第24話 粘喝高校の新人コンビによる幕間

「「ありがとうございました!」」


 近山高校と都楽高校の選手たちが、試合を終えて挨拶をした。


 その様子を、グラウンドの裏からこっそり観察している二人がいた。


「さあ、襟裳えりも、試合は終わったぜ。向こうに気づかれないうちに、さっさと退散するぞ」

「了解、金沢かなざわ。早く学校に戻らないと、試合が始まってしまうからな」

「おっと、襟裳、戻るのは学校じゃないぞ。今日は近山高校まで行って試合をするんだったろ」

「あっ、そうだった。でも、近山高校の偵察に行くとか、よく思いついたよな、金沢。おかげで練習がサボれて嬉しい限りなんだけど」

「ああ、これは俺のオリジナルじゃないぞ。昨日の高見たかみ鬼出おにでの話を参考にしたんだ。まあ、襟裳は昨日練習をサボってたから、知らないだろうけどな」

「なんだよそれ。教えてくれ」

「実は、あの二人は昨日、野球部を合法的にサボって、近山高校の練習を偵察に行っていたんだよ」

「うわ、いいなあ。俺は違法にサボったから、部長に散々に怒られたというのに」

「まったく、よく今日の偵察に参加させてもらえたよな、襟裳」

「大丈夫だよ。部長は偵察は立派な勉強だと思ってるんだから」

「半分はスマホゲームをやってたとは知らずにな!」

「よく言うぜ、金沢! お前は全部サボってただろう! お前は残りの半分も漫画を読んでたじゃないか! それに比べて、俺は残りの半分は、ちゃんと試合を見ていたからな、はっはっは!」

「はあ、聞き苦しいよ、襟裳。それを五十歩百歩と言うんだぜ」

「なんかうまいことを言ったような気になってるみたいだが、それは第三者が言って初めて成立する台詞だよ、金沢。当事者のしかも多くサボった方が言っても、どうしようもないだろ」

「うーん、それもそうだな。ところで、試合の内容はどうだったんだ、襟裳? 俺が部長に何か聞かれたときにすらすら答えられるように、ちょっといくつか要点を教えてくれ」

「ええとな、俺の見立てでは、近山高校は1番から5番までがよく打つな。それ以外はほとんど三振しかしていなかったぞ」

「よーし、ありがとう」

「おっと、ちょっと待て、金沢。今のは俺が言う内容だからな」

「俺の分は!?」

「漫画を読んでいた奴に教える義理はない」

「まあまあ、そう言わずに……」

「しょうがないなぁ。都楽高校が9回に抑えで出した張本とかいうピッチャーは、恐ろしく下手だったぞ。まともにストライクが入ってなかった。あんなのを出さなければ都楽高校は勝ててたのに、出したばかりに引き分けになってしまったんだ」

「おい、それは近山高校の内容じゃないだろう。というか、そんなモブの情報を得てどうするんだよ。たぶんそいつは、都楽高校が新人に教育を積ませるためにわざと出したんだぜ。他にもっと使えるピッチャーがいるはずだ」

「確かにな。それより、早く行くぞ。試合に遅れたら一大事だ。素振りを千回させられるぞ」

「させられてたまるか。ブラック企業だ訴えるぞ、と言ったらおとなしくなるはずだ。ゆっくり行こうぜ。ところで、さっきのゲームの続きをやるぞ」

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