ゴーレムを改良しよう2

 それから、数日、新しい魔法を覚えたりゴーレムの活用方法について試していた。さすがにみんなを付き合わせるのもどうかと思ったので、初日以降は自由行動にしている。今日はシロルだけが一緒だ。


 新たに覚えたのは、まずパワーとスピードという二つの魔法。どちらも無魔法で身体強化魔法の一種だ。初級魔法なので効果は控えめ。その分、消費マナもわずかだから、街にいる間もずっと使っている。最初は効果が切れるたびにかけ直していたんだけど、正直これがちょっと面倒くさい。なので、効果が切れた時点で僕のマナが残っている場合、自動的に効果が維持されるようにアレンジした。成功したのは、たぶん【創造力】のおかげだろうね。


 これによって、寝ている間も魔法が更新されるようになったので、使用回数がかなり増えた。おかげで、この短期間で無魔法のレベルも結構上がっている。魔法の維持でマナがかなり持って行かれるから、他の魔法が使えなくなる問題はあるけど、街にいる間のトレーニングとしてはいいよね。


 あとは、ゴーレム強化のために土魔法も本格的に鍛えることにした。訓練用に習得したのはストーンウォール。石壁を生成する魔法。敵の攻撃を防ぐというよりは、敵から攻撃される方向を限定するという使い方になるかな。あと、足下に使うと、隆起した石壁の上に乗れる。アレンジして小部屋くらい正方形の壁を足下に生成すれば、簡単に高所をとれる。飛べない魔物相手なら、かなり有利に戦えそうだ。


 最後にもうひとつ覚えたのが風魔法のエアジェット。効果は単純で勢いよく空気を噴出するだけ。殺傷能力はないけど、噴射の勢いはすさまじい。目を開けてはいられないし、小柄な人だと吹き飛ばされてしまうほどだ。魔物相手に有効かどうかはちょっと微妙だけど、鳥形魔物にうまく当てればバランスは崩せるかも知れない。


 このエアジェットがおもしろいんだよね。どうも周りの空気を吸い込んで噴出しているわけじゃなくて、新たに空気を作り出しているみたいなんだ。水の中で使っても、ぶくぶくと勢いよく噴射されるからね。


「というわけで、エアジェットの実験です」

『むぅ? 空気が出るだけの何が面白いんだ?』


 どうやら、シロルにはこの魔法のおもしろさが理解できないようだ。まあ、でもすぐに分かると思うよ。


「今からアレンジしたエアジェットを使うから、これを発動させたまま近づけてもらえる? あ、シロル自身は離れててね」

『わかった!』

「じゃあ、いくよ。〈エアジェット〉」


 魔法を発動すると、伸ばした手の先から勢いよく気体が吹き出る。そこに、シロルが念動で魔道具を近づけた。着火の魔道具だ。


『ふぉぉぉ! なんだ! どうしたんだ!』


 魔道具の発する炎に触れた途端、吹き出る気体が燃え上がる。まるで火炎放射だ。


 そう、僕がエアジェットによって噴射しているのは可燃性のガス。イメージしたのはメタンだ。狙い通り、アレンジによって発生する気体を変えることができた。


「って、熱ぅ!!」


 慌ててエアジェットを中断して、クリエイトウォーターを発動する。火が近すぎて、軽くやけどしちゃったみたい。


『おい、大丈夫か?』

「うん、大丈夫。ちょっとやけどしたけど、ファーストエイドで治る程度だね」

『気をつけろよ! というかあんなになるなら、言っておけ!』


 あはは……。シロルを驚かせようと思ったんだけど、たしかにちょっと危なかったね。


「ごめんごめん。でも実験は成功だったね」


 やけどに関してはちょっと離れたところで発動するようにすれば問題ない。どっちかといえば、一人で火をつけられないのが不便だ。火魔法を覚えたら、どうにかできるかな?


『で、いったい、どんな仕組みなんだ?』

「なんて言えばいいのかな……燃えやすい空気を出したんだよ」

『ほー? そんな空気があるんだな、知らなかったぞ! 他にはどんな空気があるんだ?』


 他にかぁ。あんまり詳しくはないんだよね。水素だったら爆発するはずだけど。

 ……いや、爆発させるよりもおもしろいことができるかも? 水素は空気より軽い。上手く集められれば浮力が得られるはずだ。


 さっそく試してみよう。水素は危ないからヘリウムにしようかな。


 用意するのはジンジャエールを作ったときの空き瓶。つまり、プチ一号の抜け殻だ。口を下に向けた状態にして、っと。


「瓶の中に直接噴射できないかな?」


 物は試しってことで、やってみることに。勢いは弱めに調整して魔法を発動。通常よりも制御しづらい感じだったけど、瓶の中に直接ヘリウムガスを噴射することができた。


「さあ、もう十分かな。いくよ」

『お、おお?』


 空き瓶を持つ手を離すと……瓶はそのまま落下した。

 やっぱり無理があったか。


『何が起こったんだ?』

「ごめん。何も起こってないよ。浮かぶ空気を注入したんだけど、瓶を浮かすほどの力がなかったみたい」


 やるとするなら、軽い容器に大量のヘリウムガスを注入しないと駄目かな。熱気球みたいに空気を暖めるのもいいかもしれない。そもそも気密性が高い容器を用意するのが難しいんだよね……。


『浮かぶ空気って何だ? 空気は浮かんでるんじゃないのか?』

「まあそうなんだけどね……」


 実際に見せてみないと説明は難しい。風船でもあればいいんだけどね。


 ん-、ヘリウムガスが発散するのが防げればいいわけだから……ゴーレムにしたらどうなるかな?


――――――――――――――――――――――

名 前:トルト

種 族:普人

年 齢:12

レベル:23

生命力:158/158 [5up]

マナ量:143/143 [5up]

筋 力:76 [2up]

体 力:85 [3up]

敏 捷:99 [3up]

器 用:128 [5up]

魔 力:124 [4up]

精 神:101 [4up]

幸 運:131 [1up]


加護:

【職業神の加護・迷宮探索士】


スキル:

【運命神の微笑み】【短剣Lv21】[1up]

【影討ちLv20】[1up]【投擲Lv10】

【解錠Lv11】【罠解除Lv11】

【方向感覚Lv14】[1up]

【バランス感覚Lv7】[1up]

【調理Lv17】[1up]【調薬Lv15】[2up]

【光魔法Lv14】[1up]【水魔法Lv13】[2up]

【闇魔法Lv17】[1up]【無属性魔法Lv14】[5up]

【風魔法Lv11】[2up]【土魔法Lv7】[5up]


特 性:

【調理の才能 Lv1】【強運】【器用な指先 Lv1】

【魔法の素養 Lv2】【創造力 Lv3】


魔法:

〈クリーン〉〈ファーストエイド〉

〈クリエイト・ウォーター〉〈デハイドレイト〉

〈ディコンポジション〉〈ナイト・ヴィジョン〉

〈シャドウハイディング〉

〈シャドウリープ〉

〈ブリーズ〉〈ウインドカッター〉

〈シュレッディングストーム〉

〈エアジェット〉[new]

〈ストーンウォール〉[new]

〈ディテクト・マジック〉

〈クリエイトゴーレム〉

〈パワー〉[new]〈スピード〉[new]

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