第2話 天才治癒師は勇者アークの英雄譚を語る

本のタイトルは【勇者アークの英雄譚】

良くある子供向けの英雄譚だ。

それでも僕は小さい頃からお母様に読み聞かせて貰って居たからこの本がとても大好きで少しでも時間が空けば読んでいたのです。

英雄譚を読んでいる時だけは現実の苦痛から目を背けれるから…

話は典型的な勇者が魔王を倒すお話ですが、この本には勇者アーク以外にも多くの登場人物が居る。

勇者【アーク】賢者【レイモンド】戦士【ゴンボ】僧侶【ザイード】聖女【クリステル】魔王【ディザスタード】などなど

子供の頃は良く決まってこの登場人物を使って勇者ごっこして遊んだものです。

勇者や魔王、聖女なんかは直ぐに埋まるけどいつも僧侶だけが余るので僕が僧侶【ザイード】をやっていたのが懐かしい。

周りの友達は聖女が居るのになんで僧侶なんか仲間にしてるのか分からないと馬鹿にしていた人が多かったけど僕はどの登場人物よりも僧侶【ザイード】が大好きだ。

勇者パーティの中では地味で目立たないけど縁の下の力持ちで補助魔法でパーティを支える所、でも勇者パーティの人以外にはその役割を理解して貰えないけど周りの目に負けなずそれでも傷付いた民を救う為に誰よりも尽力を尽くすかっこいい信念を持つ所…自分と重ねてしまって余計に憧れてしまった。

【ザイード】は最初は侮られて居たけど勇者と共に世界を救う内に周りの人々はその偉大さに気付き敬愛される。

最終的に魔王を倒した後は聖方国の教皇に勧められたけど、『俺は自由な人生歩みたいのさ』と教皇になる話を蹴って、また冒険者としてまた世界を周り、変わらず困った人を見つけては救うのだった。

本当に人としてかっこいい!!

尊敬以外の何者でもない!!

女の子じゃないけど惚れる!!


僕がその良さを熱弁しても誰も反応してくれないけど、それでも僕は憧れずにはいられなかった。

御母様を亡くしてから唯一僕の心を癒してくれる存在であった。

いつかこの英雄譚の僧侶の様な人間になりたいなぁ…誰かの為に役に立つ人間になりたいと夢見る純粋な子供でした。


でも、次第に領主教育も厳しさを増し、日に日に時間が無くなって読む事すら出来なくなった。

妹のエリスとも会う時間も無くひたすら勉強と父上の罵詈雑言の日々。

終いにはローランド領の領地経営の実践までさせられる始末…

でも、僕が失政すれざ領民が困ってしまう。

僕は死に物狂いで領地経営を頑張ったが日に日に弱っていく自分に気付いた。

このままでは過労で死ぬかもしれない…

しかし、僕が頑張らないともっと多くな人々が苦しんで亡くなってしまう…

御母様が亡くなった時の様な苦しい思いを僕は領民にして欲しくない!

僕は命を削りながら領地を良くする為に毎日走り回り、いろんな人の意見を聞いて、書類をこなし働いた。


その甲斐あって僕が後継者として伯爵領の正式な領主になれると思っていた矢先に時間が起きた。


御母様が亡くなって直ぐに再婚した義母の連れ子【レスター】が僕の婚約者だった【ジョセフィーヌ】と浮気した挙げ句、子供まで作ってしまった。

この時には驚いて開いた方が塞がらなかった…

しかも、二人とも浮気した理由が僕がジョセフィーヌを全然相手にしなかったから悪いと言ってきた。

確かにジョセフィーヌとは中々会う時間が無かった…と言うよりか僕が会いたいと手紙を出しても返信は来ず、僕が仕事で領地に行ってる時にやって来ては文句だけ言って帰ってくるだけ。

寧ろ、僕は僕なりに頑張って無い時間を作って会おうと努力したのに向こうが無碍にしたのでは無いのか?

まあ、そんな事言った所で既に子供出来ちゃったんだから既成事実突き付けられたら何も言えない…

産まれてくる子供には罪は無いのだから…

そんなに会った事無いから愛が無いのも原因なんだろうと思う。

婚約破棄を受け入れる事にした。

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