが作れたら、飛行船だって作れそうじゃない?
うーん、夢が広がるよね!
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