鍵開けショータイム
ダンジョン内だけど自己紹介タイム。
レイは騎士の加護を持つ守備的な前衛。敵の攻撃を引きつけて盾で防ぐのがその役割。もちろん、チャンスがあれば攻撃もするんだと思う。鎧はレザーアーマーがベースだけど、金属で補強してあるから頑丈そうだ。ゴブリンバットの一撃くらいなら、平気で耐えれそう。
ミルは攻撃的な前衛。加護は剣士だ。一撃の威力よりも、手数で圧倒するタイプかな。手にした剣はやや細みに見える。僕のナイフとは比べるのも失礼になるほど立派な作りだ。
魔術師ルックのサリィは後衛。加護はやはり魔術師だ。魔法のスクロールも使うけど、すでに幾つかの魔法を習得しているみたい。主に攻撃魔法らしい。正直、ゴブリン相手だとオーバーキルだよね。
こうしてみると、この三人、装備が立派過ぎる。ちょっと駆け出し冒険者が用意できる範囲を超えている気がするね。年齢やダンジョンに入る前の様子を考えると間違いなく駆け出しなんだけど、裕福な家の子なのかな?
ちなみに僕の加護である迷宮探索士は少し珍しいみたいで驚かれた。普通は盗賊とか斥候の加護持ちが解錠や罠解除を担うんだって。
盗賊……。
窃盗犯の加護じゃなかったのか。誤解してごめんよ。
あと、〈クリーン〉が使えることをアピールしたら、女性陣に喜ばれた。やっぱり、あると便利だよね。サリィも習得しようと何度かスクロールを使ったようだけど、まだ習得できていないみたいだ。
さて、簡単に自己紹介を済ませたあとは、いよいよお待ちかねの宝箱の開封タイムだ。宝箱は割と大きくて、そして重い。これはどんな中味でも、そうなんだって。たとえ、スクロールのような巻物ひとつしか入っていなくても、力自慢でも運ぶのが厳しいような重く感じるみたい。そのおかげで、僕みたいな解錠技能持ちの冒険者が重宝されるわけだね。
「それじゃあ、早速開けるけど、本物の宝箱を開けるのは初めてだから、ちょっと離れてて。特に正面は危ないよ」
「おいおい、大丈夫なのか。思ったよりも危険なんだな」
「だから言ったでしょ。技能も無しに開けようなんて無謀だって」
「そうだよ。トルト君が来てくれ良かったよ」
「悪かったよ……」
どうやら、レイが【解錠】スキル無しに宝箱を開けようと主張して、他の二人止められていたみたいだね。
「このダンジョンの低階層では、あまり致命的な罠はないみたいだけど、それでも毒針だったり、麻痺ガスは出るみたいだから備えもなしに開けるのは危ないよ」
宝箱を開けたくなる気持ちはよくわかるけど、僕からも釘を刺しておく。せっかくの宝箱を前にして、全滅とか悲しすぎるからね。こういうときこそ、慎重に。
レイにああ言った手前、僕も慎重にならないと。すぐに使えるように、毒消し、麻痺消しの丸薬は手元に用意しておく。
宝箱の全体を観察して不審なところがないか見極める。特に細い糸が張ってあったら、まず罠が仕掛けられている。けど、今回はないみたいだな。
宝箱の中には魔法的な罠が仕掛けられている場合がある。そういうときには魔力探知で探らないといけないんだけど、残念ながら今の僕には無理だ。このダンジョンではその手の罠は仕掛けられていないと聞いているので、その点は安心だけど。
さて、外側に罠はないようなので、あとは内側だ。とくに鍵穴周りに罠が仕掛けられていることが多い。
ここで不用意に鍵穴を覗き込んではいけない。接近を感知して、針を飛ばすような罠があるみたいだ。怖い!
まずは鍵穴に手をかざしてみる。反応がないことを確かめてから、鍵穴から中を覗く。
ああ、これは不用意にカチャカチャやると、何か発射されるタイプだなぁ。鍵の構造からすると……。うん、どうにか罠を避けて開けることもできそう。
たぶん、正面に毒針を発射するタイプの罠だね。開けるときに正面に立たなきゃ、罠を無視して開封しても問題はなさそうだけど……。
罠の判別も絶対ではないし、何より罠解除も練習しておいたほうがいいからね。ここはきっちりと解除する方向でいこう。
取り出したるは、解錠秘密道具!
そんな大袈裟なものじゃなく針金みたいなピッキングツールだけどね。特別な機能があるわけじゃないから、結局は僕の腕次第ってこと。
といっても、この程度の鍵ならちょちょいのちょいだ。【解錠】の講習を真面目に受けていたおかげだね。
カチリと音を立てて、鍵が開いた。他のメンバーが離れたところにいることを確認してから、箱の横から蓋を開ける。
ふぅ……。
罠は発動しなかった。予想通り、毒針の罠だね。あとは発動の起点を解除してから、罠を取り外せばOKだ。
「もう大丈夫だよ!」
安全が確認できてから、仲間に呼びかける。せっかくの宝箱なんだ。喜びはみんなで共有したいよね。少し視界に入っちゃったけど、僕もなるべく見ないようにしてたよ。
「いや、凄いな……。何をしているのかよくわからなかったけど、簡単な技能じゃないことはわかった」
「本当にね! やっぱりレイに開けさせなくてよかったわ」
「本当だよ。それ毒針だよね。危なかったー」
「いや、悪かったよ。勘弁してくれ……」
おお、これって、もしかして褒められてる?
宝箱の解錠が楽しめて、おまけに褒められるなんて!
迷宮探索士、僕の天職だね!
「ありがとう! でも、せっかくの宝箱なんだから、早く中を確認しようよ!」
「ああ、そうだな!」
さて、ダンジョン初宝箱の中身はなにかな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます